知ると知らないとでは大違い!?学校では教われない「パティシエの現場1年目マニュアル」

  • 新人パティシエ
  • コラム
  • 体験記

パティシエント編集部の森野です。
まもなく新生活が始まりますね。

「専門学校や大学を卒業したら、いよいよパティシエデビュー!頑張ろう!」
前向きな心構えで、夢の入り口に立っている新米パティシエの方も、多いのではないでしょうか。

パティシエは大きな「やりがい」がある仕事ですが、実際に現場に入らないとわからない「厳しさ」も、たくさんあります。そしてその厳しさは、残念ながら学校ではなかなか教えてもらうことができません。

本記事では、元パティシエの筆者や先輩パティシエたちの声や実体験から、新米パティシエが知っておくと良い「実際の現場のこと」「心がけると仕事がうまくいくポイント」をお届け。 これから始まるパティシエ人生で、知っておいて損はない、先輩パティシエからのアドバイスをまとめました!

先輩が現場に入ったときに感じたギャップ

“パティシエは理想と現実のギャップが大きい”と、聞いたことがある方もいるかもしれませんが、実際にどんなギャップがあるのでしょうか。
「入る前に知っておきたかった!」という先輩パティシエたちの声を取り上げながら、3つ抜粋してご紹介します。

1.「学校」と「現場」の違い

「実習で習った作り方と、全然違って驚きました。”そのやり方、間違ってない?”と思いました」
「学校ではフランス語呼びだったのに、お店では同じ器具や材料でもそれぞれ違う呼び方をしていて、慣れるまで大変だった」

新米パティシエが現場に入って一番最初に感じるのは、学校との違いです。 器具の扱いから呼び方、材料の混ぜ方まで、「学校ではこう習ったのに…」と、戸惑うことがあるかもしれません。

しかし、学校で学ぶのはあくまで基礎。「郷に入れば郷に従え」というように、そのお店のお菓子を作るにはそのお店のやり方を覚える必要があります。

また、決まった時間で決まった製品を作る学校の実習とは違い、いつも違う商品を同時に扱う現場ではスピード感が求められます。「きれいにていねい」も大切ですが、現場では「生産性」を意識して仕事を進めることが重要です。

2.雑用や販売ばかりでケーキに触れない

「パティシエとして入ったのに、雑用や販売ばかりさせられて、ケーキを触らせてもらえなかった」

ということは、実は洋菓子店ではよくあること。

お菓子を作りたいからパティシエになったのに…と思うかもしれませんが、パティシエの仕事は「楽しくケーキを作って終わり」ではありません。
誰でもできる雑用を責任感をもってこなすことも、お客様と関わる販売の仕事も、パティシエとして経験を積んでいくうえでとても大切な経験になります。

そして、シェフや先輩は、あなたが与えられた仕事に対してどんな姿勢で向き合うのかを観察しています。

最初は辛く感じるかもしれませんが、これはいわゆる「下積み」。真面目に仕事と向き合っていれば、少しずつ新しいことをまかせてもらえるようになります。
まかされた仕事をしっかりとこなすことで、「新しいことをおしえても大丈夫だな」という信用を得ることができるのです。

3.夏と冬の仕事量の差は想像以上

「クリスマスが忙しいのはわかっていたけど、夏の暇さとの差が想像以上だった」
「仕事にも慣れてきた閑散期が終わってから、急激に繁忙期の忙しさが押し寄せてきてヘトヘトになった。体調が悪くてもなかなか休める状況ではないので、体調管理は必須」

洋菓子店は肌寒くなってケーキの売れ行きがあがり始める10月頃から「繁忙期」が始まり、その忙しさはクリスマス、お正月、バレンタイン、ひな祭り、ホワイトデーと、3月頃まで続きます。 対して、気温があがり、甘いケーキの売れ行きが落ちてくる5月後半から9月頃までは、いわゆる「閑散期」。この時期は1日に作るケーキの量が減るため、自然と仕事量も少なくなります。

繁忙期にはいつもより出勤日が増えたり、休憩が十分にとれないこともありますが、閑散期は勤務時間が短くなったり、休みが増えたりすることも。 例をいうと、夏は週2日休みで8時間労働、冬は休みが週1回になって、12時間労働というくらい差があるのです

閑散期から繁忙期に切り替わる時期には、体調管理に特に気を付けることが必要です。

また、入社以来、生活リズムと仕事に慣れるのに必死だった新米パティシエも、閑散期になると少し余裕ができてきます。閑散期には、まずはしっかり休んでリフレッシュ。出勤日は絞りやナッペなどの練習をしたり、いつも追われていた作業に落ち着いて向き合ったりしてスキルアップを心がけると、繁忙期になる頃には、より自分の成長を実感することができますよ。

心がけると「仕事がうまくいく」ポイント

働き出して数日、数週間経つと、だんだん「パティシエの厳しさ」を実感してくると思います。
慣れない生活のなかで仕事がうまくいかない…。そんなふうに悩んだとき、行動や考え方を「こう考えるとうまくいく」ポイントを3つにまとめました。

1.メモのとりかたを工夫する

新しい仕事を教わるうえで「メモをとる」ことはとても大切なこと。 パティシエの仕事は感覚で覚えていくものが多いのですが、ただただメモをとるのではなく、先輩が教えを自分の言葉できっちりメモすることで、仕事の飲み込みがとても早くなります。 「混ぜる」という手順をメモするにも、「どういうふうに混ぜる」「そうする理由」といった書き方をしておくと良いでしょう。

例えば「どんどん温度が下がってゼラチンが固まってしまうため、手早く混ぜる」「クリームが立ちすぎてしまうので、ホイッパーではなくヘラを使って切り混ぜる」など。手順と理由を一緒に書いておくと、次に同じ仕事をするときに迷うことなく、失敗を防ぐことができますよ。

また、パティシエの仕事は「見て覚える」「やって覚える」という側面から、なんとなく先輩のお手本を見て覚えた気になってしまいがち。メモをおろそかにした結果、いざ自分ひとりでやろうと思って「あれ?」となり、忙しい中、もう一度教えてもらわないといけなくなった…という経験をした人は意外といます。

教わりながらメモをとるのは大変ですが、メモをしっかりとって活用することで、「仕事がなかなか覚えられない」という悩みから抜け出すことができますよ。

2.わからないことがあったら遠慮せずに聞く

「わからないです」「おしえてください」
簡単なようで、実は現場ではハードルが高いこの二言。手を止められない作業も多く、目の前の仕事に集中する必要があるため、わからないことが出てきても「聞きづらい」という状況に陥りがちです。 「先輩の手を止めてしまうのが申し訳なくて、わからないまま進めたら失敗して怒られた」 というのは、多くの人が経験する失敗談です。

自分で判断ができない最初のうちは、聞かなければ仕事が止まってしまいます。勇気が要ることですが、慣れるまでは思い切ってすぐに聞いてしまう方が、スムーズに仕事が進みます。

自分の仕事を進めながら先輩の仕事を横目で見る癖をつけると、先輩の作業の手が止まるタイミングも掴めるようになってきますよ。

3.ケーキに触れるチャンスが来たら全力で取り組む

たくさんのことを覚えていかなければならない新米時代は、少し期間があくだけで「この前の感覚」を忘れていってしまいます。

絞りが汚くなってしまったり、ムースが分離してしまったり、スポンジが沈んでしまったり…。せっかくまかせてもらった仕事を「うまくいかなかった」だけで終わらせてしまうと、成長できないうえに、新しいことを教えてもらえるチャンスも遠のいていきます。

「いつでも本番」なパティシエの仕事だからこそ、緊張感と責任感は欠かせません。 どうしたらうまくいくのか、うまくいかなかったのはなぜかを考え、次はうまくやるぞ!という心持ちで製品と向き合うことが大切です。

新米パティシエといえども、同時にお菓子作りのプロです。いつでも自分の仕事と真剣に向き合っていれば自然とスキルも身に付き、自信がもてるようになってきます。

とにかく必死に経験を積んで、新しいことをどんどん吸収していくことができるのは、新米パティシエの特権です!

まとめ

いかがでしたか?
「厳しい世界」だと聞いていても、自分なら大丈夫!頑張れる!と思っている人ほど、挫折してしまうもの。 せっかく叶った「パティシエになる」という夢が、現実になった瞬間崩れてしまった…なんて、あまりにも悲しいですよね。

パティシエは、華やかなイメージを持たれる裏で、体力も頭もたくさん使うお仕事。厳しい面も多いですが、自分の作ったお菓子でたくさんの人に幸せを届けられる、唯一無二の職業でもあります。

新しい環境に悩みはつきもの。この記事が、あなたのこれから始まるパティシエ人生の助けになれると嬉しいです。

written by

森野みどり

PATISSIENTのライター。パティシエ経験者。

ご意見・ご感想はこちら

パティシエントとは

パティシエントは、洋菓子・パン業界で働くすべての人の働くと学ぶを応援するサイトです。
夢や働きがいがあっても、離職率が高い洋菓子・パン業界。離職の理由に多く挙げられるのが、人間関係や労働条件のミスマッチです。
パティシエントは「どこで」「だれと」「どんな風に」働くのかがイメージできるリアルな求人情報や、仕事に役立つ業界内の様々な情報をお届けすることで、パティシエ・パン職人・販売スタッフをサポートします!
また、業界専門の転職エージェントがあなたにピッタリのお仕事を紹介する「転職支援サービス」を通して、より良い職場との出会いもサポートしています。