パティシエになりたい人が大切したい「最初のお店選び」の3つのポイント

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製菓専門学校の多くは、1年制か2年制。入学してすぐに先生から”就活”の話をされたものの、「就活のことなんてまだ考えられない」「何から始めたらいいのかわからない」「希望のお店を決められない」という人も少なくないはず。

しかし、もしあなたが「まだ考えなくてもいいか」と思っているなら、それはとてももったいないことです!
なぜなら、学校を卒業して働く初めてのお店は、プロのパティシエとして新しい人生を踏み出す第一歩。一軒目のお店をどう選ぶかで、あなたのパティシエ人生は大きく左右されるともいえます。

今回は元パティシエの筆者が、洋菓子店や企業を希望している人に向けて「自分が働きたいお店探し」の3つのポイントをご紹介します。

1.自分がどんなお店で働きたいのかをもう一度イメージしてみる

この業界に入ることを選んだみなさんは、おそらく、学校に入学する前に、パティシエとして働いている自分を1度はイメージしたことがあるかと思います。そして専門学校に入ってから、「パティシエの仕事は趣味のお菓子作りとは違う」ということに気付き始めているのではないでしょうか。

業界に入りパティシエの卵として勉強をしている今、改めて自分がパティシエとして働く姿を想像してみてください。 どんなことをしていて、どんな人と、どんなお菓子を作っていますか?

これを想像したうえで就職活動に臨むと、いざ新米パティシエとして現場に飛び込んだときに、自分が思い浮かべていた理想と、現実のギャップに苦しむことは少なくなります。実際に、「思っていたのと違った」という理由で早々に辞めてしまう新米パティシエも少なくありません。

洋菓子店や企業でのパティシエの仕事内容

ひとりがお菓子作りに関われる範囲は、お店によってかなり違ってきます。
どんな人でも最初は販売からスタートするお店もあれば、最初から仕上げをするお店もあったり、少数精鋭のお店でも、1日のなかで焼菓子・生菓子の担当が入れ替わるお店もあれば、数年間一定のポジションで同じ仕事をやるというお店もあるのです。
また、規模の大きい会社になればなるほど、社員は製造ではなく製造数の管理やスタッフのシフト作成などの「管理業務」をまかされ、必然的にお菓子を触る時間が短くなる、というところもあります。

しかし、実際自分がそのお店で何ができるのかは、学校に届く求人票やお店の貼り紙には明記されていないことが大半です。 具体的な仕事内容に関しては、「就職課に相談する」「直接お店に問い合わせてみる」「会社訪問や面接で質問する」などして、自分で情報を得に行く必要があります。

もちろん、新人のうちはやりたいことをすべてやらせてもらえるとは限りません。 数年単位の長い目でみて、自分がやりたいことにより近づけるかどうか。そこを見出せるかどうかが、お店選びにおいてとても重要なポイントです。

関連記事→洋菓子店での1日の仕事例「新人パティシエの1日 密着24時!」

2.「全部良い条件」は非現実的。何を大事にしたいか考えよう

自分が働くイメージを浮かべたら、次はお店選びの判断材料でもある「勤務条件」に目を向けてみましょう。

洋菓子業界には、「給料が高くて、休みがたくさんあって、やりたいところがなんでもできるところ」は、残念ながらなかなか存在しません。

パティシエの仕事は技術職。美味しくて華やかなお菓子をお客さんに提供できている背景には、「長い勤務時間」「低い給与水準」があり、これらが原因で離職してしまう人も多いのです。

新人のうちは給料は少ないものと割り切ってしまう

洋菓子店や企業において、新米パティシエの初任給は、月給15~18万円程度、年収にして200万円~250万円程度が相場とされています。

洋菓子は、商品の値段に対する原価率は3割程度。たとえば、定価500円(利益350円程度)のケーキをロスを出さずに1ヶ月で515個売って、やっと新米パティシエの18万円の給料分利益を出すことができます。しかし、そこから光熱費や家賃などの固定費が引かれることを考えると、この計算では成り立ちません。

また、材料である乳製品や小麦の値段は年々上がっており、原価が低い商品を作って調整しても、なかなか利益が出ない状態。そのため、仕事を頑張ってなかなかお給料に還元されず、他業界に比べて労働時間が長い割に給与水準が低いのです。

少しずついろんな技術を身に付けられれば、そのお店の上のポジションを狙う・即戦力として雇ってもらえるお店へ転職する・独立するなどといったキャリアアップへの道が開けます。そうすれば、将来的に給料アップを目指すことは可能です。

新米のうちは多くのお金を稼ぐことは考えず、楽しく働けて、自分がやりたいことに近づけるかどうかを考えた方が良いでしょう。特に奨学金を抱えている人は、金銭面で悩むこともあるかと思います。 決してお金に余裕はないけれど、それでもこの仕事が好きで、続けていきたいと思えるお店を見つけることが大切です。

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勤務時間が長いのは「手作り」だから

次に考えたいのは、勤務時間についてです。パティシエの仕事といえば、朝早くて夜遅くまで働くお店が多く、1日12~16時間というところも少なくありません。なぜそんなに働く時間が長いのでしょうか?

それは、お菓子が手作りだからです。

どれだけお店が仕事の効率を良くしようと努めても、作業時間を短縮するのには限界があっります。 生地を仕込んで焼いて、ムースを仕込んで仕上げをして…手でやる作業が多く、お菓子へのこだわりが強いところほど、必然的に勤務時間は長くなります。 そして、お店で働く人数が少なければ少ないほど、ひとりあたりの仕事量が増え、休みも週に1回程度と、少なくなっていきます。 手作りで少数精鋭のお店は、その分いろんなお菓子に長い時間触れるので、パティシエとしてのスキルアップが早くできるといった面では、有利だともいえます。

逆に、月休みが8~10日程度と多いお店は、大人数で完全にポジション固定・分業制にしたり、機械や既製品を活用して効率アップを図っているところが多いといえるでしょう。 そういったお店は勤務時間も比較的短いですが、お菓子に関われる範囲が限られたり、手作りではない作業に携わる部分も出てきます。

勤務時間や休日数をお店選びの基準にする場合は、自分がどんな風にお菓子に関わりたいかをよりはっきり意識しておくと良いでしょう。

3.その店のケーキが「好き」だと思えるかどうか

さきほど述べた通り、他の業界と比べても決して労働環境が良いとはいえない洋菓子業界は「厳しい業界」に分類されることもあります。 厳しい環境の中、仕事をしている間につらい気持ちになることは、必ずあるといっても過言ではありません。

そんなとき、 「この店のお菓子を作れるようになりたいから、自分はがんばれるんだ」 と思うことができれば、困難を乗り越えていくこともできるでしょう。 この店のお菓子の味が好きだから。そして自分の作ったお菓子で、お客さんに喜んでほしいから。その想いは落ち込んだときだけに限らず、修行中の自分にとって大きな動力源となります。

気になるお店を見つけたら実際に足を運んで、ケーキや焼き菓子、接客や店内の雰囲気もチェックしておくと良いでしょう。応募して面接をすることになった際にも、「ファン」であることは大きなプラスのポイントになりますよ。

また、選択肢を広げるために、いろんなお店へ食べ歩きに行くのもオススメですよ。 あなたが「素敵だな、ここで働きたいな」と思えるお店を、どんどん見つけていきましょう!

関連記事→パティシエが押さえておくべき、“履歴書の志望動機”のポイント

まとめ

初めての就職先を探すときに考えたいのは、

1.自分がどんなお店でどんな風に働きたいのか
2.自分が働く上で何を一番大切にしたいか考えて勤務条件を見る
3.自分が好きと思えるケーキに出会う

の3つ!

筆者は、最初に勤めたお店のお菓子は、実はそんなに好きではありませんでした。 そのお店は3ヶ月弱で辞めてしまい、学校に転職先を相談しにいったとき、学生時の副担任の先生が言っていた「修行時代は辛いこともあったけど、その店のお菓子が好きだから頑張れたんだよね」という言葉にドキッとした覚えがあります。
同時に、「あの店のお菓子が好きだったらまだまだ頑張れたのかな」という考えも浮かびました。 もちろんそれがすべてではありませんが、そのあと働いたお店のことを考えると、大事なことだったのだと思います。

初めて働くお店だからこそ、最初が肝心。お菓子作りへの想いが強いスタート地点だからこそ、慎重に。洋菓子業界の実情に触れ、いろんな角度から考えることが、みなさんの就職活動のヒントになると嬉しいです。

今回紹介したポイント以外にも、「下宿やひとり暮らし」「就活中の悩み」などについて、今後取り上げていきます。次回以降の更新をお待ちください。

written by

森野みどり

PATISSIENTのライター。パティシエ経験者。(Twitter:@negitama000)水族館にクラゲの展示が増え始める季節です!

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