最近よく聞く「サスティナブル」「SDGs」って何?

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最近テレビやニュースでよく耳にする言葉に「サスティナブル」「SDGs」があります。似た言葉に「エコ」「ロハス」「エシカル」などがありますが、一時的なトレンドの一種というわけでなく、実はみなさんの生活や仕事に影響を与える大きな取り組みなんです。

今回はサスティナブルの説明と、パティシエのみなさんに関連しそうな洋菓子業界でのサスティナブルな取り組みについて紹介します。

「サスティナブル」「SDGs」とは

サスティナブルという言葉には「持続可能な」という意味があります。人間が生活を続けていくにあたって、地球の環境を壊さず、資源を使いすぎず、美しい地球を未来に残していくことを目的とする考え方です。

「SDGs」はsustainable development goalsの略語で、持続可能な開発に向けたゴールという意味です。どちらもほとんど同じ意味合いで使われますが、SDGsに向けた行動・考えを総合してサスティナブルを指すことが多いようです。

この考え方は1987年に国連から発表されたのですが、新聞やニュースで見かけるようになったのはここ数年のこと。色んな専門家が未来の地球気温や人口増加をシミュレーションした結果、これまでの消費型社会・経済では地球がもたなくなることが分かってきました。

そんな危機から、「サスティナブル(持続可能)な社会」を実現するために、世界が一丸となって環境・資源・エネルギー・貧困・教育・人権などの社会的な課題に取り組んでいこうとしています。

地球の課題に取り組む。と聞くと、スケールが大きくて自分にはピンときていない方もいらっしゃると思いますが、実はパティシエの仕事も「サスティナブルな社会」に関わることがあります。一体どのように関わっているのでしょうか?

洋菓子業界における取り組み事例

サスティナブルカカオ

サスティナブルカカオとは、「カカオ農家の生活向上」「地球環境に配慮」「カカオ豆の品質および生産性」の課題を解決し、持続可能な方法で栽培・収穫されたカカオ豆のことです。

バリーカレボー社、ヴァローナ社、ピュラトス社…などのプロ向けチョコレートブランドは一度は聞いたことがあると思いますが、そのブランドのほとんどと言ってもいいくらい「サスティナブルカカオ」への取り組みを行なっています(※1)。

みなさんの手元に届くクーベルチュールが100%サスティナブルカカオというわけではありませんが、各社が協力して「サスティナブルカカオを標準にする」という動きを進めています。現場で商品作りをしているみなさんも近いうちに、サスティナブルな社会作りに貢献していくことになるかもしれません。

株式会社ぶどうの木の端っこスイーツ

石川県金沢市の洋菓子工房「ぶどうの木」では、「食品ロス」への取り組みとして、農産物の端材を使用した『Hazico(ハジコ)シリーズ』を展開しています(※2)。

実は生乳1トンからバターになるのはわずか3%で、残りは用途が見つからず廃棄されているという問題があります。そこで、ぶどうの木では廃棄される原料を使ってチーズケーキを開発しました。また、そのチーズケーキには、果汁を絞ったあと捨てられる柚子の果皮を再利用し、コンポートとして混ぜ込まれています。

本来は捨ててしまうものを価値あるものに変える。もしくは価値あるものを最大限に、無駄なく使い切る。この行動・考えがすでに「サスティナブル」なのですが、食に関わるみなさんは、普段の仕事の中で常に意識していることだと思います。

いつも捨てている果物の皮などの端材まで、どうやって使い切るか?今、食材の再利用は社会的価値が高く、たくさんのお客さんから支持されるものなのです。

飴細工で作る新しいストローのあり方

みなさんの記憶にも新しい、レジ袋の有料化。海洋汚染や石油資源問題から脱プラスチックの流れが早まっていますよね。その脱プラスチックをいち早く取り入れたのが、大手カフェチェーンのスターバックス。プラスチックストローを廃止し、紙製のストローを採用しました。しかし紙ストローは耐久性に課題があり、消費者からは不評だったそうです。

そこで開発されたのが「ストローマエストロ」という肩書きを持つ野村優妃さんと国内コンクールでも受賞歴のあるパティシエ・林巨樹さんが共同開発した飴で作ったキャンディーストロー(※3)。ドリンクを飲んでいる間に少しずつ溶けて、無糖のコーヒーや紅茶にほんのり甘さがプラスされるだけでなく、体内の血糖値上昇を抑えるスローカロリーシュガーを使用することで健康にも良いとされています。

そして何より、これまでは捨てていたストローが嗜好品として消費されるので、健康にも地球にも優しいのです。優れた技術があれば、ストローも作れる。発想の転換次第で、製菓の技術は様々な場所で役立つ可能性があります。

まとめ

「サスティナブルな社会作り」は、今後も様々な形で目にすると思います。もちろん食品だけでなく、トレンドと消費のサイクルが早いアパレル業界や、エネルギー資源の節約を取り入れる建築業界、観光業界なども、それぞれの問題意識からできることに取り組んでいます。

パティシエのみなさんが関わるところで言えば「食品ロス」の問題です。パティシエの知識と経験と技術で、本当は捨てなくてもいい食材が救われたり、新しい価値を生み出せたりするかもしれません。

そして食材が救われるということは、生産者の方の生活が救われることに繋がります。生産者の方の生活が豊かになれば、品質の良い食材を育ててくれて、みなさんの手元に良い食材が届きます。規模の大小に関わらず、こういった好循環を生み出すことを「サスティナブル」と言うのです。

参照サイト:
(※1)
▼バリーカレボー社/カカオ生産者の支援
https://www.callebaut.com/ja-JP/sustainable
▼ヴァローナ社/CSR活動
https://www.valrhona.co.jp/about/commitment.php
▼ピュラトス社/持続的なカカオ生産に貢献
https://www.puratos.co.jp/ja/news/20201116

(※2)
▼株式会社ぶどうの木/ニュースリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000011956.html

(※3)
▼ストローの常識を壊す、次世代ストローブランド『DRINK STRAW』
https://camp-fire.jp/projects/view/328972

written by

あかざしょうこ

1984年生まれ。PATISSIENTの編集ライター。「人生の教科書は人」をモットーに、聞いたり書いたりしています。

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