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インタビュー

「僕が育てた、という感覚はない」——とある洋菓子店で「仲間を導く2番手パティシエ」が育つまで


少数精鋭で仕事をこなすパティスリーのパティシエたち。
シェフの片腕ともいえる2番手パティシエは、シェフの不在時にシェフ代理として現場全体を任されるような、お店にとって大切な存在。
ときにはお店のパティシエたちをまとめる役割を期待されることもあるかもしれません。

——ということは、シェフが安心して仕事を任せられるような2番手がいるお店は、必然的にお店も「うまくいっている」のでは?

そんな仮説を立てたパティシエント編集部。
今回Twitterで「イケてる2番手パティシエ、取材させてください!」とこっそり募集したところ、尼崎市内に本店を構える創業37年の「リビエール」の2代目シェフパティシエ、西 剛紀(たけのり)さんから手が上がりました。

▲Twitterで話題になった「ラングドシャ」。猫缶は、西さんとお子さんの写真からデザインされたそう。

製缶メーカーとのコラボ商品として発売した「ラングドシャ」はTwitterで多くの注目を集め、一躍話題に。ごく最近始めた通販でも毎日販売開始時間の数十分後には売り切れてしまうほどの人気っぷりです。
現在5年以上働いているパティシエが本店に3名、西宮北口店に2名いるとのこと。定着率が高く、学校紹介や求人広告を使わずとも、毎年「リビエールで働きたい」という学生が複数人集まるそうです。ときにはSNS経由で募集状況や体験入社についての問い合わせがあるとか。
確かに「うまくいっている」お店だという印象を受けます。

本店で2番手を務めるのは、勤務8年目の吉田大紀(タイキ)さん(27歳)。
シェフ自らが推す彼は、現場でどのようにしてに育ち、どのような「2番手の役目」を果たしているのでしょうか。
まずは吉田さん本人に話を聞いてみました。

2番手である自分が1番仕事を楽しむ姿勢を、後輩たちに見せたい。

—まずはお店についてなんですが、何人体制でされているのですか?

本店と西宮北口店の2店舗があるのですが、パティシエは全員で10名。本店は基本5〜6人、西宮北口店は2人でまわしています。
この春には、また新人さんが複数人入ってくることになっています。

—新人さんとの接し方で気をつけていることはありますか?

もちろん新人さんには積極的に声をかけるようにしていますが、普段から自分が一番仕事を楽しんで、周りの人も楽しませる姿勢でいることでしょうか。
マイナスの気持ちって伝染するので、上である自分が「しんどいオーラ」を出さないようにしています。

—先輩がどんよりしていたりすると、周りも影響されてしまいますもんね。

3番手、4番手のスタッフも同じ考えです。他の子たちとも同じ考えをもって仕事をするために、上である自分たちが方向性を示すように心がけていますよ。
新人さんにも早く馴染んでもらえたら嬉しいし、みんなにこの仕事を好きでいてほしいですから。

—普段からシェフや3番手の人たちを交えて、教育方針を話し合ったりしているんですか?

教育や仕事の仕方に関して形式ばった会議をすることはありません。 そのかわり、シェフ・シェフの奥さん・僕・3番手・4番手でLINEグループを作って、こんなことやりたいとか、思いついたことを気軽に出し合ったり、自由に情報共有したりする場として使っています。
先代から長年勤めている西宮北口店の店長とも連携をとりつつ、引っ張っていく側の人間で、やりたいもの・目指したいものの共有は日ごろからライトにやっていますね。

▲リビエールの組織図。連携の中心にいる2番手の吉田さんは、重要なポジションであることがよくわかる。

▲ツイッターに投稿されている、クリスマス期間のリビエールの様子。(写真提供:リビエール)

—SNSを拝見していると、リビエールはスタッフ同士のコミュニケーションがとても盛んな印象があります。仕事中も同じように和気あいあいとしているんですか?

楽しむといっても、ただ騒いでいるというわけではなくて、仕事はメリハリをつけてきっちりしますよ。忙しいときはピリピリすることもあります。
といえども、「自分が仕事を楽しみ、周りも楽しませたい」という基本のスタンスがあるので、喋りにくい雰囲気になることはありません。
シェフを含め、ほどよい上下関係と緊張感を保ちながら仕事ができていると思います。

言葉で教えるのが難しい、「自分で考えて仕事する」こと

—新人さんや若手スタッフの中には、職場の人間関係で悩む人もいると思います。そういった相談を受けることはありますか?

ありますね。「あの人とうまくいかない」とか「なんでかわからないけど怒られた」とか。
人間関係がうまくいかないときって、自分や物事を客観的に見れていないように思うんです。
僕もシェフに間違いを指摘されたときなんかは咄嗟に言い訳が出てしまうことがあるのでわかるんですけど、「自分は被害者」「自分は間違ってない」という気持ちが先に立ってしまいがちなんですよね。感情が先走るといいますか。

—そんな悩みには、どんなアドバイスをしているんでしょうか。

「周りからみたら、あなたはこう見えますよ」ということをちゃんと伝えてあげるようにしています。
その上で「なぜうまくいかないのかを考える」「相手が怒っているなら、なぜ怒っているのかを考える」といったことをいいますね。どこかに必ず「そうなっている理由」があるので、原因を自分で考えてもらうことで解決の糸口が見つかります。
みんなそれぞれアドバイスを飲み込んで、行動してくれているように思いますよ。

—アドバイスを真剣に受け止めてくれるのは、吉田さんが普段からスタッフと真剣に接しているからだと思います。スタッフの教育面で苦労することはありますか?

繋がる話ではあるんですが、「みんなにいかに自分で考えて仕事をできるようになってもらうか」ということでしょうか。すごく大事なことだと思うんですけど、伝えるのになかなか苦労しています。

—「考えて仕事して」という言葉だけでは、伝わらない感覚ですよね。

下の子たちが指示待ちの人間になってしまわないように、仕込みが少なめのときは僕も一歩引いてみんなの段取りや仕事の仕方を見て、ちょっと口を挟むくらいにすることもあります。
もちろん僕が指示を出した方が早く仕事は進みますけど、それだと彼らがいつまでも成長できない。自分がどこまで指示をするかというバランスはとても難しいですね。

—吉田さんは、リビエールに入られてもうすぐ丸8年だそうですね。若手のスタッフが先輩に頼ってしまう気持ちもわかります。

3番手が7年目、4番手は6年目なので、ここの3人は自分で動けるんですけど、下の子たちは僕らから間があいて3年目とか2年目。まだまだ自分で判断できないことも多いんですよ。
今後はもっと、彼らが指示を待つ側から、自分で決断をして指示を出す側にいけるような体制に持っていきたいですね。

2番手だった先輩が急に退職。不安を抱えながらも「覚悟」を決めた

—吉田さんがリビエールで8年も続けられているのはなぜなんでしょうか?

新しく思いついたことはとにかくやってみるという、シェフの行動力と実行力に魅かれているのが大きいと思います。
新商品がうまくこともあれば、シェフが試作しているのを横で見ていて「めっちゃいいやん!」と思った商品でも、うちのお客さんには全然合わなかったとかでうまくいかないこともあるんですよ。
でも、それすら勉強になるんです。失敗を恐れず行動するところが、すごく尊敬できます。

シェフは自分の背中を見せることで、「この店だからできない」ことはないと示してくれているような気がするんですよね。なので、僕には辞める理由もなければ、店を移る理由もないと思っています。

—SNSでの発信がきっかけで実現した、イラストレーターさんや製缶メーカーさんとのコラボ企画商品の「ラングドシャ」なんかは、まさに新しい挑戦の大成功例ですよね。

そこから遠方からお客さんが来るようになったり、東京でのイベント出店が決まったりと、シェフのアクションがどんどんリビエールの知名度を高めて、人の縁も広げています。
初代のお菓子を守りつつ、自分の新しいケーキを出し、SNSで発信をする。
今までの世間の常識とか、業界の”古き良き”に固執しすぎずに行動できるのが、シェフの大きな魅力です。

—シェフとの信頼関係はどうやって築かれたんでしょうか。

僕は「将来独立したい」という夢をもちながらも、入社当時はどこかこの仕事を甘く考えている節があったんですね。仕事をするなかで強く叱られたとき、自分の甘さを実感してものすごく落ち込みました。
でも、落ち込んでいたって何も変わらない。すぐに思い返して「自分を雇ってよかったと思ってもらおう!」と、何事も全力で頑張ることを決めました。それが入社初日のことです。

—入社初日から、大きな気づきがあったんですね。

それで、初めての夏休み前にシェフとゆっくり話す機会があって、「夏休みは東京のケーキ屋巡りをしに行きます」ということを伝えたんです。
そしたら、頑張りが認めれられたのかはわからないですけど、シェフはお菓子作りに対する想いなんかを熱く語ってくれて、僕に対して「期待している」と言ってくれたんです。

—それは嬉しいですね。良いモチベーションになったのではないのでしょうか。

そのときの喜びをはっきりと覚えているので、下の子たちに対しても同じように「期待している」気持ちは伝えるようにしています。下の子たちから信じてもらうには、まずはこっちが信じてあげないと。

—2番手には、シェフから指名されたのですか?

いえ、過去にいた同期はもういなかったので、年功序列的就任です。実は当時、突然先輩が辞めてしまって2番手になったので「ヤバイ!」とすごく焦っていました。
けど、シェフは「お前なら大丈夫だろう」と言ってくれましたし、不安はありましたけど、自分も「やるしかない」と腹をくくりました。それが一昨年の春ごろのことです。

—任されて、認められて、成長してこられたんですね。独立のタイミングはもう決めているのですか?

いつとはまだはっきり決めていません。
僕と3番手と4番手でできあがっている組織図をしっかり下の子に落とし込めたら、この店で僕ができることはやり遂げたことになるかもしれませんね。

心を許し、自分をさらけ出せる関係性

シェフが認めてくれ、信頼してくれているからこそ頑張れると話してくれた吉田さん。
そんな吉田さんは、シェフパティシエの西さんにはどう映っているのでしょうか。
西さんにもお話を聞いてみました。

—西さんにとって、吉田さんはどんな2番手ですか?

よくやってくれているんじゃないでしょうか。彼が2番手にあがったときも、ずいぶん前から「そのつもり」だったので、特に不安はなかったですね。
僕自身はパティシエ4年目でフランスにいったので2番手の経験はないし、2番手がどうあるべきかなんて考えたこともなければ、求めてもいません。「僕が育てた!」という感覚もないですね。

—2番手という枠にとらわれずに、吉田さんを信頼されているんですね。

彼はこの仕事が好きなんですよ。それに、年功序列的に就いた2番手も「自分がやる」という覚悟ができてるし、他喜の心も持っています。
それがちゃんと伝わってくるから何も心配せずに任せますし、細かくあれこれいうこともありません。3番手・4番手も同じです。
甘いところはありますし失敗することもありますけど、僕だって失敗するし、失敗したということは挑戦したということ。ケーキ屋のシェフ=全能かと言われれば違うし、僕も自分が完璧だとは思っていません。
僕や吉田も含め、みんながそれぞれのいいところを活かし合えるような職場でありたいですね。

—8年間吉田さんと過ごしてきて、お店はどのように変わりましたか?

昔は大変な時期もありましたけど、今はもう夜中まで残って仕込み…なんてことはなくなりました。
僕は8年前にフランスから帰国して、父から店を継いでリビエールの2代目シェフになったんですが、吉田が入社してきたのもちょうどその時期だったんですよ。
なので、3番手・4番手も含め、一緒に辛い時期を乗り越えて、今のリビエールを作り上げてきた絆があります。
彼らの前なら、泣けるんですよ。それくらい信頼しています。

—シェフである自分が心を許して、素直な気持ちをさらけ出せる関係性…素敵ですね。

僕たちは人間なのでうまくいかないこともありますし、怒られるときは怒られるので、みんなで揃って肩組んで…とは言い切れないかもしれません。でも、一緒に成長していけるなら、それでいいんです。

僕もみんなも、完璧じゃなくたっていいんですよ。

取材後記

特段意識することなく、自然と出来上がったシェフと2番手、そして3番手・4番手の信頼関係。そこにはシェフが2番手を信頼して仕事を任せ、任された2番手は覚悟を決めて仕事やスタッフと向き合う、ひたむきな姿勢が見られました。

お互い「完璧」を求めない。そして、上の立場のメンバーが、みんなで同じ方向に進むために、他のスタッフを導きたいという想い。
「うまくいっている」という言葉を聞くまでもなく、お二人の話からそれを感じとれる取材となりました。

店舗プロフィール

リビエール 本店
住所:兵庫県尼崎市南武庫之荘3-34-6
営業時間:9:00〜20:00
定休日:不定休
HP:https://www.facebook.com/riviere.mukonoso/

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この記事の筆者

森野みどり

PATISSIENTのライター。パティシエ経験者。一味か七味がないと親子丼が食べられません。

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