※この記事は2020年3月末時点の情報で作成しています。
パティシエント編集部の赤座です。
2020年4月現在、未だ日本で感染拡大が続いている新型コロナウイルス(COVID-19)。渡航者制限でホテルなどの観光業に打撃を与え、イベント自粛の動きからブライダル業界もキャンセルが相次ぎました。さらに、東京都・大阪府・兵庫県でも外出の自粛要請もあり、閉店に追い込まれる飲食店も出てきています。
日本全体の経済がストップし、苦境にさらされる2020年。洋菓子店ではどんな影響が出ているのでしょうか?私たちは洋菓子業界で働く人たちに「新型コロナウイルスの影響」についてアンケートを行いました。売上が好転した店、悪化した店、そのどちらでもない店…それぞれで異なる結果が出ましたが、皆さんこの事態を重く受け止めているようです。集まったコメントを抜粋しながら、調査結果をお伝えします。
調査対象:日本全国の製菓関係者
調査期間:2020年3月23日〜25日の3日間
調査方法:インターネット調査
洋菓子業界への新型コロナウイルスの影響は?
「お勤めの職場で、新型コロナウイルスの影響を感じていますか?」という質問に対し「すごく感じる」と回答したのが32.6%、「やや感じる」と回答したのが37.2%。合わせて69.8%と、約7割近くの製菓関係者が新型コロナウイルスの影響を感じています。
実際に、どのような影響があると感じているのでしょうか?以下、コメントを抜粋します。
影響(1)…売上ダウン
- 観光地ですが人の数が一番目に見えて変わってます。外人さんについてはほぼいなくってしまいました。(兵庫県・パティスリー勤務)
- 売上が20%ダウンした。(兵庫県・パティスリー勤務)
- 客足が少なくなって、極端になった。(大阪府・パティスリー勤務)
- お客様が、いないです。(北海道・ホテル勤務)
- 昨年対比で、売上減少です。(長野県・パティスリー勤務)
- ランチの客数60%減、テイクアウト150%増。(東京都・カフェ勤務)
- 売り上げが減った。客層が若い子ばかりになったので客単価も落ちた。(神奈川県・パティスリー勤務)
特に感染者が多いと報道されたエリアは目に見えて来客数が減り、売上がダウンした様子。新型コロナウイルスは売上に大きな影響を与えているようです。
影響(2)…予約や注文のキャンセル
- 宴会のキャンセル、婚礼の延期が増えた。(滋賀県・ブライダル企業勤務)
- 婚礼や食事会の延期やキャンセル。(石川県・ブライダル企業勤務)
- 団体さんのご予約がほぼキャンセルになり、スタッフが削減された。売上も下がった。テイクアウト商品を作るようになった。(三重県・レストラン勤務)
- 学校休業により卒業式や謝恩会のギフト消失。ご褒美給食での受注機会喪失。(福井県・パティスリー勤務)
- カフェ客が減り持ち帰りが増えた。ウェディングケーキは軒並み延期。(大分県・パティスリー勤務)
レストランやブライダルでは予約キャンセルが相次ぎ、売上ばかりでなく雇用にも影響が。またパティスリーでも、学校休業で卒業式がなくなったり、子供に関わる地域イベントも中止になったりすることで焼菓子等のギフト商品が平常より伸びなかったと回答している人が多くいました。
各店の対策は?
各店が行っている対策を聞いたところ「(販売含めた)スタッフのマスク着用」「除菌スプレー設置」が多数。加えていつもよりもこまめなアルコール消毒、加湿器や空気清浄機の設置で環境を整え、できる限り安心して来店してもらえるように努めている様子が伺えます。
「影響が少ない」との回答も?集まった声を抜粋
アンケートには「影響があった」という方が多い一方、「影響が少ない」という声もありました。
- 今の段階(回答日時点)ではあまり影響はありません。ただ、かかったとなれば風評被害も考えられるので、より感染予防や免疫力を保つためにも、疲れ過ぎないように心がけています。(北海道・パティスリー勤務)
- 幼稚園保育園などの雛祭りや卒園式等のイベントの注文が激減したものの、バースデー用のホールなどはそれほど変化なし。沖縄は観光立県なのでレンタカー会社の倒産や観光業者の大量解雇なども起こっており、県民全体が不安に包まれています。(沖縄県・パティスリー勤務)
- 予約キャンセルと同時に、直前予約も増えている。完全予約制のサロンだが、フリーのゲストやデリバリーにも対応出来るように準備を始めました。(千葉県・レストラン勤務)
- 児童・学生が在宅である為にオヤツ需要などもあり、外食産業と比べて比較的に影響は小さいが、4月以降の感染の傾向如何では相当の影響が危惧されます。(福井県・パティスリー勤務)
コメントを見る限り「自店は大丈夫」と楽観視する方はほとんどいませんでした。新型コロナウイルスの拡大が終息するまでは気を緩めず、できることから行動に移しているようです。また、原材料をヨーロッパから輸入している方は、今後の材料確保が気になっている様子。輸入素材を取り扱っているお店は早めに業者への問い合わせ、代替品の検討も必要かもしれません。
「好転した」という声も多数。要因は?
売上が減少したお店がある一方、好転しているお店も多くありました。新型コロナウイルスの感染拡大が売上増加に繋がった理由とは?以下、コメントを抜粋し紹介します。
- 売上が昨年より良いです。百貨店などの卸はしていませんでしたが、小さいお店は忙しくなってる感じです。通販などされてる店は強かったと思います。(東京都・パティスリー勤務)
- 住宅街などのケーキ屋は逆に売り上げはあがった傾向にありました。百貨店などはかなりダメージをうけたようで、イベントや卸に売り上げの重点を置いていたお店は苦しんでいるようです。自店の売り上げをしっかりあげコツコツとファンを増やしていく重要性を再確認しました。また、店売りだけでなく、ネットを使い新しい提案や販売をする必要性も感じました。(東京都・パティスリー勤務)
- 売上は上がった。外出を控えてるので家でケーキを食べるのかも?ただ、早く終息してほしいとは思います。(福島県・パティスリー勤務)
- 外国人観光客が少なくなり、日本人が来店されるようになった。売上が下がると思っていたが、逆に上がった。前年に比べると生菓子がよく出ている。平日でもピークの時間帯があまりなくなり、一日を通して満遍なくお客様が来店している。(京都府・パティスリー勤務)
- たしかに街の人は減っているが売り上げはなぜか上がっている。営業時間を短縮した。今回の騒動でもっと働かなくても生きていけることが証明してくれてる気もする。気楽に好きなことをやれるチャンスだと考えている。(京都府・パティスリー勤務)
- 前年よりも売上が良かった。本来は営業自粛したいところだが自店だけでは効果は見込めず早く国に対応して欲しいと思う。今後は、営業時間の短縮や接客時間の短縮をしていく予定です。(兵庫県・パティスリー勤務)
- 山口県はコロナ患者が少ない為か、県外のお客様がかなり増えている様に感じる。(山口県・パティスリー勤務)
コメントからは、住宅街にあるパティスリー・洋菓子店が好転している傾向にあります。
外食・イベント自粛を受け、消費対象が動画やゲーム、書籍など「家の中で楽しめるもの」に切り替わっています。都市部への外出を控える動きから、家庭内で嗜好品を楽しもうとする人が増えたことが要因と考えられます。
また、この機に営業時間を短縮したり、インターネット通販を検討したり、これまで通りの営業方法ではいけないと再認識したとのこと。なかなか踏み切れなかった「働き方改革」を進めるきっかけになったという声もありました。
救済策活用や情報交換で今後の備えを!
厚生労働省は随時、新型コロナウイルスによる感染拡大の影響で業績が悪化した事業者に向けた「雇用調整助成金の特例措置」や、失業による収入減少があった個人に向けた「生活福祉資金の特例貸付制度」などの支援を開始しています。こうした政府からの情報は見逃さず、最大限に活用していきながら今後に備えたいところです。
今回の新型コロナウイルスに耐えるには、オーナー・経営者やスタッフの努力だけでは限界があります。同業である製菓関係者や飲食業界、そして地域のお客さん、もちろん私たちパティシエントも。こんな時こそ情報交換を活発に行い、そこで出たアイデアや知見を活かして自分たちに出来る最善を尽くし、無事終息を迎えられることを願います。
▼厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
▼新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置の拡大
https://www.mhlw.go.jp/content/000615395.pdf
▼個人向け緊急小口融資等の特例
https://www.mhlw.go.jp/content/12003000/000606493.pdf