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インタビュー

「日本の洋菓子は高く評価される」──日本とアジアを飛び回るアクティブパティシエ・西園誠一郎から見える洋菓子の可能性とは?


パティシエントマガジン編集部の赤座です。
今回は、大阪市西区の肥後橋にあるパティスリー「Seiichiro,NISHIZONO」のオーナーシェフにお話を聞いてきました。

私は洋菓子業界に関わって約3年になります。業界のことを勉強するうちに、気がつけば色々なところで「西園誠一郎」という名前を見かけるようになりました。自分のお店を持ちつつ、全国各地の展示会やイベントに登場し、テレビ番組にラジオ出演、最近はアジアや中国での仕事もこなす若きシェフ。「この人のスケジュールはどうなっていて、お店の仕事はいつしているのだろう」と気になっていました。

西園シェフのお店に伺い、現在の活動内容やアジアの洋菓子事情などをインタビューしました。

西園誠一郎(にしぞのせいいちろう)さん

株式会社SN代表取締役。
兵庫栄養調理製菓専門学校卒業後、ヒルトン大阪へ入社。その後、兵庫県にある『御影高杉』(2017年に閉店)に3年間従事。グルメデリバリーシステム株式会社(現:TERRY's WAY株式会社)で商品企画・開発として働いた後、心斎橋の洋菓子店『ロワン スタージュ』の立ち上げを行う。レコールバンタンの講師をしながら2014年に自身のブランド『Seiichiro,NISHIZONO』を開業。大手企業の商品企画・開発やプロデュース業も兼任し、各メディアで活躍中。

西園誠一郎流「仕事の掴み方」

──今日はお忙しいところ、ありがとうございます。西園さんは自分のお店を持ちつつ、スイーツプロデューサーとして色々な活動をされていますよね。どんな仕事をしているんですか?

大手企業さんの商品企画、商品開発のご依頼が多いですね。あとは、大阪・福岡の製菓専門学校の講師。国産オーブンメーカーのツジキカイさんの顧問や、
アンベールジャパンのアンバサダーとしても活動させていただいています。アンバサダーというのは、簡単に説明するとアンベールジャパンが取り扱っている商品をオフィシャルに広める人のこと。例えば、マロンペーストを使ったレシピの開発などをしています。または地方のパティスリーさんに行って活用方法をお伝えしたり、展示会のブースでデモンストレーションをしたりなど、アンバサダーの活動にも色々ありますね。

▲アンベールジャパン後援/タルトシェルを使ったデモンストレーションの様子。(画像提供:西園誠一郎)

──本当に色々ですね。気になったのですが、商品企画と開発は何が違うんですか?

僕の考えだと、商品開発は先方がある程度コンセプトやこんな素材を使って、テーマが固まっている状態でレシピを作ること。先方が思い描くイメージを形にする、オーダーに応えるのが商品開発です。商品企画はコンセプト、テーマ、使う素材も含めて一緒に考えていること。後者の方が当然、コストも時間もかかりますね。

──なるほど。国内だけでなく最近はアジアによく行かれていますが、海外ではどんな仕事をしているんでしょうか。

釜山や台湾の企業から商品開発をお願いされたり、上海の製菓学校から講師として呼んでいただけたり、最近は海外からのオファーも本当に増えてきました。バンコクには僕が商品をプロデュースさせていただいているお店があるので、ほぼ毎月現地へ行って、商品のクオリティチェックや新商品の考案、製造スタッフとコミュニケーションをとっています。僕自身の店もバンコクに出店予定なので、今はそれに向けて現地パートナーと一緒に調査や内覧を進めていますね。

▲バンコクでプロデュースしているお店のショウケース。瓶詰めのレアチーズケーキなどがメインでラインナップされている。(画像提供:西園誠一郎)

▲タイ航空のケータリングチームに向けた実技講習会の様子。(画像提供:西園誠一郎)

──国内外問わず、オファーはどういった経路で来るんでしょう。

Facebookやインスタグラムからご依頼をいただくことが多いですね。他には知り合いの業者さんや会社の社長さんからの紹介をいただくこともあります。企画・開発をしていると人脈が広がりやすいので、オファーを受けるたびに新しい人間関係ができるんです。真摯に取り組めば、仕事が仕事を連れてきてくれると言うようにも思います。

──世の中にはたくさんのパティシエがいますよね。西園さんにオファーが集まるには理由があると思いますか?

わかりません、なんでだろう(笑)?ただ、普段から自分が何をできるかはSNSで投稿していて。「今日はこんなお菓子を考えました」とか「講習会でこんなことをしました」とか。それを見て声をかけてくれるんだと思います。声をかけてもらったら、どうするかは考えずにとりあえず会ってみるんです。直接話してみて、気が合えば一緒にやる。金額とかできるできないとかは関係なく、自分が楽しめるかどうかで判断しています。でも、なんでも引き受けているかな。

西園誠一郎流「契約の仕方」

──西園さんは、儲かるか儲からないかは一旦置いておいて、一度会ってみるんですね。

そう。何があるか分からないので。バンコクでの仕事も、ある時「バンコクでカレーパン屋をするから、カレーパンを作りに行ってください」ってオファーをいただいたことからスタートしたんですよ。

──え、カレーパンですか?

僕にオファーするのは間違ってますよね(笑)。でもタイに行ってみたかったし、OKしました。行く前、仲の良いベーカリーシェフにカレーパンの作り方を教えてもらって。でも、残念ながら美味しく作れなかったんですよね。それで僕も先方も「美味しくないね」って話して、念のため考えていたお菓子を提案したら「お菓子の方が良いんじゃないか」って話が進みました。

──カレーパンは専門外だから、と断っていたらチャンスもなかったわけですもんね。それをきっかけに自分の得意分野で勝負を仕掛けみる、と。

さっきも言った通り、人脈ってすごく大事なんですよね。結果、仕事にならなくても知り合いが増えたり、自分のことを知ってもらえるきっかけにはなるので「とりあえず会う」という気持ちを大切にしています。

──聞いていると、オファーの内容ってかなりバラバラですよね。毎度、自分の仕事に金額をつけるのは難しいと思うのですが、何を基準に決めているんですか?

実は、特にないです。一通り話を聞いて、自分が欲しい金額をとりあえず提示してみます。そこから先はもちろん先方とすり合わせながら、お互いの納得いくところで「じゃあこれで決まり」と。でもレシピの開発だったら1品いくら、という最低の基準はあります。時期や期間にもよりますが、依頼は色々なので一概には言うのは難しいです。できるだけ自分の希望を伝えるようにしています。

──今までで金額的に一番大きかった仕事ってどんなものでしたか?

ある全国チェーンの飲食店でさせてもらったデザートでしょうか。完全成功報酬型の契約で、販売された個数に応じて報酬をいただくアーティストや作家さんの印税のような仕組みです。ただ、それはずっと続くわけではないのですが。

──パティシエも印税生活ができる可能性があるってことですね…!では、金額は関係なく面白かった仕事はありますか?

神戸コレクションっていうファッションショーで、モデルさんやアパレルさんとコラボしたスイーツを作ったんですが、他業界とのコラボは色々と発見があって本当に楽しいですね。イベント仕事は色んな人と関わっていくので、お金以上に得られるものが大きい。綺麗なモデルさんにも会えますしね(笑)、楽しくやれることを大事に考えています。

なぜ西園誠一郎は「プロデュース業」をするのか?

──西園さんのお店は「食べログ スイーツ百名店WEST2019」にも選ばれて、関西の中でも特に人気店ですよね。なぜ、あえてプロデューサー業も頑張るんでしょう。

僕は今後、ひとつお店を持っているだけではもう厳しいと考えています。最低限、家族やスタッフの生活を守れるか、さらには子供に十分な教育を受けさせてあげられるか、将来に向けて貯蓄できるかなど…お店とは別の収入源がないといけないと思うんです。それに僕は元々、ひとつのことだけをやり続けられる性分ではないので。パティシエになりたての3年間も、Wワークしていました。

──Wワーク?どんな仕事をしていたんですか?

音楽活動です。一時プロダクションに入って打ち込みっていう方法で作曲して、スタジオミュージシャンに演奏してもらい、僕は歌を担当したり。

──それは趣味とかではなく本気の音楽活動じゃないですか!修行時代のパティシエは働く時間も長いし、よくやっていましたね。

『御影高杉』も契約社員で働かせていただいていたので。3年間、どっちに進もうか考えていて。メインはパティシエやって、それ以外の時間は音楽のことを考えて睡眠は1〜2時間ということも多々ありました。結果、音楽で生活するのは厳しい判断して、お菓子の仕事に集中することにしいました。

──それで、じゃあお菓子1本でって決めてからはどうしたんでしょう。

最初の3年間を御影高杉で過ごして、その時に百貨店で販売する用の新商品を作っていたので商品開発の基礎は身についていたんだと思います。新しいものを考えるのは楽しかったですし、やりがいもありました。開発に似た仕事を探していて、当時流行っていたメロンパンの移動車販売の会社に入ったんです。

──ということは、メロンパンを作っていたんでしょうか。

いえ、メロンパンと一緒に冷凍ケーキを販売する企画があり、それで冷凍ケーキを考えていました。解凍しても味や食感に影響がないものを…と考えて、大量生産や工場の動き方も勉強になりましたね。その時は仕事時間のすべてを開発に費やせるので、自由な時間もけっこうありました。それで、空いている時間にコンテストに挑戦し始めて、勤めて3年目くらいでレーズンメーカーが主催するコンテストで賞をいただきました。カルフォルニアへの研修に行けることになり、ちょうど節目かなと思って退職しました。

──想像していたよりも気楽に生きている感じがして、イメージがかなり変わりました。すごくストイックな方だと思っていたので。

全然そんなことないです!楽しく生きることを第一に考えます。しんどいことは極力やりたくないです(笑)。だから、この仕事の仕方には賛否両論あるんじゃないかと思っています。でも、自分がこう進みたいというやり方で堂々と進めばそれでいいかなって。お店も、その後「そろそろ必要だな」と感じたので作りました。いつもその時、やりたいと思うことをやるだけです。

▲大阪市西区に構える「Seiichiro,NISHIZONO」前で。

西園誠一郎が伝えたい「これからの洋菓子の可能性」

──話は戻って、先ほどバンコクにもお店を出店する予定とのことでしたが、アジアに進出するメリットってどう感じていますか?

アジアは日本ほど市場が成熟していないんですよ。まだ複雑な構成のケーキは理解してもらいにくいけど、逆にシンプルにショートケーキやチーズケーキが人気です。ケーキ1カット1000円近くで販売していることもあり、それでも売れていたりします。それだけ、貪欲に美味しいものを求めている方達もいることに可能性を感じます。1000円でケーキを売っているお店って、日本でも本当に少ないですよね。日本のお菓子は高く評価されますし、日本の繊細な技術を持った僕らが作ることに付加価値を感じてもらえることが多々あります。言葉や文化の違いの問題があり、難しい事もたくさんありますが、それを一つずつ乗り越えていく楽しさも感じますし、何より街に勢いを感じます。それは何度もアジアに足を運んで、実感しています。これからはアジアに洋菓子の可能性があるって。

──なるほど。気になっていたんですが、1ヶ月の半分くらいはお店にいないんですよね。当然、お店の仕事はスタッフさんに任せているとは思います。任せられる体制にもっていく秘訣はありますか?

そうですね。自分が外で仕事をしている間は、どうしても妻とスタッフに店を預ける形になります。新しい商品は自分が仕込みますが、ある程度定番化した商品は、失敗を恐れず、まず任せてみるようにしています。そうでないと、いつまでも任せられるように成長しないと思うので。もし何かミスがあっても、それは任せた僕の責任だと考えるようにしています。バンコクの新店も製造は任せないと先へ進めないと思っています。

これからの時代、パティシエも製菓技術だけじゃなくてプロデュース力や企画力があるかないかで、できる仕事も変わってくると僕は思います。できる仕事が増えるってことは、単純に収入源も増えるということです。そういう未来も見越して、講習会のアシスタントやコンビニ向けスイーツの開発なども一部スタッフに振るようにしています。

▲写真奥にいるのが、タイのお店の責任者になる予定の北川さん。西園さんの活動を間近で見てきて「いつ寝てるんだろう」と気になっているそう。

──最後に、今後西園さんが目指していることを聞かせていただけますか。

タイの新店は来年4月にオープンしたいです。ブランディングして日本の洋菓子、しっかり現地で「Seiichiro,NISHIZONO」を知っていただきたいです。大阪の店は、今もトートバックやマグカップは販売しているのですが、香水や紅茶などメインコンセプトでもある「香り」を大切にしたものも展開していきたいと考えています。僕が考えるオリジナルのお菓子と世界観を知ってもらうための「ショールーム」みたいな位置付けとして。まぁ、うまくいかなければ切り替えて、別の方法を考えればいいんです。僕にとっては、店がすべてではないと考えているので。

店舗プロフィール

Seiichiro,NISHIZONO
住所:大阪府大阪市西区京町堀1-12-25
営業時間:11:00~20:00
定休日:火曜日、水曜日
公式HP:https://www.seiichiro-nishizono.com/

取材後記

Facebookで見かける西園誠一郎さんは、実際に会ってお話をしてみると、良い意味で気楽に働き、遊び、よく笑う方でした。24時間働く人…という表現は似合わず、24時間遊ぶようにお菓子を作り、いつもどんな時も楽しんでいる。洋菓子業界の未来を鋭く見据えつつ、今を大事に謳歌する生き方は、パティシエではない私にとっても大きな刺激になりました。

また西園さんのお話を通じて、日本人パティシエの活躍の場は業界の枠を越えて色々なジャンルで、そして海を越えて世界にどんどん広がっていることを知り、大きな可能性があると感じた取材になりました。

この記事の筆者

あかざしょうこ

1984年生まれ。PATISSIENTの編集ライター。「人生の教科書は人」をモットーに、聞いたり書いたりしています。
定休日にお邪魔したのでショーケースの写真は撮れませんでした。が、いつもオシャレなケーキが並んでいるのでぜひ行ってみてください!

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