パティシエの仕事は1年を通して「繁忙期」と「閑散期」の差が大きい仕事です。クリスマスをはじめイベントの多い秋~冬はケーキがよく売れるため忙しくなり、反対に夏の暑い時期には甘いケーキが売れにくくなるため比較的時間に余裕ができます。売上も、7、8月はピークの12月の1/3程度に落ち込むことも。
もちろん業態ごとに違いはありますが、今回はパティスリーの仕事内容を基に、1年間の流れをたどってみます。洋菓子業界で働きたいと考えている方、パティシエ1年目の方などは働き方をイメージする参考にしてみてください。
4月
4月は新入社員が入社する時期です。いつもと同じ菓子をショーケースに並べながら並行して新入社員の指導を行うため、職場はなんとなくバタバタ。作業のおぼつかない新人パティシエが思わぬミスをしてしまうこともあります。また入学の贈答用の焼き菓子やホールのケーキも多く売れる時期です。後半にはこどもの日用の生菓子、焼き菓子の準備も始めます。
5月
前半はゴールデンウィーク、こどもの日のホールケーキが売れます。チョコレート細工で兜のかたちをつくっているタイプなどもありますね。その後はほっとする間もなく母の日が。
いちごも美味しい季節なので、ホールケーキだけでなくいちごを使ったショートケーキなどもお客様のお目当てのようです。ホテルやブライダルのゲストハウスなどにケーキを納品しているパティスリーではウェディングケーキのデザインの打ち合わせがたくさん入ってきます。一生で一度の晴れ舞台のため、お客様からのご要望をお聞きして細かい所まで打ち合わせをします。
6月
ジューン・ブライドのシーズンです。ホテルや結婚式場にケーキを納品しているお店はウェディングケーキの制作に追われます。この時期はフルーツも美味しく、店舗に並べる生菓子もよく売れる傾向があります。
7月
お中元用のジュレ(ゼリー)が売れます。湿度が高いため、店出しのケーキの売上は落ち着きます。気温や湿度からケーキを食べたい、というお客様が減少気味なので、店頭の生菓子も爽やかに食べて頂けるジュレやムースを出すことが多くなります。

8月
連日の猛暑でケーキを食べたい気分にならず、ケーキを購入するお客様が少なくなります。かわりにゼリーやムース、お盆の手土産用の焼き菓子などを多めに作ったりします。比較的時間のできるこの時期に冬のクリスマスケーキのサンプルを作ったり、上に載せる細工菓子や箱等を業者さんから色々サンプルを見せてもらって決定し、発注するなど繁忙期に向けた準備がはじまります。
9月
再びウェディングのシーズン到来です。結婚式場へ納品するウェディングケーキが多く出ます。<また涼しくなることでチョコレートケーキやモンブランなど、こってりしたケーキも売れ始めますので店も少しずつ忙しくなってきます。
10月
暑い季節がひと段落し、店出しの生菓子が充実しはじめるシーズンです。ブライダル関係の仕事も前月に引き続き多い状態です。七五三のホールケーキの準備に入りながら店出しの生菓子、焼き菓子を販売します。このあたりから仕事に追われて帰宅時間が遅くなります。
11月
七五三のホールケーキが売れます。お子様のためのケーキなので、可愛らしいデザインの菓子を作る事が多いです。中旬頃からお歳暮用の焼き菓子を作り貯めします。早い方は11月の終わり頃からお歳暮用の菓子をお求めになるお客様もいらっしゃいます。
12月
お歳暮ラッシュが始まります。お1人で何箱も詰め合わせを買い求められる方も多いので、ストックはすぐになくなります。このあたりから焼き場がフル稼働し始めます。焼き菓子と別にクリスマス用のジェノワーズを焼き貯めして出来るだけ早くショッカーにかけて短時間冷凍して鮮度を保たせます。
そしてそのままクリスマス商戦に突入です。クリスマスはパティスリーが1年のうちでもっとも忙しい時期です。
1月
お正月のご挨拶用の菓子を求められるお客様も多いので、いつもよりお店を早く開けることも。生菓子、焼き菓子、ともによく出ます。中旬あたりからバレンタインの準備を開始します。
2月
バレンタイン商戦の始まりです。百貨店等で出来上がってすでに箱入れ包装されている商品と違ってワンホールのチョコレートケーキにメッセージを書いて欲しいという方も多いので、メッセージを確認して頂いてから包装してお渡しするなど、細かい気遣いが必要になることもあります。
3月
ひな祭りの3色生デコなどをつくりながら、ホワイトデー用の焼き菓子の準備を始めます。男性は菓子をパティスリーで買うことは少なく、百貨店などで買うことが比較的多いようなので、バレンタインほどは忙しくありません。
そして桜咲く4月でようやく丸一年、次のシーズンが始まります。パティシエは季節に合わせたケーキをつくり、その時々のイベントに華を添える役割を果たしています。その「洋菓子」にも毎年様々な流行があり、お客様により喜んでいただくためには勉強することもたくさん。毎日同じ業務をただこなすのではなく、新しい情報を常に取り入れるなどパティシエとして進化し続けなければいけません。
それでも日々刺激を受けながら仕事に取り組むうちに、1年後には去年より確実に成長している自分に会えるはずです。1年1年の積み重ねが、自分の将来に夢や目標につながっていくのです。