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インタビュー

「パンの仕事で新しい自分になった」──未経験から1年でベーカリーを立ち上げた女性店主インタビュー


2019年8月、心斎橋のあるビジネスホテルの1階にベーカリーがオープンしました。名前は『miee bakery(ミーベーカリー)』。ホテルに宿泊したゲストにモーニングを提供することを目的に作られたお店ですが、モーニングタイム・昼は販売と一般利用もできるそうです。

お店に入ると、焼きたてパンの香りが鼻をくすぐり、店舗責任者・佐々木さんの気さくで明るい笑顔が目にとまります。佐々木さんは元々、このホテルを運営する『株式会社ハルクニック』で事務員として入社。ところが1年前にホテルがベーカリーを立ち上げるにあたって責任者として社長から直々に抜擢され、無事『miee bakery』をオープンしました。

「町のパン屋さん」とは少し異なるベーカリーの誕生秘話、そして飲食業未経験から責任者になった佐々木さんが『miee bakery』を通じて見つけた、新しい夢をお聞きしました。

佐々木さん

株式会社ハルクニック/ベーカリー事業『miee bakery』責任者。
一般事務や受付窓口などのオフィスワークでキャリアを積む。同社へ入社後も請求書作成などの一般事務で勤務。2018年にベーカリー事業部責任者に抜擢され、仕事の傍らレコールバンタン・キャリアカレッジコースへ通う。2019年8月、miee bakeryをオープン。

ビジネスホテルの価値向上をミッションに
手作りの本格モーニングブッフェを提供

──こちらのベーカリーは『ホテルトレンド』の1階ですよね。ホテル事業の一部、ということですか?

そうです。だから私も会社員ということになります。弊社がビジネスホテルを全国に20店舗くらいもっているんです。今、オリンピックや大阪万博を控えていて、ホテル業界は好調です。でも大きなイベントが終わったら、ビジネスホテルは淘汰されていくはず。そこへ向けて、今の間に私たちのホテルの付加価値をどうやって高めていくか、を考えた結果、初めてこういったモーニングを提供する空間…ベーカリーを作ることになったんです。

──確かに、今大阪ではホテルがあちこちで建設されています。ビジネスホテルにはモーニングがあるものだと思っていたのですが、会社に飲食の部門はなかったんですか?

なかったんです。簡単な和定食を提供するようなサービスはありましたが、きちんとしたキッチンを作って一から手作りしたものを出すのは、弊社としても初の試みでした。ビジネスホテルの朝食って、無料でついてくるものも多いのですが…美味しくないものも意外とあるんです。素材や作り方にこだわって、手作りでしっかり満足してもらえるような朝食で、このパンを目的に『ホテルトレンド』を選んでもらえると嬉しいです。

▲食べやすい大きさのパンが20種類ほど陳列された棚。厨房で焼いたばかりのパンが入れ替わりで並べられる。

▲厨房でパンを作る職人の作業が見られるオープンキッチン+テーブル席。奥の扉はホテルと繋がっている。

──一般のパン屋さんとは目的が違うんですね。お客さんはホテルの宿泊の方のみですか?

いえ、一般のお客様も入っていただけます。モーニングブッフェでパン食べ放題!宿泊の方だと700円(税抜き)で、宿泊でない方でしたら800円です。昼になったら普通のパン屋さんと同じようにパンを販売しています。

──生地から手作りで、素材も国産のものばかりで、これだけ色々食べられるのにその値段は安くないですか!?

ですよね(笑)でもそう言ってくださるのは、一度でも利用されたことがある方だけなんです。だって、他のホテルなら朝食は無料でついてくるサービス。+700円で朝食つけますか?と聞かれたら「じゃあ要らないかな」と言われるのは当然。朝食で7〜800円は高いと感じると思います。

──確かに…では、ホテル宿泊客のモーニング利用はあまりないんでしょうか…?

最初は全然なかったですね。ヘコむくらい…あまりに利用されないから、500円に下げた方がいいんじゃないかと悩みました。社長に相談したら「絶対に価格を下げてはいけない。今は耐えよう」と励ましてくれて、この価格を貫くことに。支配人にも「売上は気にしなくていい。ホテルの付加価値を高めることに専念してほしい」って言ってくださって、今は助けてもらってます。これは法人だからできることです。個人店さんならありえないほど、採算は取れてないんです。

▲パンごとに生地の配合と製法を変化をつけている。一般的なベーカリーと変わらない品質で、食べ放題700円は安く感じる。

──上司にそう言ってもらえると安心ですよね。店作りや商品について指示されたりすることはあるんですか?

商品、お店の運営はすべて任せてもらってます。ああしろ、こうしろ、と要求されることはありません。もちろん、さっき言ったように悩んだら相談に乗ってもらっています。今は支えてもらっているばかりで…だから、いつか喫食率100%にして、ホテルに還元されることを目標にしてるんです。

事務員・飲食未経験からのスタート。
泣きながらパン作りを練習する毎日。

───佐々木さんは現在このベーカリーの責任者ですが、元々パンの経験はあったんですか?

いえ、実は…私はずっと事務員で。飲食店で働いた経験もなかったし、ましてパンを作ったこともないんです。食べるのは大好きだったんですけど(笑)

▲「また来てもらえるように」と接客にも力を入れる佐々木さん。お客さんが店から出る時は「行ってらっしゃい!」と見送っている。

──そうなんですか!?いきなりベーカリーの責任者をしてと言われて、不安じゃなかったですか?

不安というか、ビックリでした。「なんで私なんだろう?」って。社長に聞いたら「君は誰かと接する仕事の方が合ってるんじゃないかな」と言ってました。その時自分自身を振り返ってみても、今まで仕事自体は頑張ってきたつもりだったけど、明確な目標に向かって努力したことがなかったな、と気づいたんです。一度がむしゃらにやってみよう!納得いくまでやってみよう!って覚悟を決めた感じです。

──佐々木さんはこの1年でまず、何から準備しましたか?

場所はここ(心斎橋)で決まっているので物件のことは考えず、とにかくパンを知るところから。毎週土曜日、レコールバンタンのキャリアカレッジコースに通いました。と言っても、1年間で学べることなんてほんの一部。基礎の基礎と、ちょっとした実習のみだと分かっていました。だから平日の1〜2日は自宅にこもって、パンを実際に作ってみる時間をもらいました。社長も「ぜひそうしてくれ」って言ってくれたので。

──実際にパンを作るのは初めてだったんですよね。パン作りはどうでしたか?

難しすぎる(笑)。自分ってこんなに不器用だったんだ…って思い知らされました。包餡とかろくにできなくて、生地が破れたり爆発したり。毎日泣きながらパンを作っていました。こんなんで本当にできるのかって不安で仕方なかったんです。

──その不安やプレッシャーをどうやって乗り越えたんでしょう?

スクールで出会った仲間の存在です。うまくできない、と話すとアドバイスをくれたり、励ましてくれたり…技術的にも精神的にも本当に助けてもらいました。

▲現在パン製造を担っているのは同僚の榎本祐希さん。

──ピンチの時に助けてくれる存在は頼もしいですね。

そう思います。今、パンを作ってくれているのは、その頃スクールで出会った榎本さん。彼は元々パン職人として働いていたんですけど、もっと知識を深めたいと思ってスクールに通っていたそうで。初めて話した時、不思議と「この人と働くだろうな」と感じました。オープンが近づく中で、ちょうど榎本さんも勤めていた職場を辞めようと思う、と話してくれたので「じゃあ、この店を一緒にやってくれない!?」と誘いました。

──直感みたいなものがあったんですね。一緒に働いてみて、その勘は正しかったと思いますか?

正しかったと思います!私はどちらかと言うとおしゃべりタイプで、彼は熟考するタイプ。寡黙で、じっとパンと向き合えるんです。例えば私がルヴァンを使いたい、ポーリッシュ法で作りたいと言っても、どうしたらいいか分からない。でも知識も経験もある榎本さんがいるから、きちんと商品に落とし込んでいけるんです。

──0を1にする佐々木さんと、1を10にする榎本さん…理想的なバランスですね。

本当に彼には助けてもらっています。正反対だけど気も合うし、変な気を使ったりしないのですごく楽。こういう出会いもあったので、スクールに通って良かったな、と思っています。応援してくれる仲間もできて、オープン記念にとプレゼントを贈ってくれたり…色んな人に支えてもらってます。

▲スクール仲間からプレゼントされたという消しゴムハンコ。紙コップや紙袋に押印されている。

▲一輪の花を飾った万年筆。この万年筆で、ポップや商品説明を書いているそう。

──今年の8月のオープンしましたが、お客さんの反応はいかがでしょう?

心斎橋とは言え、立地的に午前中は本当に人が通らない場所なので「お客さん、来るのかな」って不安だったのですが、今30代の女性がご来店いただいているような気がします。お店の雰囲気作りというか…外観、内観のデザインを含めた空間作りには本当に苦戦して。アメ村が近いので若い方が気軽に入れる雰囲気は欲しいけど、ビジネスホテルのコンセプトから逸脱したくない気持ちもあり…。でも意外とオフィスが周りにあって「今まで近くにこんなパン屋さんがなかったから、できて嬉しい」と言われるようになりました。

──アメ村にあるカジュアル感とビジネスホテルのカッチリ感を両立する…難しいバランスですね。

悩んで悩んで、デザイナーさんとも綿密に打ち合わせて、最終的にこのナチュラルテイストに落ち着きました。細かく、隠れた可愛らしさを残すような感じで。店の隅々までこだわっているので、来るたびに「あ、こんなところにもロゴが…!」とか、発見してもらえたら嬉しいです。

▲ホワイトとブラウンでまとめられた統一感のある店内。

▲パンの陳列棚すぐの床にもロゴが。大人可愛い模様が女性客の心をくすぐる。

今後の目標について…やりたいことはたくさん!

──無事ベーカリーをオープンさせたわけですが、今後の目標はありますか?

色々あるんですけど…まずはこのベーカリーをしっかり安定させること。ホテル宿泊客の喫食率を100%にすることですね。モーニングブッフェで『ホテルトレンド』を選んでもらえるようにしたい。そして他の系列ホテルにも、このノウハウを渡していけるようになりたいです。それから、近くに建設される予定のビジネスホテルが色々とあるので、モーニングがないところへ私たちのパンを売り込んだり、せっかくこだわって店を作ったのでこの空間を活用して撮影に使ってもらったり、ガラス貼りのオープンキッチンで親子教室をしたり…夢がどんどん膨らんでます(笑)。

──すごくワクワクしてる様子が伝わります!1年前の事務員をしていたご自分と比べて、特に変わった点は何ですか?

生活が劇的に変わりましたよね。9〜18時で終わる仕事ではなくなりました。でもパンの面白さを知って、色んな職人さんの考えを知る内にのめり込んでいる感じです。あと、こんなに不器用なんだって、自分自身のことが分かった1年でした。でも色んな人に出会えて、人の優しさに触れたんです。助けてもらった、支えてもらった。今、みなさんへの感謝の気持ちでいっぱいなんです。

それから、自分のことがちょっとだけ好きになれました。周りの人からはずっと「頑張り屋さんだね」「一生懸命だね」って言ってもらってきましたけど、本当はすごくネガティブなんです。自分で自分を好きになれなくて、真っ暗な道を歩んで、もがいていた気がします。でも目標を見つけて努力して、形をつくって…達成感というんでしょうか。やっと自分のことを認めてあげられたのかなって。飲食の仕事ってしんどいけど(笑)、選んで良かったなって思ってます。

店舗プロフィール

miee bakery(ミーベーカリー)
住所:大阪府大阪市中央区西心斎橋2丁目13-12 ホテルトレンド西心斎橋1F
営業時間:7:00~9:30/11:00~15:00(売り切れ時点で閉店)
定休日:毎週火曜日、月曜・木曜午後
公式SNS:https://www.instagram.com/mieebakery/

この記事の筆者

あかざしょうこ

1984年生まれ。PATISSIENTの編集ライター。「人生の教科書は人」をモットーに、聞いたり書いたりしています。 同世代の夢を聞くと刺激を受けます。自分を変えられるのは、自分の行動のみ。そんなことを教えてもらった取材になりました。

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