厳しい教育の裏にあったのは…。初めての職場で学んだ、仕事の厳しさと深い師弟愛

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職場の上司との関係が、その後のパティシエとしての人生を大きく変えてしまうこともあるでしょう。パティシエとして、職人として、「ヒト」として、先輩から学んだことは一生の教訓になるのではないでしょうか? 今回は、ある男性パティシエが十数年前に経験した、洋菓子店のオーナーとの深い絆のお話をご紹介します。彼が飛び込んだ世界は、それまで考えていたような“ケーキ屋さん”のイメージとはほど遠い、とても厳しい世界でした。

給料袋を見てビックリ!初めて手にした給料はわずか10万円

社会人経験はおろか、製菓学校も出ていなかった当時の僕は、“家から近いから”という理由と“正社員募集”という言葉に惹かれ、偶然通りかかった近所のパティスリーに就職をしました。 全くの素人である僕に、最初に与えられた仕事は洗い物と掃除のみ。ケーキに欠かせないフルーツやクリームなどに触れることがないまま、最初の給料日を迎えておもわずビックリ! 一ヶ月間、朝5時半から夜8時半まで必死に働いたにもかかわらず、入っていたのはわずか10万円足らず。あまりに少ないその金額には唖然。 何も知らずに飛び込んだパティシエの世界は、若かった僕に社会で働くことの厳しさを教えてくれました。

日々、飛んでくるオーナーからの鉄拳!考えた対処法は「ボクシングジムに通うこと」

当時のオーナーは、昔気質のいわゆる“職人”タイプで、ミスをした時には、長年空手で鍛えた強烈な鉄拳が容赦無く飛んでくる日々。このままでは体が持たないと危機感を覚え、オーナーからの攻撃を交わすためにボクシングジムに通いましたが、上達するにつれそれが裏目に出て、さらにオーナーを怒らせてしまう羽目に…。 数々のパティシエを見てきましたが、これほど手荒な教え方は後にも先にもこの人だけ。結果的にはパティシエにとって必要な精神面と肉体面を鍛えられたので、今となってはオーナーなりの教育方法だったと思って、懐かしい思い出となっています。

“第二の親父”のような存在。初めて感じたオーナーの深い愛情

入店から数年、素人だった僕もいつしかパティシエとして独り立ちできるほどに。本来なら、未経験から一人のパティシエを育てることは多大な労力を要するもの。しかし、厳しく根気よく指導してくれたオーナーのもと、パティシエとして生きる覚悟を決めた僕はスキルアップのために転職を決意します。そして退職の日、オーナーは一冊の通帳を僕に差し出してこう言いました。 「これでフランスに勉強にいきなさい。」 なんとオーナーは、僕が入社したときから毎月欠かさず留学資金を貯めてくれていたのです。厳しかったこれまでの日々を思い出し、もらった通帳を握りしめながら、生まれて初めて嬉しくて涙を流しました。 偶然にもパティシエの道に進んだ僕ですが、深い愛情と厳しい態度で親父のように接してくれたオーナーとの出会いがあったからこそ、今も洋菓子を日々の糧としています。 パティシエの仕事は、華やかに見えるぶんだけ辛いことや苦しいことが多い世界でもあります。しかし先輩たちも同じ道を歩んできたからこそ、身を以て後輩たちにその厳しさを教えてくれているのかもしれません。 技術や知識はもちろん、人生において大切なことを学べるのも、この仕事の醍醐味ではないでしょうか。
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