新人パティシエが仕事で悩んだときのための4つの処方箋

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4月に入り、新年度を迎えて早数日。この春から新生活を始めた新人パティシエのみなさん、初めてのパティシエ現場での仕事はどうですか?

「うまくいっている」「順調で仕事が楽しい」と考えている人もいれば、慣れない環境で不安に感じることがあったり、モヤモヤしたりしている人もいるかもしれません。

元パティシエの筆者もお店に入ったばかりのころは仕事の覚え方や先輩とのコミュニケーションの取り方で悩みましたが、後々に「こう考えればよかった」「こうすればよかった」と気づいたことがいろいろとあります。

今回は筆者の経験をもとにした、新人パティシエが仕事で悩んだときに役立ちそうな「処方箋」を出していきたいと思います。

新人パティシエの悩み

パティシエは職人仕事。華やかなイメージとは正反対の現場仕事の厳しさに、みなさんも実際に触れ始めているのではないでしょうか。 仕事の覚え方やコミュニケーションの取り方など…新人パティシエが悩みそうなポイント4つと、その解消法を1つずつみていきましょう。

1.なかなかお菓子を作らせてもらえない

新人のみなさんが最初にぶちあたる壁ではないでしょうか。 パティシエになれば、すぐにいろいろなお菓子が作れるだろうという「理想」と、雑用しかさせてもらえない、補助作業ばっかりという「現実」のギャップ。とくに製菓学校に通っていた方は「自分はお菓子を作れるのに…」と思うこともあるかもしれません。

しかし、パティシエの現場での仕事は「売る商品」を作ること。学校で「決まった実習の時間で決まった数のお菓子が作る」ことと、「仕事の時間内で客足に合わせて複数の商品を必要なだけ作る」ことは別物です。

新人パティシエに雑用や簡単な作業のみを任せるお店はとても多いです。
それは、先輩たちはあなたが「与えられた仕事に真面目に取り組んでくれる」ことを期待しているから。

ひとつひとつの仕事に真剣に取り組んでこなしていくことで、先輩たちは「もうこの仕事はちゃんとできるし、新しい仕事を任せよう」という気持ちになります。 そうして、雑用、洗い物、計量、フルーツカット、仕上げ、仕込みと、段階を踏んで、いろいろな仕事を任せてもらえるようになります。

焦る気持ちもあるかもしれませんが、今自分が任されている仕事をきっちりこなすことが、ステップアップの近道になります。

2.学校のやり方と違う

製菓学校を卒業した人は、現場での器具の呼び方や持ち方、材料の扱い方、作業の手順などに関して、「学校でやってきたことと違う!」と思う場面もあるかもしれません。

しかし、それも珍しいことではありません。学校で教わったルールは「学校でお菓子を作るための一般的な基礎知識」です。あなたが今ケーキを作っているのは学校ではなくお店。お店のこだわりのお菓子を作るためには、お店の独自ルールを覚えていく必要があります。

同じ製品を作るのにも、必ず「この配合で」「この温度で」「この手順で」「この時間で」「この扱い方で」といった絶対的ルールはありません。 「このお店ではこうやるのか」と考え、そのお店での仕事をしっかりと吸収していくことが大切です。

3.先輩に話しかけづらい、質問しづらい

例えば、頼まれた仕事でわからないことがあるけど、先輩は忙しそうで質問しづらい…。そんなことがあったとき、質問のタイミングを掴めずに放置してしまうことはありませんか? それで「ボヤボヤして時間を無駄にするな」「聞かずに勝手にやった」と言われてしまったとしたら、嫌な気持ちになりますよね。

といえども、先輩たちも自分の仕事がたくさんあり、いつでも「わからない?大丈夫?」と優しく声をかけてもらえるとは限りません。 聞きづらいと感じることもあるかもしれませんが、わからないことは思い切って聞きましょう。わからないことを遠慮なく聞けるのは新人の特権です!

質問するときのポイントは「わからないんですけど…」と、語尾を曖昧にしないこと。わからないから「やらない」のか、わからないから「かわりにやってほしい」のか、など、発言が違う意図として捉えられてしまう可能性があります。 「わからないので、教えていただけますか」と、何をお願いしたいのか相手に明確に伝えることで、コミュニケーションが円滑に取りやすくなります。

また、先輩の声が早口だったり声が小さかったりして、聞き取りづらい…ということもあるかもしれません。失礼になりそうで、聞き直しにくい…と思うかもしれませんが、これも聞いてしまいましょう!聞き返さないと、相手は当然「ちゃんと伝わっている」ものだと認識しますし、これからも今までの話し方で話すことでしょう。今後も気を遣い続けることになり、いいことはありません。

話し方の癖は、本人も無意識であることが大半です。とても勇気のいることかもしれませんが、「すみません、聞き取れなかったのでもう一度言っていただけますか」と、聞き取れなくて申し訳ない気持ちを添えて意志を伝えることが、モヤモヤを取り除くための第一歩になるでしょう。

4.「感覚でやる仕事」が覚えられない、失敗してしまう

絞りの力の入れ加減や生地の状態など、目と感覚で覚えていく仕事が多いですが、「なんとなく」ではなく「意識を集中させること」が非常に重要です。

どれくらいの力で絞ったものがどんな形やどんな大きさになったのか、どれくらいの力でどれくらいの時間混ぜた生地がどんな状態になったのか。
一回一回の作業に神経を研ぎ澄まして、作業をするなかで製品の理想の状態と、「どうやったときに理想の状態になったのか」を覚えていく。それを繰り返すことで、初めて「感覚で」仕事をこなすことができるようになります。 また、うまくいったときのイメージを思い浮かべながら作業することも大切です。

入社してすぐは覚えることが多く、苦労するかと思います。仕事を教えてもらったとき、つい一度で覚えた気になってしまいがちです。仕事をする上で自分の記憶を頼りすぎると、うっかり違うことをしてしまい、作業をやり直すことになったり、製品が売れないものになってしまうこともあります。新しく教えてもらう仕事はできる限りメモをとり、確認しながら基本からしっかりと覚えていきましょう。

なんでも最初からうまくできる人はいません。大切なのは、失敗してしまったら失敗したままで終わらせるのではなく、失敗を反省して次に活かすことです。

パティシエに向いていないかも…と思ったら

仕事をうまくこなせずに失敗してばかりだと「自分は不器用で、センスがないからパティシエに向いていないのでは…」と自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。

しかし、製菓の技術を身につけていくために必要なのは、思考力と経験です。手先が器用なのに越したことはないですが、「器用でない」「センスがない」ことと「パティシエに向いていない」ということは、必ずしもイコールにはなりません。
今はまだ仕事を覚えることが第一になっているかもしれませんが、段取りを組んで仕事をこなし、お店をまわしていく側になると考えることも増え、もっと頭を使います。

そして、パティシエに必要な「考える力」は、新しい仕事を覚える中で少しずつ確実に培われていきます。普段から真剣に仕事に向き合えば、あなたは必ずパティシエとして成長していくことができます。

また、個人経営の洋菓子店であれば、自主的に「仕事の隙間時間や就業後に練習をしたい」とシェフや先輩と相談してみても良いでしょう。意欲があると思ってもらえて、練習に付き合ってもらえることもあるかもしれません。

「向いていないかも…」と思い込んでしまうのはもったいないことです。考えと視野を広げて、自分が成長していける状況を自分で作ることが、厳しいといわれるパティシエを長く続けるための秘訣だといえるでしょう。

まとめ

いかがでしたか?
入社したてのころは特に、職場環境に慣れるまで、仕事の中で戸惑うことも多いと思います。 パティシエとして、そして社会人として、人とコミュニケーションをとることはとても大切です。そして自分の考えの幅を広げて仕事を吸収していくことで、パティシエの仕事を楽しみながら成長していくことができるでしょう。

少し仕事がつらい、しんどいと感じてしまったときに、この記事に載せた「処方箋」の内容の思い出してみてください。 モヤモヤ解決のヒントが、見つかるかもしれません。

written by

森野みどり

PATISSIENTのライター。パティシエ経験者。(Twitter:@negitama000)
マイブームはこんにゃくゼリーです。

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