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インタビュー

自分たちらしく、パンとコーヒーを届ける。同じ”夢”を持つ夫婦が始めた小さなベーカリー。


自分のお店を開くとき、パートナーの理解・協力は必要不可欠。夫婦ふたりで切り盛りするお店も多く、結婚する相手とは人生だけでなく、いずれ仕事もともにするかもしれません。

2019年7月15日、大阪狭山市にも「夫婦で始めたベーカリー」がオープンしました。線路沿いの、4.7坪ほどしかない小さな小さなパン屋さん。まだ昭和の雰囲気が残っている下町の中にあるお店をしばらく伺っていると、小さな子どもを連れた若いお母さんからお年寄りまで、幅広い年代のお客さんがパンを買っていきます。

店主の青木ご夫妻は、現在結婚4年目。出会う前からそれぞれが「将来は店を出したい」という夢を持ち、すぐに意気投合した2人なんだそう。「地域に密着したお店を作りたかった」と念願叶えたおふたりに、今の心境をお聞きしました。

青木さんご夫妻

青木康晃(あおきやすあき)さん(写真右)
パン担当。レコールバンタン大阪校出身。卒業後、大阪心斎橋と横浜の『ヴィクトワール』で8年間で販売兼バリスタ、製造補助として勤務。その後『心斎橋焙煎所』でヘッドバリスタを務め、各ラテアートコンクールの主催や運営にも携わり、自身も「コーヒーフェストラテアート日本選手権」でベスト4に入るなどバリスタとして名を馳せる。

青木彩圭(あおきあやか)さん(写真左)
珈琲とお菓子がかり。四年制大学在学中、ベーカリーでアルバイトをしたことをきっかけに飲食業へ。卒業後は大丸梅田店のUCC直営喫茶で3年間勤務。カフェ『シェーカーズカフェラウンジ(なんば)』、イタリアンレストラン『ASSE(肥後橋)』、カフェ『リードコーヒー(桜川)』などで接客・調理補助を経験。

”夢”と”コーヒー”が繋いだ縁

▲南海高野線沿いに見える、青と白の小さなお店。目の前はイオンがあり、日々たくさんのお客さんが訪れる。

──オープンおめでとうございます!お店を開くのはおふたりの夢だったとのことなので、まずは出会いからお聞きしたいです。

康晃さん:僕がバリスタの審査員としてある大会に参加していた時、彼女が見学に来ていて、その時に出会いました。ラテアートについて質問を受けたり、仕事について相談を受けた記憶があります。

彩圭さん:彼はコーヒーの世界で有名でしたし、大会でも入賞するような実力者だったので、初めて話した時はすごく恐縮しちゃいました(笑)。

──康晃さんはパン職人ではなくバリスタだったんですね。

康晃さん:専門学校でパンは学んだのですが、就職先のベーカリーカフェではコーヒーを触る仕事が多くて。気がつけばバリスタでしたね(笑)。その後、大阪のイタリアンバルで勤めだしてバリスタ兼サービス、キッチンに入ってピザも焼き…と色々やっていたのですが、ある時その店がコーヒーの焙煎所を作ることになりました。本格的にコーヒーの勉強ができることになったんです。

▲「BLUE TREE BAKERY=青木さんのベーカリー」。シンプルで分かりやすい店名!

──社員でバリスタ業務に就けるだけでも珍しいのに、焙煎士まで経験できたんですね。

康晃さん:本っ当に幸運でしたね。コーヒーをもっと追求していきたいという欲求もありましたから。焙煎所で勉強しながら、もちろんバリスタ業務もやり。国内のバリスタの大会、世界大会にも出場してライバルと競ったり、いろんな経験ができました。

彩圭さん:私は大学生の時にアルバイトしていたパン屋さんでコーヒーにも興味を持ち、かけもちで喫茶店で働いていました。学校を卒業してから、その喫茶店でそのまま社員になったんです。ラテアートも勉強中だったので、ある日大会に見学へ行った時、彼と出会いました。まさか後々結婚するとは思わずに(笑)。

──尊敬できる人が結婚相手になった、ということですもんね。

彩圭さん:ふたりで話していると「美味しい」「これが好き」と思える感覚が似ていることに気づいて、波長が合う感じがしました。お互い、いつかお店をやりたいっていう夢もあって、自然と距離が縮まったと思います。もちろん尊敬もするけど、そんなに肩肘はらずに接していいんだって。

康晃さん:僕もそうですね。一緒にいるのが自然になったというか、自分も自然体でいられるんです。そうしている内に「いつかお店をやりたい」に「彩圭とふたりで」って要素が加わりました。

▲康晃さんは一度大学に通ったものの「どうしてもオフィスで仕事している自分を想像できなかった」と、レコールバンタンへ進路変更。記念すべき一期生だったそう。

夫婦経営にも”役割”と”責任”が必要

──仕事観や感覚が近いのはすごく素敵ですね。その後、康晃さんは焙煎所から別の職場に移っています。

康晃さん:その時はすでに結婚していて「さぁそろそろ独立だ」と考え、1年くらいかけて物件を探したんです。でも、ココだと思うところが見つかりませんでした。仕事から離れすぎると感覚も鈍ってきますし、ふたりの生活もあります。話し合って、独立の話は一度棚上げし、コーヒー屋に就職しました。その会社がたまたまパンの店を開きたいとのことで、立ち上げから開発、運営管理まで携わらせてもらえることになったんです。

──そこでパン製造の仕事をしたんですね。

康晃さん:元々はパン職人になるつもりでしたし、店を持つならパンは必ず置こうと思っていました。バリスタをやりつつパンの情報や知識も入れていたので、そういう意味ではコーヒー屋がやるベーカリーカフェの立ち上げは非常に良い経験になったと思います。「パンも売ることでコーヒーも自然と売れるようになる」って手応えを感じたり、久しぶりにパンを作って感覚を取り戻せたり、得るものはありました。

──その時、奥さまはどこで働いていたんですか?

彩圭さん:私はなんばのカフェでアルバイトをしていました。アルバイトと言っても、ブレンドコーヒーのアレンジ、スムージー、ジュース類、あとはカクテルなど、ドリンク類の考案もさせてもらえて。すごく楽しかったですね。あとは調理の勉強もしたり…興味が広がりやすい性格なんです(笑)。

その後、ふたりでお店をやる時のイメージに近かった、桜川の『リードコーヒー』という小さなコーヒー屋さんで働きました。ご夫婦で切り盛りしているお店です。奥さまの接客がとにかく素晴らしいんです。常連さんとの距離感が絶妙で…相手の求めることを察して行動にするのが早く、しかも的確。会話の内容も覚えようとして覚えてるんじゃなくて、自然と頭に入っているような…相手の立場に立った会話をされているな、と思っていました。私もこんなふうになりたい、私が目指すのはこんな接客だと。

▲過去の仕事を聞いていくと、どの職場のことも「楽しかった!」と話す彩圭さん。人懐っこい明るい笑顔とポジティブな姿勢が、彼女の魅力だろう。

康晃さん:という感じで、僕はパンと経営を。彼女は接客とコーヒーを。という具合に別々のお店で別々のことを勉強してきたので、お店を開く時はそれぞれ役割をもってやれたらいいな、と考えるようになりました。

──コーヒーは奥さま担当で、正直プレッシャーみたいなものはないですか?

彩圭さん:ありますね(笑)。コーヒーの知識もキャリアも彼の方が断然ありますから。「任せたよ」と言われた時は「えー!?ちゃんとできるかな?」って不安でした。でも、自分の仕事として責任持って取り組めますし、頑張りたいです。

康晃さん:一緒に店をやっていくにあたって、それぞれが持つポジションというか、責任を持てるほうが楽しくやれるんじゃないか、というのが僕の考えです。自分が決めたことをただ遂行してもらう…って、つまらないじゃないですか。いずれは彼女にも、コーヒーの大会に出場してもらえればと思っています。

▲ラテアートのコンテストは、本番でのクオリティが肝。「自分はめちゃくちゃ本番に弱くて…震えちゃうんですよ(笑)」と康晃さん。ただ出場するだけでも得るものはあると言う。

2種類の小麦で、製法・焼成に工夫を。
選びやすいように、2種類だけのコーヒーを。

──オープンして少し経ちますが、お客さんの反応はいかがでしょうか。

康晃さん:この周辺の皆さんは午前に活動するようで、午前でパンが売り切れることが多いです。ありがたいことですね。レシピは50種類くらいあって、常時25種類を日替わりで販売しています。特にすぐに売れるのはあんぱん、それから食パン。土日は蜂蜜を贅沢に使った、いわゆる「高級食パン」を置いています。こちらも人気で、すぐに売り切れます。普通の食パンはご自宅用、高級食パンはプレゼントに、と買っていかれる方が多いです。

彩圭さん:少しずつですが、「前に来てくれた人だ」「前はこのパン買っていたな」とお客さんの顔や好みを掴めてきたように思います。ご自身でパンを選んでピックアップするスタイルのお店ではなく、対面販売でご注文を聞いているので、お好みも掴みやすいのかな。お客さんがどんなパンを食べたいか、会話しながらご近所のみなさまと作っていくお店でありたいです。

▲カレーパンは甘口、スパイシーの2種類を用意。大人も子供も楽しめるラインナップだ。

──惣菜パンも豊富ですね。フィリングも手作りなんでしょうか?

康晃さん:いえ、工房の関係上、コンロが置けないのであんこはあんこ屋さんにお願いしています。カレーはナビンさんという方のお店で、3種類のカレーを作ってもらって。自分の舌で確かめて「美味しい」「パンに合う」と思ったところに交渉しました。できる限りのソースや調理などは一部、自分で手作りしています。

──かなり工房が狭いですもんね。

康晃さん:そうでしょう。敷地面積が4.7坪しかなくって、狭小店舗って感じです。オーブンや冷蔵庫を置くと、人がひとりやっと入れるくらいのスペースしかなくて。できることは限られますが、家賃が安いのが魅力的で。挑戦してみようかなと思いました。

▲内装費を抑えるため、「ジモティー」で呼びかけたところ総額80万円で店が完成したとのこと。機材はネットオークションで新古品を落札。

──できることが限られている中で、こだわっていることはありますか?

康晃さん:まずは添加物、防腐剤を使わないパンであること。ソフト系は国産小麦(ゆめちから)を使っています。今、国産小麦の入手が本当に困難で。問屋さんもなかなか取引してもらえなくて、うちも開業前に一度断られているんですよ。でもしつこく交渉して、北海道産の小麦をギリギリ仕入れています。以前の職場で仲良くしていただいていた業者さんの紹介もあり、叶えられました。個人店で独立したい方にアドバイスするとしたら、出入りしている業者さんには気に入ってもらうべきかと思います。バゲットなどハード系のパンはフランス産の小麦です。ストックする場所もないので、小麦は2種類だけですね。

──パンはシンプルな食べ物だけに、素材は大事なんですね。2種類の小麦に違いを出すには、どんな工夫をしていますか?

康晃さん:製法、焼成、配合でできる限り工夫するようにしています。ソフトパンはストレート法でもっちりと、またしっとりとした食感が出るように高温・短時間で焼き上げています。フィリングを使うことも多いので、生地はそれぞれの具材に合うように配合を変えて作っています。ハード系は12時間の低温長時間発酵で、粉の甘みをしっかり引き出せるようにしています。

──コーヒー担当の奥さまのこだわりはどんなところですか?

彩圭さん:こだわってるコーヒー屋さんって、豆の種類がいくつもあって、選べたり味のチャートが置いてあったりしますよね。でもお客さんってもっとシンプルに選びたいんじゃないかと思うんです。なので、その日の気分で選んでもらえるように、メニュー表では「しっかりコーヒー」と「すっきりコーヒー」の2択にしています。「どう違うの?」と聞かれたら、味のテイストをお伝えします。しっかりはコーヒーらしい苦味があって、バランスのとれたブレンドです。すっきりはシングルで、フルーティーな甘みがあります、というふうに。

──なるほど。確かに自分の好みってそんなに種類豊富でもないですし…そもそもこだわりがない人からすれば種類があっても選べないですよね。

彩圭さん:私自身、コーヒーを知れば知るほど好みがどんどんマニアックというか…一般的な感覚から外れていく気がしていて。今は酸味が強いのが流行っているけど、飲むのはあくまで一般のお客さん。その感覚をいつも忘れてないようにしています。「しっかりコーヒー」は島根にある焙煎所『松浦コーヒー』さんのラウブレンドです。夫婦で惚れ込んで、深煎りで焙煎してもらっています。「すっきりコーヒー」はエチオピアの豆で、神戸の『ランドメイド』さんで浅煎りで焙煎してもらっています。

▲こだわりのコーヒーは、紙製ストローで環境への気遣いも。

「良ければどっちも取り入れる」のが青木夫婦

──おふたりともずっと飲食店で働いてきて、またコーヒーの経験がある中で、お互いの理想がぶつかったりしませんでしたか?

康晃さん:大きくはありません。ちょっとした好みの違いはありますが…例えば僕は深煎りが好きで、妻は浅煎りが好きなんです。じゃあどっちも出せたらいいんじゃないって、両方で淹れられるようにしています。パンもコーヒーも店のあり方も、ぶつかる、どちらかに寄せるというよりもいいとこを取り合ってやっていきたいです。

──色々聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、今後の目標を教えてください。

康晃さん:僕はより美味しいパンづくりの研究ですね。この狭い環境の中、どこまでやれるか試したいです。店の目の前にあるイオンには毎日いろんな方が買い物に来られますが、パンだけはこちらに来てくれる、という方も増えてきたように感じます。駅前にもパン屋さんがあるのですが、系統が違っているので差別化はできているかと思います。僕らの店は安全な素材、そして味で選んでもらえるようにしたい。

彩圭さん:ふたりで、お客さまと一緒に作っていく店をやりたいと話していました。初心を忘れずに、いつも同じ気持ちを持って美味しいパンとコーヒーを届けられたらと思っています。今後はお客様の好みを聞きながら調整したり、良い豆に巡り会えたら取り入れてみたりしたいですね。地域に根付く店で、細く、長く、自分たちらしい姿でいたい。それで応援してくれると嬉しいです。

店舗プロフィール

BLUE TREE BAKERY
住所:大阪府大阪狭山市半田1-677-2
営業時間:8:00~16:00(売り切れ次第終了)
定休日:水曜日
公式Instagram:https://www.instagram.com/

この記事の筆者

あかざしょうこ

1984年生まれ。PATISSIENTの編集ライター。「人生の教科書は人」をモットーに、聞いたり書いたりしています。
とても素敵なご夫婦でした。あんぱんが食べたかったのですが、取材している間に売り切れていました。残念!インスタをチェックしてから来店するのをオススメします。

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