世界のパン事情【アメリカ・オーストリア・デンマーク・インド・中国編】

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世界各国で作られ、食べられているパン。
その国々によって大きく個性が異なるため、風土や生活、さらには歴史の一部までも垣間見える食べ物でもあります。
今回は世界のパン事情第2弾。
前回に引き続き、日本のブーランジェリーでもよく見かける世界のパンの種類や特徴を、国別でお届けしたいと思います。

アメリカパン~多民族国家ならではの由来~

他民族国家のため、パンの種類がひときわ豊富。
どのようにしてアメリカにそのパンが定着したのか、歴史的な由来の数々も注目すべきところです。

ベーグル

19世紀後期、ユダヤ人の移民によりアメリカに伝わりました。
1980年頃からニューヨークを中心に全土に広がり、今ではアメリカを代表するパンと言われるまでになりました。
熱湯にくぐらせた後にオーブンで焼いて作られるため、もっちりとした食感が生まれます。

サンフランシスコサワーブレッド

サンフランシスコ固有の小麦粉であるサワー種を使ったパンです。
酸味が特徴で、サンフランシスコやベイエリアでは名物となっています。
1849年にカリフォルニアで起こったゴールドラッシュの際に金鉱発掘者たちが好んで主食としていました。

シナモンロール

北アメリカや欧州の北部から中部にかけて普及した甘みの強いソフトな食感の菓子パンで、発祥はスウェーデン。
第一次世界大戦後、小麦粉や砂糖が手に入りやすくなったことから爆発的に北欧で人気となり、それがアメリカに伝わりました。

オーストリアパン~ヨーロッパにおけるパン作りの中核~

17世紀頃、首都ウィーンはヨーロッパにおけるパンの中核的存在でした。
この時期に、当時のパン職人が工夫を凝らして完成させた優れた製法の数々が各国に伝わったと言われています。

カイザー・メンゼル

クリスピーで非常に食感の軽いパンです。
表面に星形のカーブの切れ目が入っており、ゴマやケシの実がまぶされています。
昔はこの模様作りは手作業で行われていましたが、最近では専用のスタンプで押し込んで作るのが主流のようです。

ヴェイナー・クーゲルクップフ

結婚式や祭事の時に出されるケーキで、クグロフなどの型に入れて作られています。
レーズンがふんだんに使われた非常に贅沢な配合の生地が特徴。
レモンやバニラフレーバーで香り豊かに仕上げ、軽い食感を出すために砂糖と油脂、卵をクリーミング処理して作られています。

ツオップ

「ツオップ」とは「編み込んだ髪」を意味し、ヨーロッパではとてもメジャーなパンです。
日曜日の礼拝の後で家族一緒に食べる習慣があったと言われ、土曜日には多くの店に並びます。
バターや卵がたっぷり使われていますが、基本的には甘くありません。

デンマークパン~芸術の街ならではの発想力~

首都コペンハーゲンは優れた芸術家や音楽家を多く輩出していますが、パンにおいても同じこと。
種類は少ないのですが、コーティングやトッピングの豊富さは群を抜いています。

コペンハーゲナー

ウィーンで発祥し、デンマークで完成された、デンマークを代表するデニッシュペストリーと呼ばれるパンです。
発酵した生地にバターを幾重にも折り込んで作られており、サクサクとした食感が特徴です。
甘いクリームやフルーツでトッピングし、形もいろいろな種類があります。

スパンダー

代表的なデニッシュペストリーの一種。
四角い板状の生地を四方から中央に折り、その中央にマジパンをのせ、さらにその上にカスタードクリームをのせてつくります。
アーモンドやチェリーをのせることもあり、バリエーションが様々なため、パン職人ごとのセンスが発揮されます。

トレコンブロート

小麦粉全粒粉やライ麦粉、ゴマの混ざった生地のパン。
「トレ」は数字の3、「コン」は穀物。
つまり3種類の穀物で作られたパンという意味があります。
この生地を基軸とし、穀物の種類を増やしたパンがたくさん存在します。

インドパン~世界で最初に作られたパン~

インドパンの代表であるナンの起源は約7000年~8000年前と言われ、おそらく世界で最初に作られたパンではないかと言われています。

ナン

カレーやインド料理と一緒似食べる代表的なインドパンです。
発酵させた生地を伸ばし、タンドールという壺の形をした窯の内壁に貼り付けて焼き上げ、油を薄く塗ってつくります。
インドで日常的に食べられていると思いがちですが、実はごく一部の富裕層でしか食べられていないのだとか。

チャパティ

インダス文明時代から食べられているパンで、材料は小麦粉・バター・塩と、いたってシンプル。
タンドールがなくともフライパンで焼くことができるので、インドの一般家庭ではこちらを食べるのが主流です。

中国パン~焼かずに蒸す独特な調理法~

中国における「小麦粉」は、麺や餃子の皮など点心料理の材料という立ち位置です。
その中でも「蒸す」という調理法で作られたパンは注目すべき存在です。

饅頭(マントウ)

中国北部で盛んに栽培されていた小麦粉に、塩・砂糖・水・酵母を加えて発酵させた後、蒸して作る伝統的なパンです。
日本の和菓子の「まんじゅう」と漢字は同じですが、見た目も味も全く別物です。
生地をグルグル巻きにして丸めたものは「花巻」と呼ばれ、ご飯の代わりとして食べられています。

包子(パオズ)

昔は具を入れたものも「饅頭」と呼ばれていましたが、現在は具入りの饅頭は「包子(パオズ)」と呼んで区別されています。
主な具材は肉・魚介・野菜・小豆など。
上海の小籠包はこの包子の最小形です。


いかがでしたか? 最近は日本でも手に入りやすくなってきた「世界のパン」ですが、そのひとつひとつからも、それぞれの国の生活や歴史を感じることができるはず。
ぜひパンを通じて世界各国の文化に触れて、パン職人としてパン作りのイメージを膨らませてみてください。


 

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