夏が近付くに連れ、徐々に閑散期に突入していくパティスリー。ショーケースに涼しげなゼリーを並べてみたり、夏仕様の軽めのケーキを作ってみたり、アイスクリームを置いてみたりと、多くのお店がさまざまな対策を練っているのではないでしょうか。
パティスリーでアイスクリーム類を扱うのは、機械の導入だったり、製品の保管場所が必要になったりと、ハードルが高く感じるかもしれません。 しかし、冷菓の中には機械を導入せずとも作れるものもあります。今回は『アイスクリーム』にスポットを当て、冷菓の種類や基礎的な分類などに触れていきたいと思います!
パティスリーで作られている『冷菓』
アイスクリーム類やシャーベットの総称を氷菓、または冷菓と呼びます。ここではパティスリーの店頭やカフェメニュー、イートインサービスでも見られる冷菓の特徴と製造方法をチェックしていきましょう!
パルフェ

パータボンブやメレンゲと生クリームを合わせ、型に流し入れて冷凍庫で冷やし固めた氷菓。 コクがあるのに軽い口当たりで、アイスクリームより目が細かく詰まっていて切り分けがしやすいため、アントルメグラッセに使われることも多い。 ソルベティエール(アイスクリームフリーザー)を使用せずに作ることができる。

▲ソルベティエール(アイスクリームフリーザー)
グラス・ア・ラ・ヴァニーユ

出典:http://www.st-nicolas.co.jp/
基本的なバニラアイスクリーム。クレーム・アングレーズに生クリームを加えて作る。ソルベティエールで撹拌し、細かい気泡を含ませながら冷やしていくことで、口どけがなめらかになる。一度溶けると氷の結晶ができ、再度凍らせても食感が変わってしまう。
ソルベ(シャーベット)

乳製品や卵を使っているものがシャーベット(英語)、使っていないものがソルベ(フランス語)とされる。フルーツのフレーバーが主流で、ブリックス計などの糖度計を使用し、ソルベティールで製造する。成分や気泡を均一に分散させて氷の結晶が大きくなるのを抑え、きめ細かな仕上がりにするために安定剤が必要となる。アイスクリームよりキメが荒く、グラニテ(次項目)よりなめらか。

▲ブリックス計・・・液体を通過する光の屈折度で糖度を測る。17.5℃で液体や果実などに含まれるショ糖の重量を百分率で表す。凍ると甘味は弱く感じるので糖度は強くするが、高すぎると凍りにくくなるため、フレーバーによって適切な糖度にする必要がある
グラニテ

果汁やコーヒー、酒類などで風味をつけた糖度の低いシロップ(ブリックス糖度25以下)で作る。ソルベとの大きな違いは製法。固まったらフォークでかき混ぜ、再度冷やし、固まったらかき混ぜ、また固めるのを繰り返し、みぞれ状に仕上げる。
日本でも馴染み深い、外国の名物アイスクリーム
お次は、世間でも親しまれている外国名産のアイスクリーム。 あまり主流ではないものの、パティスリーでも機械を導入し、商品として扱うお店も出てきています!
ジェラート

イタリアの代表的な氷菓デザート。 イタリアでは日本でいうアイス類の総称が『ジェラート』とされている。一般的なアイスクリームより空気含有量が少なく、密度が高いため味が濃い。 主にフルーツがフレーバーとして使われるため、乳脂肪分は4〜8%でカロリーも控えめ。ショーケースの温度は-10〜-16℃。
トルコアイス

なが〜くのびる質感が特徴的なトルコアイス。トルコ現地では、『ドンドゥルマ』と呼ばれる。 主な原材料は砂糖・羊乳をベースにし、サーレップという植物の球根の乾燥粉末を入れることで強い粘り気を出している。 ちなみに、日本で売られている「トルコ風アイス」は、ドンドゥルマを日本人向けにアレンジしたもの。 原材料や製法が違い、サーレップの代わりにイモ類のでんぷんや海草由来のものが使われている。
アイスクリームの基本的な分類
普段から私たちの身近にあるアイスクリームですが、販売する際は『アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約と公正競争規約施行規』に基づき、容器又は包装に表示をする必要があります。ここでは対象の市販品を例に、4つに分類される種類別名称をご紹介します。
※食品衛生法に基づく「乳等令(乳及び乳製品の成分規格に関する省令)」と「食品、添加物等の規格基準」の法律によって定められているもの。
アイスクリーム
乳固形分が15%以上・うち乳脂肪分を8%以上を含んでいるもの。脂肪分が最も多く、ミルクのコクや風味の強さが特徴。
例:ハーゲンダッツ、ピノ、PARMなど
アイスミルク
乳固形分が10%以上・うち乳脂肪分を3%以上含む。牛乳と同じくらいの乳成分値で、乳脂肪の他に植物油脂が使われることも。
例:MOW、雪見だいふく、ジャイアントコーンなど
ラクトアイス
乳固形分が3%以上。乳脂肪の他に植物油脂が使われることがある。
例:爽、エクセル スーパーカップ、パナップ、パピコなど
氷菓
上記を除く、果汁などを凍らせたものを指す。アイスキャンディーやカキ氷などが該当する。乳脂肪分はほとんど含まず、アイスクリーム類ではなく一般食品として分類される。
※ここでいう氷菓は販売規格に基づくものであり、冷菓と同義とされる氷菓とは別のもの
例:ガリガリくん、あずきバーなど
まとめ
いかがでしたか?
どうしても売り上げが落ち込んでしまう閑散期。近年はお中元などのギフト商品用に、食べる直前に凍らせるシャーベットやアイスクリームを開発しているメーカーも出てきています。
初期投資額に対する採算性を考えると、個人パティスリーでアイスクリームを始めるのはなかなか勇気のいる選択。
しかし、総務省の家計調査では、一世帯当たりのアイスクリーム支出金額は2013年〜2017年の5年間で『8,115円』から『9,047円』にまで上がっており、アイスクリーム類の需要は年々高くなっていることがわかります。
長期間のスパンで考え、思いきって暑い日にぴったりな『冷菓』にチャレンジしてみるのも、ひとつの対策に繋がるかもしれませんね!