「将来、自宅でお菓子教室を開きたい」
パティシエとして将来どんな風になりたいか、と考えたときに、こう答える人もいるのではないでしょうか。
ただ、お菓子教室を開くと言っても、どんな準備が必要なのか?実際はどんなものなのか?
なかなかイメージできないのではないでしょうか。
そこで今回は、現在自宅でお菓子教室を開講している筆者の体験談をまとめてみました。
もちろん、人それぞれ内容は異なりますので、ひとつの参考として読んでもらえたらと思います。
筆者は製菓専門学校卒業後、パティスリーで10年程パティシエとして勤務した後、結婚や子育てと仕事の両立が難しいこともあり、退職してパティシエの仕事から離れました。
しかし、やはりお菓子作りが好きな気持ちが抑えられず、自宅でお菓子づくりを続けながら、近所の人や友人にプレゼントしたりしていました。
その後、子育てが落ち着いてくると、なんとかして身に付けた技術を生かしたい、もう一度、ケーキをつくることで人に喜んでもらいたいと考えるようになり、自宅でのお菓子教室の開講を決めたのです。
教室をはじめるための準備
お菓子教室をはじめようと決めてから、まず2つのことを考えました。
まず、設備について。
家庭用の電気オーブンでは、お店のオーブンのようには焼けませんし、冷凍庫もショックフリーザーではありません。
作る量も、ケーキ1台程度なので、お店の配合では多すぎます。
道具も小さかったり、出力が足りなかったり、「家庭でつくる」ことを踏まえて、考えなければいけないことはたくさんありました。
また、教室を開くときには人数分の道具が必要になります。
筆者の場合は1クラス3名の定員にしていたため、つくるケーキによっては10以上のボール、予備も含めた5台のケーキスタンドなど、保管場所だけでもかなりの場所をとりました。
次に、レシピ作りについて。
例えば、お菓子教室で人気の「当日作ったケーキを一台丸ごとお持ち帰り」する場合。
お店の配合を5号ケーキ1台分に割ってみると、少量しか使わない材料が0.1グラムや0.2グラムなど、家庭用の量りでは量れないぐらい少量になってしまったり、クリームなどは少量過ぎて鍋で炊くのが難しくなってしまったりします。
また、美味しいものを作ってもらおうと張り切って凝ったケーキを考えると、初心者さんには手数が多すぎて難しく、時間もかかり過ぎてしまったり。
材料も通常のスーパーでは手に入らず、製菓材料店でもなかなか見つからないなど、様々な問題が出て来ました。
そこで、お店で作っていたレシピを以下の4点に気を付けて再構築しました。
・できるだけ簡単な手順にすること
・家庭用オーブンや市販の道具で作れること
・製菓材料店ではなく、スーパーでも手軽に入手できる材料であること
・2時間以内で完成して、持ち帰れる状態にできること
この条件をクリアできるよう、試行錯誤しながら自分なりのレシピを作り、生徒さんに教えることにしました。
また、季節やイベントに合わせたメニューにすることも大切です。
春はイチゴを使ったメニュー、夏はフルーツをたっぷり使ったカップ入りのムースやジュレなどの冷菓、秋はマロン、冬はクリスマスのデコレーションケーキ、2月はバレンタイン用にプレゼントできるチョコレート菓子など、当日に家庭で作れるよう、教室はそれよりも前に開く必要があります。
そこで、イベントの前に余裕を持って教室を開けるように、1年間のレッスン予定を決め、教室をオープンさせました。
生徒さん集め
お菓子教室は、宣伝しなければ生徒さんは集まりません。
はじめは知り合いやその友達など、口コミが有力になりますが、宣伝をすることでより多くの生徒さんを集めることができます。
その際、お菓子教室を「趣味」でやるのか「仕事」と考えるのか、家庭とのバランスはどうするのか、など、運営の方針や目標を決めると、いろいろな計画が立てやすくなります。
筆者は家庭と両立させながらの教室だったため、週に3~5回程度のレッスンを開くことを目標にしていました。
ブログやホームページで告知する場合には、1年間のだいたいのレッスンメニューの写真と、今月のレッスンメニューの写真をアップしておきます。
キレイな写真はやはり興味をそそるので、アクセスも増え、予約が入りやすくなります。
また、大手レシピ投稿サイトの加盟教室などになることで、より集客しやすくなるかもしれません。
最近はパティシエ経験のない方でも、お菓子教室に通い、ライセンスの試験に合格することで系列の教室をオープンできる、という仕組みもありますが、プロのパティシエだからできる技術やレシピ、伝えられることなどもあります。
生徒さんからは「お店で売っているような凝ったケーキを簡単な手順で作れるから、家族や友人から褒められる」と好評でした。
お菓子教室のやりがい
生徒さんのことを考えながらレシピを組み立て、試作して、お話をしながら一緒にケーキを作って、お菓子作りが初めての人でも、きちんと形にして持って帰ってもらえるようにする、という一連の仕事は、パティシエとして働くのとは全てが違い、新鮮です。
そこには実際に自分が作る楽しさに加えて、「教える」喜びがあります。
そして、パティシエのとき以上に「お客様」である生徒さんとの距離が近いため、よりダイレクトに反応を感じることができるのも大きな魅力でした。
ケーキが出来上がったときの生徒さんのうれしそうな顔や、試食タイムの満面の笑み。
「先生、美味しかった!」
「私にもちゃんと作れた!」
「この前のケーキ、子供がすごく喜びました!」
などと喜んでくださると、こちらも教え甲斐がありますし、また頑張ろう、という気持ちにもなります。
多くの笑顔を間近で見ることができ、それが「口コミ」となって生徒さんが増えていくのを感じることも、お菓子教室をやっていて良かった、と思う瞬間でした。