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インタビュー

「少数精鋭」のパティスリー。スタッフとどうやって良い関係を築きますか?


宝塚市、逆瀬川駅からゆっくりと歩いて約10分。2001年にオープンしてから17年もの時間を地元のお客様と過ごし、親しまれ続けている『お菓子のお店OKINA』というお店があります。

オーナーの国広正規(くにひろまさのり)さんは京都や池田市の個人店で修業を積んだのち、北摂エリアで5店舗を構える『ミルフィーユ』の創業メンバーとして入社。製造はもちろん店舗運営や企画・商品開発など、社長(野村信希氏)の右腕として厚い信頼を受けながら約14年勤務し、独立しました。

常時20種類近くの生ケーキが並ぶ3段ショーケース、焼き菓子棚、それからイートインスペースがあり、「3人以上いると狭いかな」と思えるくらいの慎ましいスペースの工房。オーナーの国広さんと2名のパティシエ、販売スタッフが、毎日毎日顔を合わせながらおいしいお菓子を届けます。

▲県道337号線沿いに佇み、ブルーカラーが目をひく外観。今夏、店舗と厨房のリニューアルを予定している。

決して広いとは言えないお店。しかし、こういった大きさの洋菓子店は珍しくないでしょう。

手を伸ばすとすぐに届く距離感はお互いの表情も行動もよく見えるし、考えていることも分かりやすい。 家族みたいなその近さは、時に煩わしく感じてしまうこともあると思います。

今回紹介するのは、オーナーの国広さんともう一人、新卒で入社して7年間『OKINA』に勤め続ける石川さん。

「パティシエとしてある前に人としてどうあるべきか」を常に考える国広さんと、右も左も分からない状態から7年間を過ごしてきた石川さんに、お話を聞きました。

「もっと真剣にやってみよう」熱意に火がついたきっかけとは?

――石川さんは『OKINA』が初めてのお店だそうですね。7年の間に色々変化があったと思いますが、国広さんから見て変わったと思うことはなんでしょうか?

国広さん
「彼、すごく良い子で。製菓学校も卒業しているし、お菓子に興味はあるんだろうけど……この世界でやっていくには意志の弱いところがありまして(笑)。特に言葉づかいや職場での振る舞いとか、そういった『人として』の部分を磨くように言ってきました。それが実を結んだのか、ここ1年くらいで考え方や捉え方に変化が見え、とても成長したと思います。仕事でも自分の意見を言うようになりました」

技術職であるパティシエは、同じ店にずっと居続けるのは稀なこと。技術の幅を広げたい、という人ほど色んなお店を転々とする傾向にあります。国広さんは「いつか他の店で働くことになっても、パティシエを辞めることになったとしても、自分の考えをもって動ける人になってほしい」と続けました。

――「ここ1年くらい」とのことですが、石川さん自身にはどのような心境の変化があったのでしょうか。

石川さん
「入って4年目くらいですかね、実は辞めようと思っていて。シェフにも伝えたんです」

▲現在26歳の石川さん。『OKINA』の2番手として焼き場を中心に商品考案などにも携わっている。

――「辞めます」と?

石川さん
「はい。もう別の仕事をしようと思って。シェフも了承してくれていたんですが、その前に別の人が辞めちゃったんですね。『ごめん、もう1年くらい延ばしてほしい』と言われて、もう1年働くことになりました。どうせ1年後に辞めるんだし、真剣にやってみたらどうなるんだろう?と思って、真剣にやってみたんです」

――辞めると決めてから火がついたんですね。珍しいパターンかと思います。

石川さん
「『焼き場をやってみたいです』とか『このケーキ作りたいです』とか…積極的にやってみたら、自分に返ってくるものが思ったよりも大きかった。いつも当たり前にある仕事なんですけど、真剣にやれば面白いんだなと実感できた感じです。それまでは全然やってなかったんだ!ということにも気づきました(笑)。真剣にやってみて、それでも嫌ならやっぱり辞めようと考えて。それからいつの間にか3年ですね」

――石川さんの意識が変わったのが3年前で、その変化を国広さんが感じ始めたのが1年前ということですね。

国広さん
「ようやくスタートラインに立った。この先どんな人生を進むにしても、店の外のことにも目を向けられればいいなと思います。今後は講習会に参加して横のつながりを持てたり、他の職種のことも知って世の中全体の仕組みを学んだり……彼の世界を広げられるようにしたいです」

言動、行動。みんながプラスになるように変えていく

――お店として、スタッフ全員で大事にしているものはありますか?

国広さん
「自分の周りにいる”人”ですね。家族、友人、一緒に働く人、業者さん、もちろんお客さんも。自分だけ、お店だけが得をするのではなくて、みんなにとってプラスになるにはどうすればいいかをいつも考えています。たとえば売上が厳しいから値段をあげたとしても、自分たちが得するだけでお客さんにとってはマイナス。営業時間を長くしたら、僕にとってはプラスかもしれないけどスタッフたちは疲弊します。いい思いやプラスになることは、みんなで分かち合えるような店でありたいんです。身近な人を大切に想う気持ちが根底にあって初めて、お菓子づくりができると思っています」

人を喜ばせてナンボのケーキ屋だから、と付け加えた国広さん。普段の立ち居振る舞い、人との接し方も含めて「言動や行動を変えていこう」をお店のテーマに掲げているそうです。

石川さん
「ケーキをつくるのに失敗してシェフに叱られた、みたいなことは少ないですね。それよりも誰かに対して『なぜこう言った』、自分が『なぜその行動をした』といった『なぜ』の部分は深くつっこまれることはあります。そこを解消するまでは、時間をかけてとことん話し合います。言われっぱなしじゃ解決しないから、『僕の意見も聞いてください』って、ぶつかりながら。でもちゃんと聞いてくれるから、僕も言えるんだと思います」

良い話、悪い話、大切な話、どうでもいい話もひっくるめて、ふたりの間には必ず”対話”があります。遠慮なく言い合える関係性は、お互いの気持ちを理解したいという姿勢と根気から生まれたものかもしれません。

――プラスにする、と言えば昨年から休日を増やしたんですよね。

国広さん
「月4回だった休日を4週6休にし、定休日は完全に休みにしました。閉店時間も、1時間早くして。小さな改革かもしれませんが、売上に関わることなので経営者としてはかなり覚悟が必要でした。ただ、昨今の働き方改革や休日数の増加といった社会の変化から考えると、うちもそうしないといけない。働く人も自分の時間は必要だと思います」

石川さん
「休日が増えたのは正直、めっちゃうれしいです。休みの日は昼まで寝て、午後は車でドライブを楽しんでいます。公園で本を読んだり、ゆったりしていますね。気持ちが全然違います」

国広さん
「まあ、とりあえずやってみよう!厳しくなってきたら営業日をまた調整すればいいかな、と(笑)。経営者は限られた時間の中で仕事がうまく回る仕組みをつくる責任があります。工夫できれば仕事の質も上がるはず。うまく回れば、ゆくゆくは週休2日にしたいです」

ほかにも、目標の生産量と実質の生産量を1時間単位ではかり、見込み残業時間と手当を個別に決めている『OKINA』。時間ではなく質の評価で、「仕事が早い人ほど損をしている」という不平等感をなくそうとしています。全員がプラスになるように。国広さんの試行錯誤は続きます。

国広さん
「うちは個人店で、大きいお店ではありません。3人でやっていたら責任が3分の1になるので背負うものも大きいと思います。ただ彼(石川さん)のように販売、焼き物、仕込み、生の仕上げ、全部やれるというのは良いところ。もちろん、それが良いか悪いかは本人の価値観次第です。『求めるものがOKINAにあって、プラスになる』と思ってもらえれば嬉しいですね」

お菓子のお店 OKINA

住所:兵庫県宝塚市小林3-6-23
電話番号:0797-78-1085
営業時間:9:30~19:00
定休日:毎週火曜日+不定休2日

→【お菓子のお店 OKINAの求人はこちら

取材後記

国広さんはスタッフに求めるだけではなく、ご自身もたくさん自問自答しながら、一歩ずつ改革を進めている。
石川さんはぶつかってもへこたれず、国広さんとも自分自身とも向き合い続けている。

「こんなものだし、仕方ない」の一言で片付けてしまいがちなことを「変えよう」とそれぞれがチャレンジしています。お店の経営はもちろん、人に対しても「少しずつでもいい。良くなるように努力をしていきます」と国広さん。時間をかけ、根気をもって進んでいる。そんなお店だと思いました。

この記事の筆者

あかざしょうこ

1984年生まれ。PATISSIENTの編集ライター。
「人生の教科書は人」をモットーに、聞いたり書いたりしています。
どのお店に行っても、シェフとスタッフさんの2ショットを撮ろうとすると変な空気(?)になります。お父さんと息子みたいで面白いです。

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