天然酵母の管理に「変革」をもたらしたエリック・カイザー

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エリック・カイザーと言えば、パン業界で知らない人はいない程、有名な人物です。 そのカイザー氏が立ち上げたブーランジェリーは「メゾン カイザー」の名で世界中で広く親しまれ、日本でも首都圏を中心に20店舗以上展開され、多くの人に愛されています。 今回は、そんなカイザー氏の経歴をご紹介します。 出典:MAISON KAYSER オフィシャルウェブサイト kayser カイザー氏は1964年、フランスのアルザス地方に生まれました。 代々パン屋の家系で、幼少のころからパン工房に強い憧れを持っていたと言われています。 それは、6歳になると早朝から父親についてパン屋に出かけていたことからもうかがえます。 学校を卒業して働ける年齢になると、フランスを一周しながら様々なパン作りの修業を積みました。 その後はその経験を活かし、職人養成機関である国立製パン学校で講師として教鞭をとり、職人の養成に注力します。 それと同時に、カイザー氏はイーストの乱用により味が落ち続けていたフランスのパン業界に危機感を抱いたのです。当時のパンは製造の効率を優先した結果、高密度のイースト菌を使用し、小麦の風味が薄れてしまっていました。それは、フランス人ですらパンを食べる機会が減ってしまうほど。 そのため、カイザー氏は1800年代以前の伝統的な製法でのパン作りに戻すことが必要だと考え、友人と共に「ルヴァン フェルメント」を作り上げました。 ルヴァン フェルメントとは天然酵母を管理する機械のこと。 現在もメゾンカイザーのほぼすべてのパンに使われている「ルヴァン リキッド」と呼ばれる液体の天然酵母を安定して管理できるようにしたものです。 当時、劣悪な環境で長時間労働だったパン職人たちは、パン作りに対する意欲も低下し、天然酵母による発酵の技術の追求は難しいものになっていました。 そんな時代に、機械ひとつで天然酵母の管理ができるようになったルヴァン フェルメントの登場は、当時のフランスのパン業界に衝撃を与え、製品化されると各地のパン屋で取り入れられるようになりました。 ルヴァン フェルメントによって管理されたルヴァン リキッド(液体の天然酵母)でつくるパンは、様々な酵母が発酵を促すため、味に奥行が生まれ、カイザー氏が求めていたパン本来のおいしさを復活させることに成功したのです。この功績は、エリック・カイザーの名がフランス中に知れ渡るきっかけともなりました。 1922240_1672445236303560_858769110_n kayser_insta_1 出典:instagram.com maisonkayser 出典:instagram.com maisonkayser さらに1996年、満を持してパリで開店した自身のお店では、1日に3000~4000本という驚くべき量のバゲットが売れ、伝統的な製法で作るパンのおいしさが消費者によって改めて評価されることとなったのです。 1店舗目の成功は2店舗、3店舗目とつながり、フランスだけでなく日本、ニューヨークなど世界への進出にも広がっていきました。 今では日本でも取り入れられているルヴァン フェルメントですが、カイザー氏がいなければ天然酵母による風味豊かでおいしいパンはなかったかもしれません。さらに今でも各地で職人の技術向上に力を注ぎ、未来へとその技術をつなげていこうとするカイザー氏は、パンの歴史で最も偉大な功績を残した人物の一人と言えるでしょう。
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