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インタビュー

ワインと和素材を味わうアシェットデセール専門店。ソムリエ資格を持つパティシエ・山本智弘が独立するまでの軌跡。


近年、国内外問わず観光客が増加し続けている街・京都市。京都駅から嵐山に向かって敷かれているJR嵯峨野線、京都鉄道博物館や京都水族館がある周辺に「梅小路京都西」駅が今年の春に新設されるなど、都市開発がどんどん進んでいます。

この梅小路京都西駅から歩いてわずか1分足らず。『西洋茶屋 山本』が2018年7月末にオープンしました。アシェットデセールと、ワインとのペアリングを提供するお店です。

店主の山本智弘さんは、フレンチレストランでパティシエをしながら、ソムリエの資格を取得しました。そして「30歳で独立を目指していた」という目標どおり、30歳になる年で独立。公園のすぐそばにあるお店にお邪魔し、お店のこと、独立までの道筋について伺ってきました。

山本智弘(やまもとともひろ)さん

兵庫県加古郡生まれ。31歳。
神戸調理製菓専門学校を卒業後、神戸のパティスリーで4年半勤めたのち、渡仏。帰国後は神戸市の『L'AVENUE(ラヴニュー)』で2年半、京都市のフレンチレストラン『MOTOI』で勤務。2018年7月にデザート&ワインのカウンターデセール専門店『西洋茶屋 山本』をオープン。

日本の素材を使ったデザートと
香りを引き立てるワインとのペアリングを提供

ーー本日はよろしくお願いします。早速コースデザートを食べながらお話を聞かせていただきます!

よろしくお願いします。コースは全4品で、1品目の塩味の小菓子皿、4品目のお茶菓子は日替わりです。2品目は前菜、3品目がメインデザートで季節に合わせて1ヶ月ペースで変えています。今月のメインデザートはピーチメルバかマンゴーのチーズケーキで、お客さまに好きな方を選んでいただく形式です。素材は日本独自のものにこだわっています。日本で育った食材をデザートで味わってください!

▲コース一品目の小菓子皿。ナッツのキャラメリゼ、漬物が入っているケーク・サレ・ジャポネ、パート・ド・フリュイ。

ーー1品目のケーク・サレに入っているのは漬物なんですね。あまり見かけない、意外な組み合わせです。

日本って良いものがたくさんあるじゃないですか。現に醤油や胡麻、柚子、抹茶などはヨーロッパでも使われるようになっていますよね。夏みかんや和梨、柿…お菓子にするのは難しいのですが、すごく美味しい果物がたくさんあります。それにワイン、ナッツなども作っている生産者さんも国内にあって、僕はそんな日本産の素材をしっかりお菓子で表現していければと思っています。京都にお店を作ったのも、日本の食材が手に入りやすいと思ったからです。

ーー山本さんは洋菓子店、ホテル、レストランと色々な業態でパティシエをされてきたそうですが、最終的にカウンタースタイルでお店を持とうと思ったのはなぜですか?

目の前ですぐに食べてほしかったからです。テイクアウトの場合、いつ食べるか、どうやって食べるかはお客さま次第なんですよね。翌日に残して食べたり、保存が雑だったり…って可能性もあって、本来の美味しさを味わってもらえないかもしれないな、と。じゃあ、自分が一番美味しいと思う状態、ベストなタイミングでお客さんに召し上がってもらえるようにすればいい。それができるのがデザートカウンターだと思ったんです。

▲喫茶店を全面改装。カウンターと個室があり、まさに大人の隠れ家的バー。

ーー山本さんはソムリエの資格も取られていますよね。ワインを学ぼうと思ったきっかけはあるんでしょうか。

レストランで働いていた時、ペアリングの考えにすごく感銘を受けたんです。レストランではフレンチだけじゃなくてイタリアン、中華、今は和食や寿司にもワインを合わせるくらい、ペアリングは主流になっています。でも、デザートとワインはまだまだ浸透していません。「甘いものにはなんとなくコーヒー」って合わせている人も多いと思います。お菓子を作る時も色々計算してお酒を使っているので、必ず合う組み合わせがあるはずだと考え、ワインの勉強をはじめました。

ーーワインも奥深い世界ですよね。勉強は大変じゃなかったですか?

そうですね、僕自身あまりお酒を飲まなかったので(笑)。本当にゼロからのスタートでした。ワインスクールに通ったり、レストランの営業後に余ったワインをテイスティングさせてもらったりして。でも独立した時にソムリエの資格は武器になると信じていましたし、何よりデザートとワインがお互いの香りを引き出すペアリングがあるんじゃないかと思うと頑張れましたね。

▲二品目のグラニテ。「山葵のピニャ・コラーダ」とロゼワインのペアリング。

ーーお店を作る時にソムリエを雇う選択もあったと思いますが、ご自分で資格を取ったんですね。

確かに、そういう方法もあったと思います。でも僕はお菓子に合うワインを提供したいし、ワインに合うお菓子を考えたい。それにはどちらの知識も必要だったんです。ゆくゆくソムリエを雇う時がきたとしても、絶対に損にはならないスキルだと思っています。

フランスに渡って、素材は地物が最も良いと知った

ーー修行時代についてお聞きします。フランスに渡ったきっかけはあったんでしょうか。

最初は神戸の洋菓子店で4年半働いて、生菓子と焼菓子の基礎は身についたと思いました。その時20代前半だった僕は、「どんな経験ができるか」を大事にしたくて。若い内にできること、新しいことに挑戦したくて、フランスに行きました。

ーーフランスではどんな仕事をしましたか?

なんのツテもなく行ったので仕事を見つけるまでに苦労しましたね。色々なお店に履歴書を持って行きましたが…散歩だけして1日が終わったな、と思うこともあって。フランスでしばらくニートのような生活をしていました(笑)。そんな中、あるお店の面接を受けた時に日本人のパティシエがいて「うちでは雇えないけど、知り合いに聞いてみる」と言ってくれて。紹介を受けて、五つ星ホテルに契約社員で働けることになったんです。当時、そこには千葉ともみさんという女性シェフがいて、日本語で色々と教えてもらえたのはラッキーでした。

ーー神戸のパティスリーからフランスの五つ星ホテル…環境はかなり変わりそうですよね。

そんなことないですよ、お菓子の基礎は同じでした。僕が衝撃を受けたのは、技術よりも素材の違い。うちのめされました。バターの香り、フルーツの甘み、フレッシュさが全然違うんです。考えてみれば当然のことで、フランスで育てられた素材が、ほとんど鮮度を落とさないまま使われている。その体験で、地産地消の大切さに気づきました。いくら日本でフランス産のバターや粉を輸入して使っても、フランスで作られるお菓子を超えられないんじゃないか。それなら自分が作るお菓子は、日本の素材を活かして、鮮度にこだわってやっていこうと。

▲軽快に話しながら手早くお皿を盛り付けていく山本さんの様子も見られる。

▲三品目のメインデザート。ピーチメルバとジャスミンの軽いムース。イタリアワインとのペアリング。

ーー確かに、物理的な距離は絶対に解消できない…。日本の食材を使っているのは、そういう経験からだったんですね。帰国後は『ラヴニュー』やフレンチレストラン『MOTOI』など有名店で働かれています。

僕、食べ歩きして気に入ったお店で働くタイプではないんですよね。労働条件はあまり気にしませんし、自分のやりたいことができそうなところをフィーリングで見つけて、働かせてもらった感じです。ラヴニューも、クリスマス直前だったこともあり「すぐに製造に入れる」って条件で入りました。レストランは、カウンタースタイルで独立しようというビジョンがあったので、京都で、それも星付きでレベルの高いことができそうなお店をリストアップして片っ端から電話をかけました。「パティシエ募集してませんか?」って。それで入ったのがMOTOIでした。

ーーそこでワインとのペアリングに目覚めたんですね。そもそも、お店を持とうと思ったのはいつでしょうか?

高校2年生ですね。パティシエになる=自分のお店を持つ、でした。元々は料理人になりたくてラーメン屋でアルバイトをしていたのですが、鶏の処理とかが無理すぎて…(笑)。ベジタリアンとか、そういう考えではないにしろ生きていた姿を想像しちゃって…。「あ、これ、料理人は無理」って気づいて、パティシエになることにしたんです。独立のタイミングは働きながら、まずは30歳を区切りにしていました。

▲コース4品目の焼菓子。「毎日必ず焼く」という朝焼きのカヌレとフィナンシェ、日本産のジンを使ったマカロン、ギモーブなど5種。

お客さんが目の前で喜ぶ…それがカウンタースタイルの魅力

ーー独立直前はホテルでアルバイトをしていたそうですね。

独立するためMOTOIを辞めましたが、資金がなくてしばらくホテルの朝食キッチンでアルバイト生活していました。なんでこんなにパティシエと差があるの!?ってくらい、時給が高いんですよね…すごく悔しかったです。ただ、料理人の味付けの仕方や感覚的なセンスも学べたので、やってみて良かったと思います。そうして必死にお金を貯めましたが、いざ開業に向けて実際に動いていくところを見るとたまらなく不安になったりして(笑)。みんなそうだと思うんですけど、お店を作るって大体初めてじゃないですか。「この金額は本当に妥当なのか?」って疑心暗鬼になってしまいました。無事にオープンできたときは本当に安心しましたね。

ーーこのお店って隠れ家っぽくて良いですね。ただ隠れ家なので、知ってもらうのに苦労したんじゃないかと思います。

そうなんです。3日間お客さんが来なかった時もあったり、開業当時は焦りが募りました。オープン前からもっとSNSで発信すればよかったなって反省しています。けど、運良くテレビや雑誌、Webメディアなど色んな媒体で紹介していただけて。デセール専門店、ソムリエ資格を持っているパティシエ…ってメディア的にキャッチーなのかなぁと思います。でも飛び込みでふらっと入ってこれるような雰囲気でもないですし…「2000円のデザートコースを予約する」って文化を浸透させていくことが先決かと思っています。

ーー月替りのコース、毎月いろんなアイデアを一人で出していく。1年やってみて、大変じゃなかったですか?

毎月楽しみに通ってくださっているお客さんもいて、期待を裏切らないようにしたいんですが、ぶっちゃけ、大変です(笑)。でも本を読んで新しい技法を試したり、生産者さんと話して素材の活かし方を勉強したり、酒屋さんに相談して合うワインを考えたり。思いつくことはやっていくしかないですよね。あと、レストランやカウンター割烹に通って接客についても勉強させてもらっています。カウンター接客って、イメージしていたよりもお客さんの反応がダイレクトに伝わってきます。「口に合わないのかな」とか「ポーションが大きすぎるな」とか、気づいたらすぐに修正できるところがメリットですね。そして、美味しいと喜んでくださるのも直接的で。これはカウンタースタイルの一番の魅力です。

ーーお話を聞いていると、若手の頃から勉強熱心な印象を受けました。山本さんのモチベーションって、どこからきているんでしょう?

うーん…好きなんでしょうね。お菓子を作って、それで喜んでもらうのが。美味しいものを食べて笑顔にならない人ってほとんどいませんし、こんなにわかりやすい仕事って他にはないです。一人で商売を始めて、自分の努力が自分に直接返ってくるようになりました。確かに毎月デザートを考えるのも、日本の食材を使いこなすのも、ワインを合わせるのも…あまり前例のないことばかりやっていて、難しいところもあります。でも自分が「これだ」と思えることをやっているから、今すごく楽しいです。

店舗プロフィール

西洋茶屋 山本
住所:京都府京都市下京区観喜寺町19-1
営業時間:13:00〜17:00(ラストオーダー16:00)
18:00〜22:00(ラストオーダー21:00)
定休日:毎週水曜日
公式Instagram:https://www.instagram.com/

※この記事は2019年7月に行なった取材をもとに作成しています。コースの内容は取材当日に提供されたものです。

この記事の筆者

あかざしょうこ

1984年生まれ。PATISSIENTの編集ライター。「人生の教科書は人」をモットーに、聞いたり書いたりしています。
メインデザートのソースがわりにパート・ド・フリュイを添えてあるそうなのですが、これが感動的に美味しくて、まだ忘れられません!

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