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インタビュー

自分らしく生きるため、パティシエ「井藤裕史」は上場企業を辞めました


ひと昔前、パティシエにとって「独立」は夢であり、成功の証でもありました。しかし近年では、少子化やコンビニスイーツの発展、材料費の高騰あり、また場所によってはすでにベテラン菓子職人が地域のマーケットを抑えている状況…と、独立するにはリスクもハードルも高い時代になってきています。

そんな時代で、将来何を目指せば良いのか分からなくなっている方も多いのでないでしょうか。「独立」か、「安定雇用」か、それとも別の道?

それでもやっぱり、好きなお菓子をつくりたい。自分らしく働きたい!

今回はそんな想いで大手ブライダル企業を退職し、「独立」への一歩を踏み出したあるパティシエに注目。
独立するには何をすればいい?不安はないの?など率直な疑問をぶつけながら、彼の「自分らしい働きかた」を探ります。

井藤裕史(いとうひろふみ)さん

神戸北(鈴蘭台)生まれ、現在39歳。
製菓学校卒業後「菓樹工房ユーカリプティース」に3年半務めた後、「ヒルトン大阪」へ。その後、全国に結婚式場を展開する東証一部上場企業「株式会社エスクリ」へ転職、シニアチーフ・パティシエを務める。現在は4月1日にオープンする大阪市西淀川区歌島のパティスリー「菓子工房シュクルリ」の準備の真っ最中。

異業種の方との交流をきっかけに、「独立」へ

――独立、おめでとうございます!どんなお店にされる予定ですか?
ありがとうございます!お店は住宅がどんどん増えている大阪市西淀川区。僕自身が引っ越し先を探している時に偶然知ったのですが、この辺りには保育園が3つあって、住宅も多いのに洋菓子店がないそうで。独立するにはいい条件だな、と思って住んでいました。

▲2月末に完成した、チョコミントカラーのまっさらな外観&看板。ターゲットはもちろん子育て世帯。50%は生菓子、30%は焼菓子、20%はオーダーケーキで売上を構想しているそう。

コンセプトは『あなたの想い、お菓子にします』。誕生日やイベントなど、大切な記念日を過ごす想いって年齢や人によって違いますよね。お客さんのバックボーンまで汲み取った、その一瞬だけの特別なお菓子をつくり、他の店にはない魅力にしていきたいと考えています。

――物件を見つけるまでが大変、という話をよく聞きます。井藤さんはどうやって物件を探しましたか?
ブライダル企業でパティシエとして勤務をしつつ、日頃からアンテナを張って、条件に合う物件を探していました。候補物件が見つからないと「事業計画書」づくりも進みません。かと言って、開業資金がどれくらいあるかによって選べる物件も変わります。物件探しと融資申請のタイミングをうまく重ねるには、「いつでもいけるぞ!」と準備しておいたほうがいいですね。

▲工事前。華やかな雰囲気の「ケーキ屋」開業に、物件オーナーも乗り気だったそう。

――事業計画書づくりで大事なことは?
事業計画書は「お金を借りる」ことが主な目的なので、「お金を返せること」を納得させられる資料にする必要があります。僕の場合、地域人口や世帯数などは総務省が公開している国勢調査のデータをもとに、商圏分析をしました。そこから商品を構成し、毎月の売上見込みと収益、返済金額を試算するなどして入念に準備しました。おかげで満額で借りることができたんです。でも正直、この作業が一番苦労しました(笑)。

▲物件が決まればデザイン事務所と内装打ち合わせ。スムーズな動線確保のため、工房を広めにとっているそう。

――井藤さんはいつ頃から独立を考え始めたんですか?
きっかけは、製菓業界とまったく関係のないところでした。ホテル勤めになってから休みが月8日に増えたので、色々遊びに出かけていたら、他業界の人とたくさん知り合うようになったんです。パティシエの僕はすごく珍しがられて、ライブハウスなどから「イベント用のお菓子をつくってくれないか」と相談を受けるようになって。イベントの趣旨に合わせたデザインや色のクッキーをつくると、すごく喜んでくれましたね。すると今度は「あなたのお菓子はどこで食べられるの?」と聞かれることが増えました。でも当時の職場は結婚式場だから、なかなか気軽には食べてもらえない。なんだかすごくもったいないな、と。「自分個人の顧客が付いてきたかもしれないな」という手ごたえから、独立の可能性を見出しました。

正直、独立への不安はある。それでも自分らしい働き方を選んだ

――井藤さんは、パティシエになりたての新人時代から独立を考えていましたか?
そうですね。でも新人の頃は「独立」って漠然なイメージだけが頭にあるだけで、実はよくわかっていなかったんですよ。パティシエとして経験を積むうちに、自分の得意・不得意を理解して。その後、数値管理に携わるようになると、人件費も原価もランニングコストの出し方も難しくて、「独立経営ってすごく大変なんじゃないか」って怖くなりました。こんなに大変なら、雇用の方が安定しているしラクかなと。

▲自動パイローラーやコンべクションスチームオーブンを揃えるなど個人店としてはしっかりめの設備で、厨房機器だけで総額700万円と高め。できたての工房でオーブンの試運転がてら、生地とクリームを試作。

――しっかり休日が取れて、給与面も安定していた上場企業からの独立。不安はないですか?
めちゃくちゃ不安です(笑)。仲間と一緒に仕事をするのは楽しかったし、やりがいも感じていました。それでも、若い頃に抱いていた『いつかは自分の店を』という夢も、頭のどこかに残っていたんです。
独立の大きな動機となったのは、昨年生まれた息子の存在。長い間夫婦で待ち望んでいた子どもなので、「家族で過ごす時間をもっと増やしたい」「子どもの成長を見逃したくない」という気持ちがあって。会社勤めはどうしても決められた労働時間に縛られてしまうので、最終的には自分のスケジュールで動ける「独立」の道を選びました。

▲夜中に仕込んで、朝は息子さんを保育園へ送って…など24時間をどう活用するか自由に考えられる。育児にも積極的な井藤さんは、家族もお店もみんなで成長させていきたいと話す。

――パティシエになる夢を叶え、独立の夢を叶えた井藤さんの、これからの夢は何ですか?
お菓子一つひとつにこだわって作りながら、家族との時間もしっかり楽しむこと。それから、いずれ息子に『僕のお父さんはケーキ屋さんなんだよ』って友だちに自慢できるような父親になっていたい。友だちと一緒に僕のケーキを食べてほしい。それがこれからの夢ですね。

▲家族の幸せのため「独立」を選択。「好きなことできちんと稼げることを証明したい。発想はユーチューバ―と同じです(笑)」

独立までの流れ(井藤さんの場合)

①自己資金を貯める
②物件を探す
③事業計画書をつくる
④デザイン会社と内装打ち合わせ
⑤機材メーカーとの打ち合わせ
⑥食材の仕入れ業者との打ち合わせ
⑦工事開始
⑧HP、名刺、ショップカード、SNSアカウント作成
⑨工事終了、機材搬入

店舗プロフィール

菓子工房Sucreries(シュクルリ)
住所:大阪市西淀川区歌島2丁目1-6 ホンダハイム1F
HP:http://sucreries.net/

取材後記

立地調査も事業計画書も、入念に準備を進めた井藤さん。それでも取材中、「融資下りちゃったからね、もう戻れないですよ」と、新しい道に進む期待と不安で半々。スペシャリテにするのは、なんとチョコミントのオペラ!焼き菓子の主要ラインナップは正方形に統一するなど、ひとりで製造するために生産性も考慮しているようです。「こんなお菓子を作ってみたい…」「もっとこうしたらいいのに…」と今まで温めていた考えをフルに活用する井藤さんは、紛れもなく「自分らしく生きている」と感じた取材となりました。

この記事の筆者

あかざしょうこ

1984年生まれ。PATISSIENTの編集ライター。
「人生の教科書は人」をモットーに、聞いたり書いたりしています。久しぶりの取材でしたが、やっぱり楽しかったです。井藤さん、ありがとうございました!

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