洋菓子業界のコンテストはパティシエの技術力を高めると同時に業界全体を盛り上げるイベントです。国内外で様々なコンテストが開催され、そこに向けてパティシエは日々技術力を高めています。
ただ、パティシエとして働いているすべての人がコンテストに出品するわけではなく、勤務先によってコンテストへの取り組み方は様々で、毎年必ず出場するところもあればまったく出場しない店・企業もあります。
現在有名パティシエとして活躍する人の多くがコンテストでの受賞歴を持っていますが、受賞そのものよりも目標に向けて努力する過程が大切だと言えるでしょう。またコンテストの常連ともなれば顔見知りのライバルも増え、勤務先を越えた業界でのコミュニティを築くきっかけにもなります。
コンテストに出品する作品は通常のお店に並べる商品とは異なり、ピエスモンテ(ディスプレイ用の装飾菓子)の場合が多いです。つまりコンテストに出るということは、通常の勤務後に練習をすることになります。
ただでさえ勤務時間の長い洋菓子業界で、さらに通常勤務後に練習をすることは体力勝負になる面もありますが、「コンテストで入賞する」という目標を掲げることで自分のスキルアップにもつながるだけでなく、将来パティシエとして活躍する上で必ずプラスになる経験を積むことができるでしょう。
ここでは国内外の主要なコンテストを紹介します。
国内のコンテスト
西日本洋菓子コンテスト
大阪、兵庫、京都、奈良、滋賀、和歌山、岡山の計7府県の洋菓子協会で共同開催される、1958年からはじまった西日本における若手の登竜門的コンテストです。
当日実技でピエスモンテを仕上げることで競われる「技術部門」の他、持ち込みの作品で競われる「味と技のピエスモンテ」「チョコレート工芸菓子」「小型工芸菓子」「マジパン細工」「ディスプレイ」の合計6部門で行われます。当日制作の部門は経験年数によってクラスがわかれるなど、同キャリアのパティシエの中での自分の技術レベルを図る上で有益な大会です。
全国洋菓子技術コンテスト大会
日本洋菓子協会連合会が主催する、1982年から5年おきに開催される洋菓子技術コンテストです。
2時間30分という短い時間内で直径24センチ(8号程度)のデコレーションケーキをマジパンなどで飾り付け、その技術力や美しさを競うものです。優勝作品は国内最大級の製菓業界の作品展である「ジャパン・ケーキショー」に展示されます。
「ジャパン・ケーキショー」では日本全国約2000点以上の作品が出品される作品展が11部門に分かれて開催されるなど、洋菓子業界を様々な分野で盛り上げるイベントとなっています。
社団法人東京都洋菓子協会 http://www.yogashi.net/
大阪府洋菓子コンテスト
年に1度、大阪の洋菓子業界の発展とパティシエの技術力向上を図り開催されるコンテストです。
飴細工のピエスモンテ、ショコラのピエスモンテ、ヘクセンハウス、ブッシュ・ド・ノエルの4部門の他、学生部門としてマジパン細工、ブッシュ・ド・ノエルの2部門の競技が行われます。
クリスマス前の開催ということもあり、「クリスマス」をテーマにした華やかな作品が並ぶのが特徴です。年々参加者も増え、大阪の洋菓子業界を盛り上げるコンテストとして知られています。
大阪府洋菓子協会 http://osaka-cake.com/
トップ・オブ・パティシエ・イン・アジア
本場フランスで開催されるコンテストとは別に、近年進歩の目覚ましいアジアにおいてNo.1のパティシエを決めようとする、2013年が第一回大会のまだ新しいコンテストです。東京で開催される「ジャパン・ケーキショー」内にて2年に1度行われる予定で、2013年には日本、韓国、中国、台湾、ベトナム、マレーシア、オーストラリア、香港の8か国の選手が2日間にわたって実技を競い、作品を作り上げました。
チーム制の国際大会が多い中、1人のパティシエがすべての作品を作り上げるのが特徴で、「チョコレートのピエスモンテと2種類のボンボン・ショコラ」、「アメのピエスモンテとアントルメ」を合計15時間かけて製作します。第一回大会は日本人パティシエが優勝を飾るなど、今後が楽しみなコンテストのひとつです。
兵庫県洋菓子協会主催 クリスマスケーキコンテスト
兵庫県洋菓子協会が主催する、1959年以来毎年開催されている歴史あるコンテストです。洋菓子技能の向上、新製品の研究開発を図り、洋菓子業界を盛り上げるために開催されています。
種目は経験年数によってクラスの分かれる第一部のクリスマスデコレーション、経験年数不問の第二部 ヘクセンハウス、第三部 学生の部に分かれ、2日間にわたって一般公開され、評価されます。当日実技はありませんが華やかなデコレーションケーキが持ち込まれ、クリスマス直前に神戸の洋菓子業界に花を添えるイベントとなっています。
海外のコンテスト
クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー
1989年にはじまったパティシエのためのコンテスト。2年に1度フランスのリヨンで開催される、世界でもトップクラスのコンテストとして知られています。
大会では飴細工とアントルメショコラ(チョコレートケーキ)の部門、チョコレート細工とチョコレートを使ったアシェットデセールの部門、氷彫刻とアントルメグラッセ(アイスクリーム)の部門ごとにその技術を競いあいます。
日本代表は国内予選によって選ばれ、各部門ごとの優勝者が3人1組で日本代表として出場します。2015年大会では日本は惜しくも2位という結果でした。
公式サイト:http://www.cdmp-japan.jp/
ワールド・ペストリー・チーム・チャンピオンシップ(WPTC)
2年に1度アメリカで開催される製菓技術を競う国際大会です。2002年からはじまった新しいコンテストですが、他のコンテストに出場ができないとされる「M.O.F」(フランス最優秀職人賞)を取得したハイレベルなパティシエが出場できる唯一のコンテストであり、洋菓子業界屈指のハイレベルなコンテストとして注目されています。
大会は2日間、合計13時間にわたって行われます。国ごとに3人1組でチームを組み、アントルメ、プティガトー3種、アントルメグラッセ(冷菓)、アシェットデセール(皿盛りデザート)、チョコレートボンボン3種の計9種のガトーを競う「味覚部門」、その芸術性を競う「飴細工部門」と「チョコレート細工部門」の合計3部門でその技術を競います。
味覚部門の作品数が多いことからもわかるように、見た目の美しさ以上に味に重点が置かれたコンテストと言えるでしょう。この大会では2010年、2012年大会において日本チームが優勝を飾るなど、日本のパティシエが技術力の高さを見せつけています。