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インタビュー

「ケーキ」と「氷菓」の両軸で安定を実現。季節にとらわれない経営を目指す、人気パティスリーの取り組み


多くのパティスリーにとって、夏は売上が低迷する厳しい時期。閑散期を回避するため、さまざまな対策を取っているお店も多いのではないでしょうか。

そんななか、夏の暑さを味方に付けて年間を通して安定的な経営を実現しているのが、神奈川県郊外にある人気パティスリー『パティスリー メゾン ジブレー(MAISON GIVRÉE)』。

売上の軸となるのは「生菓子」「焼菓子」そして「氷菓」。日本全国から取り寄せる新鮮な野菜や果物を多彩に使い、生菓子だけでなくアントルメグラッセやジェラートなどを作っています。

冬に売上の大半を稼ぐパティスリーが多い現状で、『メゾン ジブレー』は夏が冬を上回ることもあるそう。いったいどのようにして、夏の安定経営を実現しているのでしょうか?そして氷菓をうまく取り入れる方法とはー…。 「夏は” 耐える”というパティスリーの経営スタイルを変えたかった」という江森シェフに、お話を伺いました。

江森宏之(えもりひろゆき)さん

栃木県出身。4年制大学を卒業したのち製菓専門学校へ。「ベルグの4月」で8年勤務後に渡仏、国家最高職人の称号M.O.F.を持つフランク・フレッソン氏に師事。「パティスリー フレッソン」で2年腕を磨く。帰国後はシェフとして「ベルグの4月」で5年勤務。2013年からはアントルメグラッセ専門店の「グラッシェル」でシェフグラシエ・シェフパティシエとして活躍する。
受賞歴も多く、2015年はイタリアのミラノ万博内で開催された菓子コンクールの世界大会にチームキャプテンとして参加し優勝を果たす。2017年に自身の店「パティスリー メゾン ジブレー」をオープン。イタリア・カルピジャーニ社のデモンストレーターや、宮崎県宮崎市のプロモーション大使などにも就任し、各方面で活躍中。

農家から届いたフルーツ・野菜はスタッフ総出で加工。季節ごとの美味しさをお客さまに楽しんでもらいたい

▲生菓子は10時オープンにあわせて揃うように。旬のフルーツの入荷のタイミングで1週間ほど「桃フェア」「メロンまつり」などを開催。

───「メゾン ジブレー」さんは氷菓も有名ですが、生菓子もたくさん種類がありますね。生菓子・焼菓子・氷菓、それぞれどのくらいの種類を作っているのでしょうか。

うちの店では季節を感じられるフルーツや野菜を使ったケーキをたっぷり楽しんでもらえるようにしています。旬の時期によりラインナップは変わりますが、生菓子は30種を超えます。10尺の大型ショーケースにずらりと並ぶと、我ながら圧巻に思いますね。

焼菓子は通年から季節ものまで数十種類ありますが、核となるのは「レモンケーキ」とフィナンシェの「ティグレ」。どちらも月1000個は製造する看板商品で、その他は、コンフィチュールも人気ですね。

アントルメグラッセはおよそ10種類。ジェラートも常時10~12種類を揃えています。これらは店売りのほか、オンラインショップでも取り扱っています。最近ではフルーツだけでなく、トマトやアスパラ、なすなどを使った野菜ジェラートも増えてきました。

──野菜のジェラートとは斬新ですね! フルーツや野菜は市場を通さず、農家さんから直接届けてもらっているとお聞きしました。

はい。全国各地の生産者の方から、収穫直後のフルーツや野菜を送ってもらえるようにお願いしています。早いものだと、朝もいでその日の夕方に届きます。フレッシュさが全然違いますね。

取り寄せる時は送料がかかるので、まとめてたくさん注文します。例えば近々届く予定のマンゴーなら100キロ分。届いたら、まずはスタッフ総出で加工に取り掛かります。洗う人、切る人、調理する人など分業で対応して、フレッシュなうちにさまざまな用途に使い分けられるようにしていくんです。

まずはタルトなどの生菓子に使用し、その後ジェラート→コンフィチュール→シロップなどにして、余すことなく使い切ります。

──100キロ!ものすごい量ですね。

僕はこの店の経営のほかに、各自治体とも仕事をしていて、宮崎県ではアンテナショップで販売するジェラートや、百貨店の催事やイベント用のジェラートなども手掛けています。だから一度に取り寄せる量がものすごく多いんです。多い時は1トンくらい取り寄せることもありますよ。

▲田園都市線、中央林間駅から徒歩5分ほどの場所にある一軒家パティスリー。2019年11月には同じ路線の南町田駅に2軒目もオープンする

──それだけの量を扱うには、保管場所も必要ですよね。

そうなんです。うちの店、実は敷地200坪あるんですよ。そこに納品場所や、加工した素材、作っておいたアントルメグラッセなどを保管する倉庫を設けています。最初は世田谷や渋谷あたりで物件探しをしていましたが、これだけの規模となるとなかなか見つからなくて。今の店の場所はまったく考えていませんでしたが、調べてみると子どもが多く、競合する菓子店も少ない。すごく良い場所が見つかったなと思っています。

氷菓との出会いはフランスでの修行時代。新鮮なフルーツを使い分ける手法を学ぶ

──江森シェフ自身が氷菓に興味をもったきっかけはどんなことでしたか?

きっかけはフランスでの修行中でしたね。卒業後「ベルグの4月」で8年働いて、それから渡仏し「パティスリーフレッソン」で2年働いていたんですが、ここではアントルメのほか、チョコレート、パンやキッシュなどのお惣菜・トレトゥールも扱っていたんです。色々任せてもらえたので、自分の中の引き出しがすごく増えたと思っています。

なかでも印象的だったのは、店で扱う新鮮なフルーツ。朝の出勤時、シェフが山のようにフルーツを積んでくるんです。それでスタッフみんなに「これでケーキを作れ」って。お菓子に使うだけでなく、お店でピューレにして、そこからジェラートも作って。常にフルーツとともに仕事をしていた感じですね。

帰国してまた「ベルグの4月」にお世話になると決めた時、ちょうどベルグでもジェラートをやり始めたタイミングだったんです。当時パティスリーでジェラートを出すお店は全然なかったので「先駆け」的な存在ですよね。

シェフパティシエとして働きながらジェラートを勉強して、コンクールにも挑戦し始めました。氷菓を使ったアシェット・デセールを競う大会に3度参加して、最初は準優勝、2度目は優勝。そのあたりから「アイスって面白いな、奥が深いな」と思い始めて、アントルメグラッセや、野菜を使ったジェラートを作るようになりました。

──「ベルグの4月」を辞めた後は、アントルメグラッセ専門店の「グラッシェル」を立ち上げるんですよね。

そうです。独立を考えていた時に、『ルタオ』の企業の方から「開発をやらないか」と声をかけていただいて。社長から「せっかくやるならまったく新しいものを作ろう。君は何ができるの?」と聞かれたんです。「他の人と違うこと、自分が誇れるものは何か」と改めて考えた時、僕にはこれまで追求してきたジェラートがある、と自信を持って言えました。それが「グラッシェル」オープンにつながったんです。

お店のコンセプトから物件探し、商品開発に利益率の計算、すべてにかかわることができました。お客さまやメディアの反響も大きく、クリスマスの3日間で1万台売り上げたくらい。「ベルグの4月」の山本次夫シェフが製菓業界にアントルメグラッセを広めた立役者だとするなら、「グラッシェル」は一般のお客さまにサーティーワン以外のアイスケーキを広める役割は果たせたんじゃないかなと思っています。ここでの経験は、のちの自分の店づくりにも役立ちました。

──江森シェフが考える「氷菓」の強みってどんなことでしょうか。

美味しさを保ちながら計画生産ができることではないでしょうか。例えばクリスマスの繁忙期、徹夜して作る店が多いですよね。アントルメグラッセは日持ちするので、保管場所さえあれば11月くらいから余裕をもって作り始めることができます。

フルーツや野菜は旬の時期が短いけれど、その時期に一時加工をしておけばジェラートやアイスケーキとしていつでも販売することができます。昨年秋に採れたぶどうを今年出すなど、時期をずらして出せるのが氷菓の魅力だと思っています。

「冬稼ぎ、夏耐える」パティスリーの経営スタイルを変えたい。氷菓で年間を通した安定経営を目指す

──氷菓が占める売上の割合はいかがですか?

季節によって変わりますが、うちの場合、年間で一番売り上げが良いのは冬よりも夏。とくに7月~8月あたりがピークなんです。 夏は店売りの1/3がジェラートの売上ですね。さらにお中元需要として通販のアントルメグラッセも入ります。今年はお中元だけで500台。1台5000円なので250万円、なかなか良い数字じゃないですかね。

冬やはり生菓子がグッと伸びてきます。昨年はクリスマス期間で生のホールケーキを約2500台、その他にいくつかの百貨店で販売するクリスマス用ケーキも合計500台くらい作っています。冬でもアントルメグラッセは人気で、お歳暮用とクリスマス用を合わせて2000台ほど。ジェラートも夏ほどではないですが安定しています。

▲厨房は奥に広い。ポジションは生菓子・焼菓子・パイルーム・アイス製造の4つに分かれている

──ものすごい数字ですね…!繁忙期をどう乗り切っているのか気になります。スタッフさんは何人ほどいるのですか?

製造14人、販売4人前後、すべて正社員待遇です。プラス、忙しい時にお手伝いをお願いするアルバイトさんが数人います。 すべて正社員で雇えているのは、年間を通して売上が安定しているから。閑散期の夏に人員の数を合わせなくて良いのでこれだけの数が対応できます。

どんなに有名なお店でも夏は売上が下がるもの。売上に波があると、まず人材が抱えられなくなります。経営面から見たらなるべく余剰人数をもちたくないのは当然ですよね。 忙しい冬も夏と同じ人数で取り組まなければならないとなると、色々なところに無理が出てきます。残業も発生するし、徹夜仕事にもなってしまう。

だから僕は考え方を変えて、夏も売り上げを取っていく経営スタイルにしました。季節を問わず忙しいけれど、人材が足りているから冬も無理なく対応できる。普通のお店よりも1.5~2倍多い人数でクリスマスを乗り切れるから、たくさん注文が入っても大変さはそれほど感じないんですね。

──なるほど。安定的な人件費率にも氷菓が一役買っているんですね。
ただ、氷菓は初期投資がかなりかかると聞きます。これから挑戦しようと思っているパティスリーは、何から始めるべきだと思いますか?

そうですね。僕はイタリアの菓子機械メーカー「カルピジャーニ」社のデモンストレーターになっているので、店のマシンはすべてカルピジャーニです。フリーザーなどアイスマシーンは高いので、揃えようとなると2000万くらいの初期投資はかかると思います。
カップアイスの場合、1杯500円が相場。単価が高くないので回収するまでが苦しくて大変です。だから都内のジェラート屋さんで成功しているところって数えるほどしかないんですよね。新店がオープンしても、苦戦して長く続かないところが多いようです。

もしパティスリーが氷菓を始めるなら、「ウリのケーキがある」など、生菓子がある程度売れている状態から始めた方がいいですね。「生菓子が売れないから」と氷菓に手を出すのは危険です。

というのも、ケーキではなく氷菓の方が人気になってしまうと、パティスリーではなく「アイスクリーム屋」のイメージがついてしまうんです。するとお客さまがケーキを買いに来なくなってしまう。氷菓だけだと夏は良くても冬が閑散期になりますから本末転倒ですよね。ジェラートの本場・イタリアでも、地方の店は1~2月は休んで別の仕事をしているパターンも多いんです。

氷菓と言ってもアイスクリームだけじゃありません。最初は設備投資を抑えて徐々に広げるのが良いのではないでしょうか。例えばかき氷、グラニータのようなフローズンドリンクからスタートして、お客さまの反応を見ながら少しずつ広げていく方が堅実なのではと思います。

有名店と肩を並べるにはどうしたら良いか。「氷菓」と「チーム力」を武器に

──最後に、江森シェフが目指すお店作りを聞かせていただけますか。

そうですね。都内には多くの人気を集める有名シェフが作ったお店がたくさんあります。僕たちは、そんな有名店と肩を並べるべく、有名シェフたちがもっていないような「氷菓」という武器を、スタッフみんなで磨いてきました。

サッカーに例えると、「有力なスター選手がひとりいるチーム」と、「突出した実力があるわけではないけれど、みんなで助け合えば強くなるチーム」。僕が職人として、お店として目指しているのは後者の方です。これからもチームであるスタッフと一緒に、"強い"お店作りをしていきたいですね。

店舗プロフィール

パティスリー メゾン ジブレー(MAISON GIVRÉE)
住所:神奈川県大和市中央林間4-27-18
営業時間:10:00〜19:00
定休日:月曜、(火曜不定休)
公式HP:https://givree.tokyo/

この記事の筆者

田窪 綾

調理師免許持ち、レストラン勤務経験ありのライターです。東京都内近郊を中心に、食と食に関わる方の取材執筆をしています。(Twitter:aso0035)

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