製菓業界で、新卒パティシエが入社1年以内に辞める率は約70%。若いパティシエがなかなか定着しないのは、業界全体で抱える深刻な問題です。もちろん働き手側も、まさか1年で辞めることになるとは…と悩んでいます。
パティシエントは、残念ながら早期退職にいたってしまった新卒パティシエの転職サポートにも取り組んできました。その経験をふまえて、今回は「どうすれば早期退職を防げるか?」をテーマに、はじめての職場選びの段階で注意しておいてほしいことをお伝えします。
新卒パティシエは何を決め手に職場を選ぶ?

ホテルの場合は「給与が高い」「休みがしっかり取れる」「安定している」など労働条件の整った安心感があること、またウェディングケーキの製造に携われるというイメージもあり、憧れを抱く方が多いようです。パティスリーの場合は「ケーキを食べて美味しかった」「お店の雰囲気がいい」など、お店や商品への愛着心が就職を決めるきっかけになっているそう。
働く上で何を重視するのかは人それぞれなので、どの理由も間違いではないでしょう。しかし冒頭でお伝えした通り、自分で選んだはずの職場を1年も経たずに離れてしまうケースが多々起こってしまっています。
新卒パティシエは、なぜ辞めていくのでしょうか?
イメージと現実とのギャップ

「労働時間が思ったよりも長く、休みもろくに取れなかった」「考えていたよりも仕事がハードで、ひどい腰痛になった」など、労働時間や休日、体調管理に関する悩みは、退職を考えるきっかけになることは間違いないでしょう。
しかしパティシエを目指す方であれば、労働時間が長くハードな仕事であることは覚悟の上。それよりも「ホテルに就職すればウェディングケーキが作れると思っていたが、すべて外注だった」「1年間は販売業務で、製造をさせてもらえない」「お菓子は機械が作っていて、パティシエの仕事ができない」など…イメージしていた働き方にズレが生じた時、本来やりたいことがやれていないと感じた時、働き続ける意味を失くしてしまうようです。
仕事内容がイメージと違ったことが理由で退職するのは、条件がいい大手企業でも度々あると聞いています。また逆に、過酷な労働環境であっても「やりたいことができている」のであれば3年、5年…と続けられる人もいます。
早期退職を防ぐには、選んだ職場で自分の望む仕事をできるかどうかがポイントになりそうです。
就職活動中は「情報」を集めよう!

思い描いていたイメージと実際の仕事内容を近づけるために必要なのは、「情報」です。志望している企業(お店)を中心に、志望していない職場にも視野を広げて具体的な仕事内容、身に付くスキル、学べることなどの情報を出来る限り多く集めましょう。公式のHPやリクルートサイト、口コミなどのインターネットでくまなく調べるのはもちろん、専門学校の先生に相談する、実際に働いている人に聞くなど直接話ができれば確実です。また同時に「パティシエとしてどんな仕事がしたいのか」も明確にしておきましょう。
前述した「ホテルに就職すればウェディングケーキが作れると思っていた」と話してくれた方を例に挙げてみます。この方は、ほとんどのホテルでのウェディングケーキ製造は外注であることを知らないまま入社したそうです。メインの業務と言えばデセールやビュッフェの準備、調理補助など…自分の中で描いていたパティシエの仕事があまりできないと、ガッカリして辞めてしまったとのことでした。しかし就職活動の段階で、詳しい仕事内容を知っていたとしたら?別の職場を選び、早期退職は防げたかもしれません。
またギャップを感じたのは「ウェディングケーキを作ること」を目標にしていたからです。デセールもやってみたい、調理も学びたいと考えているパティシエであれば、ホテルはやりがいを感じられる職場なのですから。
会社見学やインターンシップ、または応募時、面接時など、志望先の方と直接話せる機会は必ずあります。自分が職場に求めていること、職場が自分に求めていることを話し合い、双方の希望が合致すれば、ギャップの少ない就職ができるはずです。
まとめ
パティシエの多くは専門学校で授業料を支払ってしっかりと基礎を学び、実践で役立つ技術を身につけた上で就職します。それだけに早期退職というのはとても残念ですし、働くことへの自信も失いかねません。パティシエとしての大切な第一歩、はじめての職場だからこそ情報が大事。情報収集に時間をかけて、納得のいく就職をしてほしいと思います。
次回の記事では、ホテル・パティスリー・レストラン・工場と業態ごとに具体的な仕事内容や学べることなどをまとめていきます。ぜひ、就職活動に役立ててください。