恋人と、家族と、友達と…。
過ごすシーンは違っても、クリスマスはたくさんの笑顔とワクワクと、皆の“幸せ”が詰まった特別な日。
一方でパティシエにとっては、仕事に追われ余裕が無くなる「大一番」という方も多いのではないでしょうか。
『私以外のパティシエは、クリスマスをどう乗り切っているのだろう?』
たくさんのパティシエと接するパティシエントのスタッフも、他のパティシエがクリスマスをどう過ごしているか気にする声をよくいただきます。
そこで今回は3人のパティシエに、それぞれが思う“クリスマスを乗り切る秘訣”をインタビューしてきまた。
出典:www.thenutritionguruandthechef.com
まずお伺いしたのは大阪郊外にある個人で経営されているケーキ屋さんです。
「いらっしゃいませ!」と元気に迎えてくれたのは、今回インタビューさせていただく3年目の女性パティシエの方。
仕事内容はまだまだ仕込みがメインで、忙しい時間帯は接客に入ることもしばしば。
暦にもよりますが、クリスマスケーキの受け渡し日は23日から25日がピークになる傾向が多く、当日は接客がメインになるため、仕込みの量をいかに効率よくしておくかが重要だそうです。
『1年目はとにかく睡眠不足が辛くて…。構えてはいたものの想像以上だったので、そのギャップに苦しみました。』
でも今では2、3時間の睡眠時間でも上手に疲れをとる方法が自然に身についた、と笑顔で話してくれました。
クリスマスの時期も小物ケーキを購入される方は多く、通常の倍以上の仕事量で一息つく暇も惜しいくらい。
―そんな環境でも頑張れる根源ってなんでしょう?
『入店した当時は辛くて楽しさを味わう余裕がなかったのに比べ、今では任せてもらえる持ち場も増えてきて、自分自身で成長を実感しながら仕事に取り組めているところが大きいですね。
そして、私の店はお客様と直接お話しする機会も多いので、お客様の笑顔や「ありがとう」の言葉が何より嬉しく自信に繋がっています。疲れていても、今年も乗り切ろう!来年はもっと頑張ろう!と自然とやる気が出てくるんです。
もちろん肉体的に、精神的に辛いことも多いですが、この仕事を選んで良かった、と思わせてくれる瞬間もこの時だから辞められないですね。』
厳しい環境でも成長していることの実感、やりがいを見つけ真っ直ぐに仕事と向き合う。
そんなパティシエの想いを聞けて、目の奥がジーンとなった筆者なのでした。
出典:instantchef.com
次にお伺いしたのはブライダルレストランで働く歴2年目の女性パティシエの方。
入社して2度目のクリスマス、彼女自身もまだ慣れないと緊張した面持ちで仕込みに取りかかっている中、お話しを伺いしてきました。
この時期は限定のランチやディナーが始まり、キッチンや受付のスタッフはその対応でバタバタ!
そんな中、パティシエの様子はというと…。
忙しいキッチンの状況に合わせて動いていくので、いつもよりハイクオリティなデセールをやはりハイペースで仕上げていかないといけません。
さらにメイン料理との相性も考えながら作るデザイン性の高い飾りには、素材の新鮮さも重要だとか。
前日から仕込めるものもあれば、その時その時に仕上げていくものも多くあるため、作業を迅速かつ丁寧にしながら、いつもの倍の量を仕上げていくそうです。
特別な料理を締めくくる大切な役目のデセール。
どんなに忙しくても1品1品美しく盛りつけることに妥協は許されません。
―2年目でも色々なことにチャレンジされているのですね!
『私が働いているこのレストランでは、短いスパンで広く様々な事に挑戦させてもらえています。
この時期限定のデセールは特に魅力的なデザインのものが多く、飾りつけや盛りつけ方にこだわりたい自分にとって勉強になっています!』
また、業務に没頭しながらもクリスマスを楽しめるように、制服をアレンジしたり、キッチン内を飾ったり、先輩と工夫しながらモチベーションも上げているのだとか。
ほんのわずかでも、モチベーションの高さによって心や体の疲れ具合は変わってくるもの。
長時間皆で働く環境だからこそ、居心地の良さも大切ですよね。
最初にお話しを伺った個人店とはまた違った気持ちを高めるための工夫は、ブライダル業界以外で働く方も参考にできる部分があるかもしれませんね!
出典:parisleluxe.com
長年業界に携わるベテランパティシエは、繁忙期をどのように乗り越えているのでしょうか?
筆者の急なインタビューの希望に快く対応してくれたのは、この道10年の男性パティシエの方。
準備に取りかかりだすのは、比較的落ち着く夏の時期から。ハロウィンと同時進行で進めていきます。
睡眠時間を削り、休みを削り、ひたすら今年趣向のケーキの研究と開発に勤しむ期間が数ヶ月と続く日々。
―10年間パティスリーで経験を積まれてきた中で、毎年訪れるクリスマスの繁忙期をどのように感じていますか?
『この業界に入った以上、クリスマスは一番自分たちが求められている時期であることは分かっているから、マイナスに捉えたことは一度もないですね。
労働時間が長くて身体的に辛かったり、思うように技術が上がらず悩んだりもしたけど、やっぱり自分の作ったケーキやお菓子を食べて「美味しい」と言ってくれる事が一番の喜びだからたくさん作れてむしろ嬉しいです。
もちろんクリスマスに限らずどんな時でも、周りのスタッフに感謝すること、仕事に取り組む前向きな姿勢は意識しています。』
そして、クリスマスが終わった後もお正月、バレンタインデーと忙しい冬の時期だからこそ気をつけているのが、“体調面”について。
『1年の締めくくりをする大切なイベントであり、スタッフ一丸となって取り組んできたことだから全力でやり抜きたいのが本心。
だけど体調は思い通りにいかないから、日常生活で自分の体と向き合いメンテナンスを怠らない事を意識しています。』
また、まだ繁忙期の忙しさに慣れていないスタッフが労働時間の調整に悩み、仕事とうまく付き合っていけず体調を壊すことも多いそうです。
その時にいつも言っている事が「休む」、これも大事な仕事の内の一つということ。
1日10分でもリラックスできる環境を作ることでモチベーションも大分変わってくるのだとか。
繁忙期に向けて体調を整える、ではなく普段から自分自身の身体の事を知っておくことが結果、繁忙期を乗り越える体力にも繋がっていくのですね。
当然のことのようですが、この時期の業界ではなかなか難しいのも事実…。
皆さんは自分だけのリラックスタイム、しっかりとれていますか?
出典:magazine.lebonmarche.com
パティシエとしての歴、携わる業界、扱う商品の種類などによって繁忙期を乗り越える方法は様々だと思います。
今回のインタビューで特に印象的だったのは、3人とも「周りのスタッフへの心遣い」や「お客様の喜びに対してのこだわり」そして「体と心のメンテナンス」をとても大事にしていることでした。
忙しい時期だからこそ、働く環境や人との接し方次第で仕事の質を高めることもでき、自分自身の成長を見出すひとつのきっかけにもなるのですね。
―その先にクリスマスを待っている人がいる限り。
―とびきりの1日のために、小さな幸せのために。
あなたは「クリスマス」をどう乗り切りますか?
パティシエ歴3年の女性の場合 〜個人経営のパティスリーのクリスマス〜

パティシエ歴2年の女性の場合 ~ブライダル業界で働くパティシエのクリスマス~

パティシエ歴10年の男性の場合 〜ベテランパティシエのクリスマス〜

“忙しさ”の先に得られるもの
