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インタビュー

4大卒後、未経験でパティシエの道へ。「人生で一番何を実現させたいか」を考えた


パティシエとして働く。でも、その働き方は人それぞれです。このまま社員として勤め続けるか、独立して自分のお店を持つか。この先のパティシエ人生をどう進めていこうかと、迷っている方も多いのではないでしょうか。

その迷いを断ち切り、独立への一歩を踏み出したパティシエは、どのように考え進んできたのでしょう。実際に開業してみて、思うのはどんなこと?

今回は川崎市宮前区、鷺沼駅にほど近い場所でパティスリーを営む女性オーナー、阿部雅子シェフにお話をお聞きしました。

製菓学校出身ではなく、イチからお店で修業。38歳でフランスへ留学。
紆余曲折を経て独立した阿部さんは、パティシエとしてこれまでどんな歩み方をしてきたのでしょうか。

阿部雅子(あべまさこ)さん

北海道函館市出身。4年制大学を卒業したのち福祉系企業へ就職しようとするも、すぐに方向転換。カフェ開業を目指し、製菓技術を身につけるためパティスリーへ就職する。青山「シャンドン」、国立「レ・アントルメ」で勤務したのち渡仏。「シュクレ・カカオ」「ラ・ロトンド・モンパルナス」などを経て帰国。2014年、川崎市宮前区鷺沼に自身の店「パティスリーリュテス」をオープン。

お客様のニーズに合わせ、臨機応変に

――色とりどり、華やかなケーキが並んでいますね!「リュテス」のお菓子を作るうえで、心がけていることなどはありますか?
季節のフルーツを中心に、旬を感じられるケーキを作っています。合わせて常時15種類くらいでしょうか。物件のオーナーさんが畑で育てておられるので、それを使わせていただいたり。今ならイチジクや梨、ブドウなど、その時期に美味しいものに合わせて臨機応変に変えています。

また、このあたりはお子さんがとても多い地域なので、お酒が効いたものは作るのを控えるようになりました。売れ筋は定番よりも、組み合わせやデザインが変わったものが人気ですね。同じものを長く作るのではなく、お客様の反応を見ながら色々作るのが好きなんです。こうした切り替えが自由にできるのは自分の店だからこそ、と思いますね。

製菓学校入学は「キャンセル待ち45番目」だった

――阿部さんは4年制大学を卒業後にパティシエを目指されたそうですね。きっかけは何だったのでしょうか。
大学卒業後は福祉の企業へ就職しようと考えました。でも研修中、すぐに「私は誰かのために仕事するのではなく、自分のために仕事したいタイプなんだ」と気づいたんです。そこで、以前から憧れのあったカフェをやろうと方向転換。まずはおいしいお菓子が出せるように製菓学校に通おうと決め、2年間アルバイトでお金を貯めました。ただ、この時ちょうど鉄人ブーム(※)で製菓学校は入学希望者が殺到、「定員オーバーで、すでに45人待ち」だと断られてしまったんです。来年まで待っても入学できる保証はありません。それなら自分でお店に飛び込んで修業させてもらおうと決めました。

※1993〜1999年で放送されていた、料理バトルを行うテレビバラエティ「料理の鉄人」から巻き起こったブーム。番組の影響で「料理人」がなりたい職業ランキング3位に選ばれたことも。料理人だけでなくパティシエも出演し、料理バトルを繰り広げていた。(編集部より)

――そうだったんですね! お店はすぐに決まりましたか?
いいえ、不採用続きでした。その時すでに24歳。製菓の基礎も知らない女性が、いきなり行っても門前払いでしたね。何店も落とされて、もう無理かと諦めかけていたとき、何も聞かずに受け入れてくれたのが青山にあるシャンドンのシェフでした。今はもう閉店してしまいましたが、基礎をみっちり教えていただき、本当に感謝しかないです。

――その後は「レ・アントルメ国立」へ移るのですよね。
シャンドンで3年ほど経ったころ、人から「国立においしいパティスリーがあるらしい」と聞いて。当時は東京郊外の立川に住んでいて、国立は隣駅なのでリサ―チのつもりで気軽に食べに行ったら、あまりのおいしさに衝撃を受けました。「ここで絶対働きたい!」って強い想いが湧き出てきて、すぐお願いしたのを覚えています。そこから足掛け10年以上、お世話になるパティスリーです。オーナーの魵澤(えびさわ)信次シェフは厳しかったけれど、フランス菓子の素晴らしさを教えてくれました。38歳でフランス留学を決めた時も、シェフは現地在住の知人を通して働くお店や下宿先を紹介してくださり、色々手助けしてもらいました。

――38歳で渡仏し、3年間を過ごされたんですよね。帰国後、すぐに開業したのでしょうか?
帰国後は地元の函館に戻り、お店を開くための物件探しをしていました。でも私が暮らしていた頃と違って、人が全然いないって気づいたんです。下校時刻なのに学生を見かけない。寂しいことですが、ここでは長くやっていけないなと感じてしまいました。それなら友人知人、業者の方など知り合いがたくさんできた東京で店を開こうと決めたんです。その際も魵澤シェフが「うちでまた働きながら物件を探したらいいよ」と言ってくれたので戻ることにしました。お金を貯めながら今の物件に決めるまで2年ほどかかりましたね。

▲主婦の方が多いので、包材はかわいらしさと大人らしさをイメージして、濃い目のピンクに。

▲焼菓子は詰め合わせなどで選んでいただけるように、25種類以上取り揃えるそう。

独立開業が夢であり、スタート地点だった

――そしてついに2014年「パティスリー リュテス」をオープンされたんですね。これまでに独立ではなく、勤務を続けるなど安定雇用の道を考えたことはなかったのですか?
安定の面から考えれば、勤務していた方が良かったのかもしれません。でもカフェをやりたい、お店を持ちたいという思いはずっと昔からあり、それを大前提として動いてきました。ただ、長年ケーキの美味しさと奥深さに触れているうちに、夢はパティスリー開業に変わったというだけです。だからお店のオープンがゴールではないんです。自分の中では、ようやくスタート地点に立てたような感じですね。

――なるほど。開業への不安などはなかったのですか?
それがとくになかったんです。うちは両親も自営で、地元で飲食店を長く経営していることも影響しているのではと思います。いつも楽しそうにお店に立っていたのを見てきたので”自営は大変”というイメージがなかったんです。また、魵澤シェフから「小さくても自分のお店を持て。一国一城の主になれ」と折に触れて言われていたのも大きいと思います。”お店を持つ”は当たり前に。そのあとは開店してから色々学んでいきました。

――2018年9月で、オープンから丸4年です。大変だったこと、変わったことなどがあれば聞かせてください。
自分はともかく、スタッフにお給料が払えるかどうかが一番の心配事でした。そのリスクを最小限にするために、当初から私ともう一人のスタッフの二人体制でやってきました。繁忙期は一時的にアルバイトを入れて対策をとっています。短期募集なのですが、張り紙をしていると近所の方やお客様などが働き手として助けに来てくれるんですよ。交通費があまりかからないのがありがたいですね。

――二人体制だと、病気やケガなどのリスクもありますよね。どうされていますか?
スタッフが欠勤した場合は、自分ひとりでできる範囲に切り替えます。少なくともオーダー分だけを作れば、その日はなんとか乗り越えられますから。あとは申し訳ないですけど、「今日はここにあるものだけなんです」とお客様に謝っちゃう。私自身は、あとから大きい病気になるよりは…と、お店を始める前に全身をくまなく検査しました。その時に婦人科系の病気がひとつ見つかったので、早めに治療して完治させています。

自分を無理させない、追い込みすぎない

――なるほど…。開業するうえでの覚悟、みたいなものを感じます。
長く続けるためには、自分を追い込みすぎないことが大事かなって思います。決まり事を作ると、無理しなくちゃいけない。それは自分に全部降りかかってきてしまいますから。柔軟に続けていくことが経営の秘訣かなと思うようになりました。

――女性のパティシエの方は、結婚や出産など、ライフスタイルの変化で働き方も変わりますよね。
そうですね。サポートしてくれる方がいれば、パティシエの仕事も、妻も母も、オーナーとしての仕事も両立できるのではと思います。でも私には難しかった。何かを選ぶ=何かを捨てる、になってしまう。開業を目指すなら全力投球したい、最優先で動きたい。「人生で一番何を実現させたいか」を考えた結果なので、悔いはありません。だから今、毎日がすごく楽しいんです。肉体的にはしんどいこともありますけど、「次は何を作ろうか」と考えたり、お客様とコミュニケーションを取ったりできる毎日がすごく充実しています。

店舗プロフィール

LUTECE(リュテス)
住所:神奈川県川崎市宮前区土橋3-2-6
HP:http://www.p-lutece.com/

取材後記

繊細なデザインと確かな味、そして気さくなオーナーの人柄。「パティスリー リュテス」は地域情報誌などにも頻繁に取り上げられ、地域で親しまれている洋菓子店です。

「もっと勉強して、お客様に喜んでもらえる看板商品を作りたい」と目を輝かせながら話してくださる阿部さん。朗らかさだけでなく、経営者としての覚悟と力強さが垣間見えたインタビューでした。

この記事の筆者

田窪 綾

調理師免許持ち、レストラン勤務経験ありのライターです。東京都内近郊を中心に、食と食に関わる方の取材執筆をしています。(Twitter:aso0035)

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