ヌーベル パティスリー デュ ジャポン技術コンテスト2018【潜入レポート】

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ヌーベル パティスリー デュ ジャポン技術コンテストが、2018年4月18日に帝国ホテル大阪で開催されました。
今回は、パティシエントの記者が会場に潜入調査!
各部門での受賞作品に加え、参加者や審査員の方々に伺ったお話もご紹介します。

ヌーベル パティスリー デュ ジャポンとは?

関西で活躍する菓子職人の技術向上などを目的とし、昭和51年にホテルプラザ 初代製菓料理長・安井寿一氏により発足したパティシエ団体。
有名シェフを招いて行われる実技講習会は、一年を通して10回以上開催されています。

2018年コンテスト概要

テーマ:『干支』
◆第一部 ピエスモンテ アメ細工、プチガトー1種
◆第二部 ピエスモンテ チョコレート細工、ボンボンショコラ1種
◆第三部 デコラシオン
◆第四部 マジパン細工
◆第五部 ジュニア規定部門

全部門から最優勝グランプリ1名と、各部門で賞が贈られます。

コンテスト作品の搬入は参加者本人によって、慎重に行われます。
アメやチョコで作られた作品は、少しの衝撃ですぐに壊れてしまうような繊細なもの。
新しく作品が搬入されてくるたびに、運搬する人たちを気遣うような緊張が、会場全体に走ります。
そんな一方で、飾られた作品に参加者が集まってきたり、講習会を経て顔見知りになったパティシエ同士が談笑し合ったりして、会場には和やかな雰囲気も広がっていました。

それでは、各部門の受賞作品を紹介していきます!

ジュニア規定部門

▲金賞 深浦 侑乃さん(五感)の作品

▲銀賞 稲井 菜月さん(五感)の作品(左)
▲銅賞 楊盧木 梨花さん(ANAクラウンプラザホテル大阪)の作品(右)

▲オブジェクトの大きさや形の違いに、全く違う個人のセンスが発揮された作品がズラリ。審査員の方々からも、「規定の中でしっかりと『自分』を表現できており、みんなよく頑張っている」と好評でした。

デコラシオン部門

▲金賞 竹内 美友さん(マールブランシュ)の作品

▲銀賞 芝原 三友紀さん(マールブランシュ)の作品

マジパン細工部門

▲金賞 中上 輝さん(辻学園調理製菓専門学校)の作品

▲銀賞 平野 侑希さん(クラブハリエ)の作品

▲銅賞 大石 萌々子さん(マールブランシュ)の作品

▲銅賞 廣瀬 幸美さん(マールブランシュ)の作品

チョコレート細工部門

▲金賞 奥野 光さん(五感)の作品

▲銀賞 門 哲平さん  (マールブランシュ)の作品(左) 
▲銅賞 手塚 祐太郎さん(スーリール)の作品(右)

▲その他、個性豊かな面持ちの作品が並んでいました。

アメ細工部門

▲銀賞 高市 清次さん(シュゼット・ホールディングス)の作品

コンテストとはどういうものなのか?

「コンテストの作品はどんな風に作っているの?」
そんな疑問を解明すべく、今回はアメ部門に出品し、金賞を受賞された給田(きゅうた)さんにお話を聞きました!

▲金賞 給田 一希さん(マールブランシュ)の作品

・制作期間はどのくらいですか?

「作るだけなら2週間くらいですが、準備や考案には2ヶ月くらいかかりましたね。デザインを考える際に、カラーで絵に描き起こすんです。それを元に一度実寸スケールで模型を作ったり、余裕があればアメで練習として作ってみたりします。それからシェフからは色の使い方などを指導してもらって、作品としての完成度を高めて行きます」

「作る」工程だけが作品作りではないですもんね。
3ヶ月近くの間、毎日仕事が終わってからコンテストの作品づくりに励むとなると、コンテストへの意欲がそのまま作品の完成度に影響しそうです。

・デザインで気を付けた点・苦労した点は?

「パーツの配置を意識して、一目でメインモチーフがわかるように。辰は架空の生物なので、プロの氷細工を資料にして制作しました。苦労した部分は数百枚必要になった鱗の制作と、全体のバランスのとりかたです。コンテストでは危ういバランスの作品が高得点になるんですけど、難しいんですよね…。正直壊れるんじゃないかと思ってました(笑)」

実際に、搬入中会場で壊れてしまっていた作品もありました…。
搬入での運搬のことも考えた上での作品作りなんですね。

・コンテストに参加したことで、普段の仕事に活かされたことってありますか?

「繊細な作業に没頭してきたおかげか、店に並ぶケーキのわずかな飾りの違いや、トレーの小さな汚れなど、気がつくことが増えました。」

コンテストの作品づくりをする中で、『集中力』や『観察力』が鍛えられたと話してくれた給田さん。
一生懸命取り組んだことが、普段の仕事にも良い影響を与えているんですね!

審査員が見ているのは作品だけではない?

次は審査を終えた審査員の方々に、コンテストにおいての評価ポイントや、参加者に対する想いを聞いてみました。

松島義典さん(ル・パティシエ・マツシマオーナーシェフ)

「僕はモチーフの表現の仕方を重視します。例えば、メインモチーフが動物なのであれば、生き物の身体の作りを確実に理解して作られているか。これはモチーフが実在しない動物でも同じです。リアル寄りなら精度の高さを重視する。骨格や筋肉の付き方ですね。 中途半端に実物っぽいものを作るくらいなら、デフォルメにして思いっきりユーモアや可愛らしさを表現してくれる方がいい。

あとはチョコレートやアメの、素材の質を活かせているか。そして、前後の時間を感じられるような、一つのストーリーが作品として完成されているかどうか、といった点でしょうか。評価したいのは、技術ももちろんですが、彼らの取り組み姿勢ですね。」

朝田晋平さん(パティスリーアプラノスオーナーシェフ)

「仕事をしながらコンテストに出品するのはもちろん大変です。コンテストに出たから偉いわけではなく、賞を取れたかどうかもあまり関係はありません。しかし、コンテストに出れば同じ目標を持って努力している人と出会えます。

何より、『限られた時間の中で精一杯作品を作る』という挑戦をすることで、仕事をこなしているだけでは知り得ない『自分の限界』を知ることができます。 今の自分の限界まで頑張って出来上がった作品を見て、『満足していない』なら悔しい気持ちを持って再び挑戦できるだろうし、『満足した』のであれば、次はもっと凄いものを作ってやる!という気持ちになれるのではないでしょうか。コンテストは、人間として自分の更なる高みを目指していける、絶好の場ではないかと思います。」

審査員の方は、技術だけでなく、製作者の人間性にも注目しているのかもしれませんね。

まとめ

いかがでしたか? 全ての作品を紹介することはできませんでしたが、参加者さんや審査員の方々のお話から、普段の仕事っぷりはコンテストに活かされ、コンテストでの経験は普段の仕事に活かされていることがわかります。

会場に並ぶのは、丹精を込めて作り上げられた渾身の作品ばかり。 コンテストには、参加していなくても入場できる一般向けの会場公開時間があります。
参加するにはハードルが…という方も、実際会場に行ってみて、コンテストの空気感を感じることで、いい刺激が受けられるかもしれませんね!

written by

森野みどり

PATISSIENTのライター。パティシエ経験者。
私自身、実はコンテスト会場に足を運ぶのは初めてでした!ツヤツヤのアメ細工を眺めるのが至福の時間でした。ヒトの力ってすごいですね。

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