オーナーインタビュー:パティスリー ルクール 入江 健介さん

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パティスリー ルクール オーナーシェフパティシエ 
入江 健介 さん

2015年4月、地元枚方にパティスリーをオープンしてから、約4か月。
準備期間はなんと2か月半という短期間でオープンに至った経緯と、オープン後に苦労したこと、今後の展望などをお聞きしました!

まず、独立のきっかけを教えてください

今年の4月末に店をオープンしましたが、実は、独立はもう少し先の予定だったんです。
17歳でパティシエになったときから、「絶対に独立する」と決めていたので、もちろん準備はしていましたが、パティシエの経験を積むうちに、本格的なパンも提供したいという気持ちが大きくなりまして。
いくつかのパティスリーで修業させてもらった後で、今度はパンを学ぶために、パン屋に転職したんです。
ここで最低3年はがんばってパンの技術を身に付けようと思っていた矢先、奇跡的に理想の物件が見つかったのが、このタイミングで独立に至ったきっかけですね。
パン屋への通勤途中に、駅近で、大通りに面した、良いかんじの物件が、ずっと「改装中」になってるな、と思ってて。
それがある日いきなり「売り物件」の張り紙に変わったので、慌てて問い合わせをしました。
そんなかんじで予想外のタイミングで理想の物件が見つかったので、もうこのタイミングしかない!と思いましたね。
パン屋のオーナーには事情を話して、頭を下げまくって辞めさせてもらいました。
3年はがんばります、と入ったのに、結局1年足らずで辞めることになってしまったので。

その後、お店をオープンさせるまでの具体的な流れを教えてください

ざっくりと言うと、

1. 物件の確保
2. 家族の説得
3. 取引業者の確定
4. 店の外観、内観決定、施工
5. 機材の搬入、店舗の完成
6. 商品の試作開始
7. 開店準備→開店!

こんなかんじですね。
12月末に物件が売りに出て、年末年始があったのでその間は準備が進まなくて、1月中旬から本格的に準備をはじめました。

実際に動き出して、業者さんと連絡を取りはじめたのは2月に入ってからですね。
業者の確定に関しては、生クリームやフルーツなどの食材はもちろん、機材とか包材とか、店をやるために必要なもの、全ての業者を真っ先に決めました。
ただ、業者に関してはゼロから探したわけではなくて、前職で取引していた業者さんに、「自分が独立したら取引してくれますか?」みたいなかんじである程度声をかけていたので、比較的スムーズでした。
次に店の外観とか内観を決めないといけないんですが、これも、以前勤めていたお店が新店舗を出すときに入ってくれた建築会社さんにお願いしました。
でも、「僕が独立するときもよろしくお願いします」って言ってたぐらいで、その後特に連絡もとっていなかったので、何年かぶりに「覚えてますか?」って連絡したんですけどね(笑)
連絡したらすぐに物件を見に来てくれて、これならこんな工事が必要ですよ、みたいな話を具体的に進めていきました。

DSC02697 この頃は、業者を決めて店の内観や外観を決めて、しかもその間もパン屋で働いていたので、とにかく大変でしたね。
業者さんとの打ち合わせも夜遅くになることがほとんどでしたが、それでも皆さんが付き合ってくれたので、良い方々と出会えて本当に恵まれていたと思っています。

それからは、パン屋を3月末に退職することになっていたので、その前日に厨房ができるようにスケジュールを組んでもらいました。
営業していないのに高い家賃を払い続けるのもイヤだったので、できるだけ早くオープンさせたくて。
結果的に、2月から本格的な準備をはじめて4/27にオープンしたので、2か月半で準備して開業したことになりますね。
本当にいろんな人に助けてもらって、こんな短期間でオープンできたのだと思います。

資金に関しては、働きはじめてからずっとコツコツ貯めていたので、物件が見つかった段階で1,000万円ほど貯金がありました。
ただ、それだけでは全然足りなかったので、父からお金を借りて資金をつくりました。
幸い、国金などからの融資を受けなくても大丈夫だったので、この短期間での開業が実現できたんだと思います。
融資を受けるとなると、審査とか細かい申請とかがあるので、このスピード感では動けないでしょうね。

 

商品開発ではどんなことを意識しましたか?

小さい頃から枚方に住んでいるので、この土地のことはよく知っているつもりです。
そんなにオシャレな店がいっぱいあるような土地ではないので、ちょっと高級なフランス菓子を出しても、きっとお客さんはつかないだろうな、と思いました。
なので、まずはオーソドックスな商品でうちの味や雰囲気を知ってもらって、「ルクール」というお店のファンになってもらいたいと考えたんです。
ショートケーキとかプリン、シュークリーム、ロールケーキとか、あとは季節のフルーツを使った商品、というかんじで、そんなに凝ったものは出していません。
いま一番売れているのはシフォンケーキですね。

大阪市内で店を開くのであればきっと全然違うラインナップになったと思うんですが、枚方だったらこの商品のほうが良いと考えています。
でもやっぱり他の店との差別化、うちにしかない魅力というのも打ち出していきたいので、今後は新商品も出しながら、春には本格的なパンを店に並べられるようにしたいですね。

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独立のために、意識して取り組んでいたことはありますか?

実は「自分の店をつくったらやりたいことノート」というのをつくっていまして(笑)
ケーキのデザインを描いたり、コンセプトをまとめたりして想像を膨らませていました。
店に勤めているときから、そのノートのネタを基に商品開発をしたりしていたので、こう言ってはなんですが、独立の予行演習をさせてもらっていたようなかんじかもしれません。

あと、「独立」というのは自分の中でずっと大きな目標だったので、独立に役立ちそうなことがあれば率先して取り組んでいました。
例えば、新店舗の立ち上げのヘルプがあれば、全然知らない人の店でも「人手いりませんか?」って、逆にお願いして手伝いに行かせてもらったり。
そんなかんじで経験を積んで準備もしているつもりだったので、自分が独立するときも大丈夫だろう、と思っていたんです。
でも、同じことを経験してきたはずなのに、いざオープン当日になると頭がまわらなくて自分でもびっくりしました。
ヘルプの人にすごく助けてもらいましたね。

オープン後に苦労したことはありますか?

大変だろう、っていうことはある程度予想していたので大丈夫だったんですが、痛感したのは、自分の体力にも限界はあるな、ということですかね。
オープン直後の1週間ぐらいはヘルプの人が来てくれていたのでなんとかお店も回っていたんですが、その後しばらく、本当に寝る間もないぐらい忙しくて。
深夜3時まで仕込みをやって、その数時間後にはまた出勤、みたいな生活が続いたんです。
お店がオープンできて嬉しくて楽しいという気持ちはあるんですが、さすがに体力の限界を感じました。
4か月経ってようやく少し余裕が出てきて、勤務時間も短縮できています。
ただ、これから繁忙期に入るので、この冬を落ち着いて乗り切れるように準備をしているかんじですね。

これからの展望を教えてください

5年後に、自分の理想のお店にできるようにしたいと思っています。
本当はもうちょっと高級なフランス菓子をやりたいという気持ちもあるんですが、この土地ではそう言った「ちょっと高級な」ケーキが受け入れられるまでに、最低でも3年はかかると思っています。
だから今から少しずつうちのお店を知ってもらって、フランス菓子というものが受け入れられた上で、そこに対していろいろなアプローチで商品やイベントを提案していきたいです。
もちろん、パンの品揃えもどんどん増やしていきますよ。

あと、今、毎日が楽しくて仕方ないんです。
ケーキをつくるのも、お客さんと話すのも、ものすごく楽しくて。
どこに立ってもお客さんが見えるような店のつくりにしたので、製造しながらでも、ケーキを受け取るときにぱっと笑顔になるお客さんの顔や、ありがとう、という声を聞くことができるというのは、パティシエをやっていてよかったと幸せを感じる瞬間です。
オーナーになった今は、スタッフにもこの「喜び」を知ってもらいたい、それを与えるのがオーナーの仕事だと思っています。

パティスリー ルクール

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枚方市の駅前に4月にオープンしたばかりの、地域のお客様に愛される店作りで着実のファンを増やしているパティスリー。
今後は本格的なパンの提供も予定するなど、オーナーのこだわりと地元愛が詰まった商品が魅力です。

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