類稀なるセンスの源はどこに?有名パティシエに学ぶセンスの磨きかた

  • コラム

パティシエの仕事の醍醐味を一つ挙げるとすれば、“美しいケーキを作ること”ではないでしょうか。かの有名パティシエたちの素晴らしい作品に心を奪われ、「自分もいつかこんな美しいケーキを作れるようになりたい!」と心に決めてパティシエという仕事を目指した人もいるでしょう。

では、これらの美しいケーキを生み出すためのアイデアは一体どこからでてくるのでしょうか。多くの人の心を掴んで離さない美しいケーキを作るためのセンスはどうやって磨けば良いのでしょうか。世界を舞台に活躍する有名パティシエたちが歩んだ経験を紐解きながら、若手パティシエがこれから自分のセンスを磨くにはどうすればいいのか、その方法を学びましょう。

コンテスト受賞作品を分析する

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日本の有名パティシエと言われると、この人を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。東京・自由が丘の洋菓子店『モンサンクレール』のオーナー・辻口博啓氏です。パティシエになるために多くの人が通う製菓専門学校には行かず、高校卒業後すぐに洋菓子店に就職し、長い下積み経験を経て今に至る努力人。就職して数年、コンクールへ挑戦するため毎日夜が空ける頃まで練習に励んでいた頃、寝る前に必ずやっていたことがあるといいます。

それが歴代のコンクール優勝作品を見ること。
優勝してパティシエがどんな思いでその作品を作ったのか、2位以下の作品との違いはどこにあるのか、歴代の優勝作品の特徴や傾向、審査員のコメントなどを徹底的に頭に叩き込み、その傾向を読み解いたそうです。若いパティシエが陥りがちな“自分の作品を披露するだけの自己満足”にならないよう、審査委員に作品の特徴やコンセプトが伝わる表現方法やデザインを学び、多くの人に受け入れてもらえるお菓子作りに励んだといいます。

また、この考えは結果的にマーケットリサーチ(市場調査)の重要視するきっかけになり、“消費者目線”でのスイーツ作りを生み出すアイデアとなっているそうです。

畑違いものを融合させて生み出す

出典:https://www.es-koyama.com/

一本売りロールケーキブームの火付け役でもあり、日本屈指のショコラティエとして海外でも知名度の高い『パティシエ・エス・コヤマ』の小山進氏は、ケーキ職人だった父親の影響を受けてパティシエを目指し、神戸の老舗洋菓子店で修行を積んだのち独立。近年、ショコラティエとして世界を舞台に活躍する彼の作品は、味噌や醤油、ふきのとう、唐辛子やたくあんなど、洋菓子からはほど遠い和素材とチョコレートを融合させるという斬新さで、世界中の人々を魅了しています。

小山氏の“異素材を融合させる”という独特のセンスを磨いたきっかけとなる一つが、高校時代に趣味で始めたロックバンドです。パティシエ・ショコラティエとして世界を舞台に活躍するようになった現在もバンド活動は継続しているそうで、彼がリリースした曲のなかには、お洋菓子の名前がつけられているものも。「お菓子にいくつものヴァリエーションがあってもエスコヤマの根底に流れるものは同じ」と言う彼の言葉通り、ジャンルを問わず好きなものに向かって突き進むという小山氏の生き方が現れています。

パティシエという仕事に捉われず、異業界に目を向けたり、好きなものであったり。自分の生活を取り巻くすべてのものからヒントを得れば、自分だけのオリジナリティあふれるアイデアを生み出すきっかけになるかもしれません。

伝統を疑う

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「スイーツ界のピカソ」と称されたピエール・エルメの洋菓子は、それまで洋菓子界では欠かせなかった華美なデコレーションという考えを排除しています。ごくごくシンプルな、オーソドックスというべき見た目の洋菓子ばかりを生み出しているのに、彼の作る洋菓子はどれもフォトジェニックで多くの人がその見た目にまず心奪われてしまいます。
この考えには、伝統的なスイーツのレシピを再検討したり、新しい味覚の領域を探し続けるなど、“味”という根本的な部分に向き合うという発想が根底にあります。

誰もまだ成し遂げていないような新しいものを探し続けるのも一つの方法ですが、今までのやり方やすでに確立されているものに疑問を抱き、もう一度考え直すといた部分に、彼のような独創的なセンスを磨くポイントがあるようです。

まとめ

見た目と味の両方で人を魅了しなければならないパティシエの仕事は、センスを磨くため、日々色んなところから刺激を受けなければいけません。毎日同じ時間、同じ場所でただがむしゃらに働いていたり、休みの日にただ体を休めているだけでは、得るべき刺激を得られません。

美術館や博物館に足を運んで世界中の人々に賞賛されている作品を徹底的に分析する、洋菓子以外のジャンルの“一流”と呼ばれるものに触れる、この世界に憧れたきっかけをもう一度見つめ直すなど、たとえあなたが新人パティシエであっても、いますぐできることは山のようにあります。

有名パティシエたちは、育った環境や性格、パティシエになって培った価値観や歩んできたなかで出会ったものなどその全てを信じ、独特の方法でセンスを磨いてきました。その方法こそ違えど、見てきたもの感じてきたものからうけた刺激を取り込んで自分の糧にしているという部分が、有名パティシエたちのような独特のセンスが生まれる共通点といえるかもしれませんね。

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