洋菓子店やパン屋を開業したい人が知っておきたい、お金に関する基本の「き」

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パティスリー、ベーカリー…いつか自分のお店をもつのが夢というみなさんは、開業のために必要なお金のこと、どれくらい知っていますか? 開業資金、融資、金利——どれも開業にまつわるワードですが、いちスタッフとして働いていると、あまり縁がありませんよね。

漢字がたくさん並んでいるので、むずかしい!と感じるかもしれませんが、基礎的なポイントを頭の片隅に置いておくだけでも、いざ開業に関する勉強をしよう!と思ったとき、必ず役に立ちます。

将来ぜったいお店を開くぞ!と決めている人はもちろん、開業なんて夢の夢…という方も、社会知識として知っておいて損はありません。 この記事では、開業準備で必要なお金に関する初歩的な基礎知識を、簡単にまとめています。

よく聞く言葉?「融資」とは

「融資(ゆうし)」とは、簡単にいうと「お店を開くために借りるお金」のことです。

パティスリーやベーカリーを始めるのに必要なお金は、数百万円〜数千万円程度。 開業したいけど、このお金をすべて自分の貯金から出すのはなかなか厳しい…。

そんなとき、「日本政策金融公庫」や「信用保証協会」などの金融機関を通じて借りられるお金が「融資」です。

開業資金として金融機関から融資を受けるためには、「なぜ開業しようと思ったのか」「どんな商品をどれくらいの数置くのか」などを書いた創業計画書を準備し、申請する必要があります。

日本政策金融公庫で開業のために融資を受けた場合、5〜20年(※)かけて分割で返済するのか規定となっています。 たとえば、600万円の融資を毎月払いで10年かけて返済する場合は、(月々5万円+金利)×120ヶ月の計算になりますね。

※融資の種類による。運転資金は7年まで、設備投資は20年までという規定のものが多い。

融資と借金の違いは?

融資は借金と同じだと思われがちですが、実は違うもの。 融資が「お店をするために借りるお金」なのに対し、借金は収益や社会貢献につながらない「消費」を目的にして借りるお金のことをさします。

たとえば、生活費の足しに、買い物や趣味のため、冠婚葬祭の費用に…といった目的で借りるお金は、「借金」になるわけです。そして、これらを融資として借りることはできません。 「お金を借りる」という行為は一緒ですが、使う目的が違うんですね。

借金より融資のほうが金利が低い

金利とは、お金を借りる側が、借りたお金に追加して支払う金額の割合のこと。 公的な金融機関からの融資の金利は0.3~3%程度、都市銀行の場合は2~9%程度が一般的です。

対して、カードキャッシングや消費者金融からの借金の金利は10~15%程度と、融資の金利より高くなっています。 たとえば、100万円借りた場合の金利は、融資だと最低3万円程度、借金だと最低でも10万円になります。

融資の審査で大事なのは、書類の内容だけではない!

融資の審査を通るためには、創業計画書や事業計画書などの書類の作成はとても重要です。 お店を開きたいと考えている人が、ネックになる書類作成。 確かに、適当な書類を出してしまうと、「この人にお金を貸すのは無理だ」と判断されてしまいます。

しかし、金融機関は書類だけを見ているのではありません。 実は、一番見られているのは、「人柄」や「開業への想い」なんです。

融資の審査では、金融機関の担当者と、実際に顔を合わせて打ち合わせをします。 どんなお店をやりたいのか、自分の夢を叶えるために、どんなことを考えてどんな準備をしてきたのか…そういった、お店をつくることに対して熱い想いを担当者に伝えられるかどうか。書類がいくらきっちりしていても、書類に書かれていることと本人の発言が違えば、不信感に繋がってしまいます。

金融機関は、申請する人が本当に開業したいのか、開業したあとお店を続けていける人物なのかを見極めています。 融資の審査に通って希望の金額を借りるためには、自分が思い描くお店の未来像を担当者にいかにプレゼンできるかが、大きなポイントになります!

開業時のお金に関する簡易用語集

融資以外にも、開業にまつわる用語はたくさんあります。 ここでは、開業について調べたときによく見るワードについてまとめています。

経費

一般に経営に関する費用全般のことをいいます。

開業資金(創業資金総額)

お店を始めるために必要な費用のことで、物件の契約や内装などの設備にかかる設備投資と、運転資金2〜3ヶ月を合わせたものをいいます。 パティスリーやベーカリーを開く人の多くが、開業資金の半分以上を融資でまかなっています。

運転資金

お店をするのにあたって毎月かかる費用のこと。材料費、人件費、家賃、光熱費、水道代、通信費、配送費などがこれにあたります。さらに、売上によって変わる費用(材料費など)を変動費、変わらないもの(家賃など)を固定費といいます。

運転資金は売上金をあてるものですが、開業したての頃は売上が安定しないこともあるので、開業資金として2〜3ヶ月分以上は用意しておくことが理想とされています。

自己資金

開業資金のうち、融資や借金などではない自分のお金のことを「自己資金」といいます。 融資を受けるためには、自己資金の申請は必須。 融資を申請した人を対象にした、日本政策金融公庫の「新規開業実態調査(※)」によると、開業資金に対する自己資金の割合は平均で30%程度となっています。

たとえば…開業資金(設備投資+運転資金3ヶ月)が1000万円の創業計画だと、内訳は融資650万円+自己資金350万円程度の割合が一般的ということですね。

日本政策金融公庫の規定によると、融資申請に必要な自己資金の準備は、開業資金の10分の1以上必要とされています。 しかし、融資が増えれば当然返す金額も増え、返済期間も長くなります。

お店を経営するなかで返済に追われてしまっては、本末転倒。自分が本当に作りたいケーキやパンが作れなくなってしまいます。 パティスリーやベーカリーを始めるには、開業資金の3割以上を、自分のお金で準備できるようにしておくのが良いといえるでしょう。

タンス預金

銀行などに預けていない、手元にある現金のこと。金融機関では原則的に自己資金とはみなされないため、タンス預金を自己資金として申請することはできません。

見せ金

借金などで一時的に手にしたお金を自己資金と見せかけること。 見せ金を自己資金として融資を申請し、それを審査で見破られた場合は数年間融資を受けられなくなることもあります。

ただし、家族から借りたお金は、家族間でお金の貸し借りをしている証明となる「借用書」を書くことで、自己資金として申請することができます。

まとめ

以上、開業にまつわるお金についてのまとめでした。

ふと「お店がやりたいな…」と思ったときに、お金のことをいちから勉強しなおすのはとても大変です。早いうちからお金の知識に触れておけば、むずかしく感じる開業や経営に関する話も、頭に入って来やすくなります。

この記事では基本的の部分を紹介しましたが、パティシエントでは今後も開業に関するお役立ち情報もとりあげていきます。ぜひ参考にしてみてくださいね!

※参考サイト:日本政策金融公庫(https://www.jfc.go.jp/

written by

森野みどり

PATISSIENTのライター。パティシエ経験者。(Twitter:@negitama000)
パティシエント大阪事務所、4月中旬に引っ越しました!

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