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インタビュー

開業から3ヶ月。若手パティシエ時代から思い描いてきたお店作りと「マグノリア」への想い


※この記事は2019年3月初旬に行った取材をもとに作成しています

東京都郊外・西武池袋線「ひばりが丘」という場所に、新しいパティスリーがオープンしました。 ネイビーのシックな外観が印象的な『ル マグノリア』。オーナーシェフは、埼玉・川口の「シャンドワゾー」でスーシェフを5年務めた経験のある、33歳の伊東大樹さんです。

物件を紹介してもらってから、わずか3か月後の11月にオープン。クリスマスからホワイトデーまでの、パティスリーにとっての繁忙期を盛況で乗り越えることができたそう。

今回は伊東シェフに「オープンまでの経緯」や「その後の苦労」、「お店作り」などを詳しくお聞きしました。

伊東大樹(いとうだいき)さん

茨城県水戸市出身。レストラン「オテル・ドゥ・ミクニ」ほかグループ店舗で計5年勤務したのち渡仏。
マルセイユの3つ星レストラン「ル・プティニース」やローヌ・アルプ地域のパティスリー「シェ ギエ」などで勤め、帰国後は埼玉県川口市のパティスリー「シャンドワゾー」でスーシェフとして約5年勤務。 2018年8月に退職後、同年11月15日、自身の店「パティスリー ショコラトリー ル マグノリア」をオープン。

オープンしてから3か月。来店数の流れを読むのが難しい

―――昨年11月にオープンされてから3か月ほど経ちます。手ごたえはいかがですか?

1か月後にクリスマスを迎える時期だったので正直大変でしたが、おかげさまで上々な滑り出しです。ただ現状では「お客様がどのくらい来店されるか」の流れが読めないのが難しいところですね。先週の入りを見て「忙しくなりそうだ」と判断し、パートスタッフのシフト人数を厚めにしたのに、お客さんがなかなか来ないことも。もちろん逆パターンもあります。

「今はデータを集めている段階だ」と割り切って、長い目で見なければいけないのかもしれません。

――現在、スタッフさんは何名体制ですか?

私の他に社員は1名、パートスタッフは10名です。3月までの期間限定でもうひとり社員がいましたが、その子が辞めて、4月から新卒の子がひとり入りました。

▲左:伊東シェフ、右:社員の石川秀(しゅう)さん。シャンドワゾーで一緒に働いていたことがある石川さんは気心の知れた仲

――求人募集はどのように?

社員の石川くんはシャンドワゾーで以前一緒に働いていて、その後別のお店で働いていたところをスカウトしました。「すべてを伝えなくても、意味を汲み取って動いてくれる」信頼を置く存在です。

パート・アルバイトさんは店前の張り紙で応募してきてくれた方で、こんなに集まってもらえるとは思っていませんでした。高校生~主婦の方まで、近隣のみなさんが戦力になってくれています。

▲フランス菓子をメインに生菓子を20種前後揃える。また、お子さん向けにショートケーキやチョコレートケーキも置くように。その他焼菓子約30種、ボンボンショコラなど多彩なラインナップだ

―――どんなお客さまが来られますか?

住宅地なので、小さなお子さん連れの方が大半を占めています。キッチンに新たに取り付けた小窓から子どもさんが厨房をじっと見ていたりすると、微笑ましく思いますね。またオープンしたばかりということもあって、同業の方と思われるお客さまもよく来られます。

―――同業者かどうか、すぐに分かるものですか?

すぐに分かりますよ。普通のお客さまとは見ている視点が違いますから「視察に来たのかな」と(笑)。

修業時代、幾度となく励まされた花の名前を店名に

――お店はどんなイメージで作られたのでしょうか?

上品なネイビーを基調にし、洗練された雰囲気を感じてもらえるようにしました。とはいえ、敷居が高いお店にはしたくなかったので、いつでも外から店内が見えるように正面はガラス張りにしています。

▲ショーケースの向かいには30種ほどの焼菓子が並ぶ。包材はフリー素材を組み合わせ、包材屋さんとデザインしたそう

お店のマスコットにしたのはマグノリア(=木蓮)という花です。自宅の近くや修業先の店前にも良く咲いていました。大きな花を上向きにつけるのがいいなあと昔から好きで、20歳頃から「店を持つならマグノリアとつけよう」とひそかに考えていたんです。

花が咲くのがちょうどこの時季、3月頃。修業時代、とくに春先はクリスマス、年末、バレンタインの忙しさを乗り越えて体がボロボロになっていたので、木蓮を見て癒されたり、励まされたり。ツライ時期を一緒に乗り越えてきたような気がする花なんです。

▲インテリアには使わなくなったケーキやタルトの型を再利用。使い込まれた器具が味のある雰囲気を出している

――プチガトーがとてもつややかで美しいですね!お菓子を作るうえで大切にしていることを教えてください。

味のメリハリをつけることを第一にしています。酸味、甘み、苦みなどがハッキリしていると、そのお菓子がどんな印象かが伝わりやすいですよね。

一本筋の通った味の柱があり、アクセントとしてほんのり別の要素を加えると、お菓子により深みが生まれるんです。それぞれに落差をきちんとつけ、味や風味がぼやけることのないように気を付けています。

――ラム酒を効かせたチョコレートムース『アルテミス』がイチオシなんですよね。

実は、とくに「店のおすすめ」と推していたわけではないんです。気が付くとお客様から「アルテミスおいしいよ」「イチオシなんだって」というような声が多くなっていて。

「おすすめや人気はお店ではなく、お客様に決めてほしい」と思っていたので良かったなと思っています。

―――東京・郊外「ひばりが丘」という場所に決めたのはなぜですか?

最初からとくに場所は決めていませんでした。もともと周囲の人たちに「独立したい」と広く伝えていたので、物件情報はよく入ってきていたんです。

今回この物件に決めたのは、パティスリーの居抜きで設備も整っており、「地域に根付くようなパティスリーをつくりたい」という私の希望にも合っていたからです。 早くから自分の店をイメージしていたので、オープンまで戸惑わずに進めることができたと思っています。

――開業資金はどのくらいを用意されたのでしょう?

自己資金を含め、2200万円ほどです。もともとあった機材や什器を生かしつつ、動線を使いやすいよう壁の位置を変えたり、ボンボンショコラ用のショーケースを新設したりしました。「2200万円は高い」と思われるかもしれませんが、もしスケルトン物件だったらきっと倍の金額は必要だったと思います。 機材はそのまま使わせてもらえることになりましたし、浮いた分で包材にこだわることもできました。

▲通年販売予定のボンボンショコラはおよそ10種類。「お店の軸になってくれれば」と伊東シェフ

▲上棚には多少形が多少崩れてしまったものを「お試し用」に販売。お客様に味をお伝えできるとともに、ロスも減らせる

―――西武池袋線沿線は人気のパティスリーも多いですよね。周りのお店は気になりませんか?

もともとケーキの食べ歩きが好きで、西武池袋線に美味しいお店が多いことは知っていましたが、意識はしていません。お店それぞれで魅力があり、ウリにしたいものなど特徴が分かれるので、良い意味で住み分けができればと思っています。
それにケーキ好きな方はパティスリーめぐりをすることも多いですよね。逆にプラスになるのでは?と考えています。

「手に職をつけたい」とパティシエの道へ。修業時代は焼菓子の奥深さに魅せられた

――パティシエになったきっかけを教えてください。

昔は警察官になろうと思っていました。でも、進路を決める高3の時期に父が亡くなりまして。生前よく父に「大樹は手先が器用だな」「絵が上手いな」と褒めてもらっていたことを思い出し、手に職をつけたいと思うようになったんです。

両親が共働きで、普段から弟によく料理を作っていましたし、時々母がケーキを焼くときには手伝いをすることもありました。 またその頃、パティシエが主役のドラマが人気になっていて、「かっこいいな」と憧れたこともあり、パティシエの道に進みました。

――「オテル・ドゥ・ミクニ」などで経験を積んだ後、渡仏されたんですよね。

ミクニでは焼菓子からスタートしました。当時はもうめちゃくちゃ焼きましたね。仕事を通じて、焼菓子の奥深さにハマっていきました。オーブンのクセ、外気温、生地の状態。毎日の変化を見極めながら、合格ラインまでもっていく。それが難しくも楽しくて、今でも焼菓子づくりはとても好きなんです。お店でも30種ほど並べています。

▲渡仏時代からコツコツ買い集めてきたという「ミシュランガイド」。インテリアに溶け込んでいる

――焼菓子が30種とは豊富だなと思っていたのですが、そうした理由もあったのですね。フランスでの修業先はどなたかの紹介ですか?

いえ、自分で探しました。海外の修業先って「無給なら働いてもいいよ」というお店は多いんです。でもミクニで5年勤めて自分の実力にある程度自信がついたので、きちんと給料がもらえるお店に絞りました。

「自分の経歴、今のスキル、給料もある程度欲しい」という内容をフランス語で書き、出した手紙は30通ほど。ビザが1年しか下りなかったので、地中海レストランの「ル・プティニース」で8か月ほど、残りの4か月はパティスリー「シェ ギエ」で。できればもっと長くいて、他の店なども経験してみたかったですね。

――帰国後は埼玉・川口の人気店「シャンドワゾー」に入られるんですよね。

帰国してから、次はどこの店に行こうか少し迷っていたんです。そんな時、雑誌で「シャンドワゾー」村山シェフの特集を見てお店に伺ったところ、自分が理想とするお店のイメージにぴったりでした。都心の一等地ではなく郊外で、しっかり地に足をつけて経営されている。また、自分と比較的年齢の近いオーナーシェフはどのような店づくりをしているのか、今後目指す独立に向けて新たに学びたい想いもありました。

「シャンドワゾー」での5年間はお菓子づくりのほか、スタッフ管理など事務的な仕事もしていました。当時はスタッフ数十人のシフト作成をしていたので今は楽な方です。 また、村山シェフはとても経営が上手だと感じていたので、そうしたノウハウを身近で見続けることができたのは財産でしたね。 独立するならお菓子を作る以外も身に付けないといけません。それが今に生きていると思います。

――経営者としての必要面も学ばれたんですね。最後に、今後独立を考えている人へアドバイスをお願いします。

「持ちたいお店のイメージを固めておくこと」「自分の引き出しを増やしておくこと」の2点を大事にしておくと良いのではないでしょうか。

独立を決めてからひとつひとつお菓子をイチから試作していたのでは膨大な時間がかかります。その手間を省くためにも、日頃から「自分だったらこうするなあ」という目線で物事を考え、時には試作してみる。するとレシピや作り方の問題点が浮き彫りになります。

今、私の店に並んでいるお菓子も、実際に作ってみて、さらに改良を重ねて…と生まれたものばかりなんです。 まずは店名や包材、並べるケーキを想像するところから始めてもきっと楽しいはず。そうした積み重ねがあると、「いざ独立!」という時スムーズに動けるんじゃないかと思います。

編集後記

「今は10坪ほどの小さな店ですが、40歳くらいまでには30坪ほどの広い店舗に移転したい」「催事に出せるような店にしていきたい」と今後の展望を話してくれた伊東シェフ。このお店を明確にイメージしていた時のように、シェフの頭の中にはすでに将来のイメージができあがっているように思えました。ひばりが丘に根付く実力派パティスリーとして、今後さらに注目していきたいお店です。

◆パティスリー ショコラトリー ル マグノリア

住所:東京都西東京市谷戸町3-10-2 クレールひばりヶ丘1F
営業時間:10:00〜19:00
定休日:火曜日
SNS:公式Facebook

この記事の筆者

田窪 綾

調理師免許持ち、レストラン勤務経験ありのライターです。東京都内近郊を中心に、食と食に関わる方の取材執筆をしています。(Twitter:aso0035)

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