大阪の製菓学校を卒業後広島で13年スーシェフとして活躍し独立。
現在大阪箕面でパティスリーワイスタイルを経営しつつ、異業種のとの交流も積極的に行う横山さんが実践するお店作りや人材育成における考え方は、いつものインタビューとは一味も二味も異なるものでした。
パティシエとして、そして1人の経営者として若手パティシエに伝えたいことや、今後取り組んでいきたいことを聞かせて頂きました。
人に幸せを与えたい。目指すものがはっきりし、選んだ独立という選択。
記者:『パティシエを目指したきっかけを教えてください』

横山オーナーシェフ(以下敬称略):『小学校3年生の春休みのことです。自分のお誕生日会をすることになり友達6人が僕のお家に来てくれると言ってくれました。
楽しみに待っていたのですが、当日の約束の時間を過ぎても友達が1人も来てくれませんでした。みんな春休みということもあってその約束を忘れてしまっていたんです。
とても悲しくなったのですが、その時にお母さんがお誕生日会のために作ってくれていたケーキを持ってきてくれてそれを1人で食べたんです。
その時食べたケーキがすごく美味しくて。僕もこんな風に人を元気にすることができて幸せを与える人になりたいと思いました。
おいしいケーキを作ることで、昔の僕のように寂しい気持ちの人を嬉しい気持ちにさせてあげたい。悲しい1日を幸せな1日に変えてあげたい。
それが出来るお仕事がしたいと思い、それからパティシエを目指しはじめました。』
記者:『横山さんはどのようなお店を目指して独立されたのですか?』

横山:『普通の人は独立するときに初めてどういうお店にするかを細かく考え始めると思うのですが、僕はスーシェフとして働いていた時からずっと、自分が作りたいお店像を詳細に描き続けてきました。
たとえばお店の立地や、坪数、客単価、お店のコンセプト、従業員の数は5人ということも決めていました。
これは修行中に従業員の育成を任せられている時に、コミュニケーションが円滑に取れてチームとして良い人数が、4人でも10人でもなく5人だということが分かったからです。そしてその5人をしっかり育てていきたいと思っていました。
また事業の計画も細かく決めていました。売上の幅が大きそうな時期や天気がどう転ぶかまで考慮して上手くいった時、いかなかった時の2つの計画を考えました。今では自分が理想として掲げた計画でお店を回すことができています。「どういうお店を目指すか」を細かいところまで明確にしたからこそ、今自分の描いたようなお店作りができているのだと思います。
僕がなぜここまで考えられたかというと、修行している時にお世話になっていた師匠の花口さんが、僕にお店の管理や人材育成などを任せてくれていたからです。ここは自分のお店だという意識で一生懸命人を育てていました。今思うと任せてもらうって凄いことだなと思います。次第に自分でやってみたいことが膨らんできて、独立するなら今だなと思って独立しました。
人に幸せを与える、元気を与える仕事をする。これが僕のやりたいことでした。
このお店の名前「ワイ スタイル」も、嬉しい時や幸せな時に「ワイスタイルのケーキを食べてもらって、もっとみんなに喜んでもらいたい」という意味を込めて名づけました。
Yが「喜び」、Styleが「シーン」という意味です。今では自分が描いてきたお店を作る楽しさを感じながらも、もっと良いお店作りができないか日々考えているところです。』
火をおこす人!?~横山オーナーシェフが考えるスタッフの育成とは~
記者:『人を育てたかったということですが、横山さんがスタッフの育成で意識していることはなんですか?』

横山:『パティシエのプロを育てようという意識はあまりなくて、どの業界で働いても通じるような人を育てています。未経験の子や1年目の子に関しては基本的なケーキ作りを教えたうえで、コミュニケーションの仕方をしっかりと教えています。
ある程度経験のある子に対しては、それに加えて人の育て方や指導の仕方、店内の作り方、イベントやお店での集客の仕方、マーケティングの勉強などをさせています。
なぜコミュニケーションや人の育て方を丁寧に教えるかというと、スタッフに自分の想いや考えを積極的に発信し、周りを巻き込み、人を育てることが出来る人間になってほしいからです。僕はこういう人のことを「火をおこす人」と呼んでいます。
世の中には「火をおこす人についていく人」や「火をおこせない人」もいますが、僕は「自分から火をおこして周りも燃えさせる人」を育てていきたいと思っています。
自分から火をおこせる人は、たとえ違う職種、違う業界にいったとしても通用しますし、社会から必要とされる存在になるからです。』
記者:『たくさんの人を育ててきた中で、若い人にはどのような努力をして欲しいとお考えですか?』

横山:『若い人の中には自分の夢を明確に持っている人が少ないと感じています。それはほとんどの人が「自分がどういう人間か」ということを分かっておらず、また分かる努力をしていないからです。自分を知るためには継続して仕事をしていくことが大切です。
人間、仕事を通じて学ぶことが圧倒的に多いと思います。
仕事に没頭することで自分がどういう人間なのか、どんなことがやりたいか、何を目指していきたいかが見えてきます。誰かが教えてくれるものではありません。だから最初の3年はどんな仕事でも一生懸命やることが大切です。
たとえ、そこでやりたい仕事ができなくても、お給料が少ないとしても、誰かに必要とされるように努力をしていくべきです。そうすると自然にお給料も上がってきます。ぜひ、そこまで自分を高めていってほしいと思います。
夢って結局何でもよくて、「どうなりたいか」「何を与えていける人になるか」ということが大事だと思います。
僕はたまたまケーキ屋さん。
人を笑わせ、幸せを与えられる人になること。そこがぶれなければ目の前の大変なことも乗り越えられます。
是非今の仕事を頑張り、自分を知っていく中で、自分が本当に目指していきたいものに気が付いて欲しいと思います。』
視野の広い経営者でありたい。
記者:『経営者として意識していることはありますか?』

横山:『自分が属している業界以外のこともオーナーは知っておくべきだと思っています。
僕は経営者の集まりも積極的に参加して、車屋さん、お花屋さん、税理士さんやコンサルタント、色々な職業の人達からその業界ならではの考えを学んでいます。起業する際に必要なスキルやその業界に向いている人の特徴など、外部の方から吸収できることはたくさんあります。
そこで得た知識は色んなところで役に立っています。
例えば、うちで数年修行をして独立する女の子に対して「ケーキ屋としてお店をする以外にも、お菓子教室の講師やテーブルコーディネーターという道もあるよ。」と選択肢を広げてあげるアドバイスをしています。
またその子の強みや将来を考えた上で全く違う職種、例えばカラーコーディネーターとか、そんなお仕事もあるよと伝えることもあります。
そういうことをオーナーが知っているのと知っていないのでは全く違います。その子の可能性を広げるためにも積極的に経営者の話を聞いています。
また経営者同士の繋がりから、現在月に2回ほど介護施設でお菓子教室を開いています。そうして入居者さんに喜んでもらえるとそのご家族でお店に来てくれます。スタッフもケーキ屋さんのスタッフがこんなことまでできるとは思わなかったと喜んでいます。
外部の世界に出ていくことで、スタッフにもお客さんにも与えられることが増えていきます。だからこそこれからも視野の広い経営者でありたいと思っています。』
発信が全て!こだわってきたコミュニケーション。
記者:『毎日の営業でどのようにお客さんとコミュニケーションを取っていますか?』

横山:『ただケーキを作るだけの人間ではなく「人が会いに来る人間になる」ということが僕の目指すパティシエの姿です。だからケーキを買わなくても、ただお店に「しゃべりに来たよ」というお客さんもとても大事にしています。
コミュニケーションは自分が発信するところから始まります。例えば僕のお店では店内に自分の好きなものを置いたり、スタッフに自分の趣味や想いを名刺に書かせていたりしています。
そうするとお客さんの方から共通点や気になったことに関して声をかけてくれるようになり、「あの人のコンサートに行くんですか?」とそこから会話が生まれていきます。
スタッフに関してもそうで、「こういう想いで仕事に携わっています」って自分の名刺を渡したらお客さんが「ファン」になってくれるんです。
販売に出たら「ファンを増やすチャンス!」と考えられるくらいでいてほしいと思っています。
ワイスタイルが多くの人に愛されているのは、僕達とお客さんとの間にコミュニケーションがあるからです。積極的にイベントを開催してお客さんと触れ合う機会を作っています。
子供たちの描く「夢」をケーキでカタチにするプロジェクト「夢ケーキ」や縁日への出店もたくさんの人が喜んでくれました。
今後も地域の方々と関わりを持ちコミュニケーションを取れる機会を大切にしていきたいと思っています。』
記者:『スタッフとのコミュニケーションはどのようにされていますか?』

横山:『私はスタッフともたくさんコミュニケーションをとり、その子についてよく知っていきます。
具体的に言うと、褒め、認めて、たくさん話す。このスタイルは開店当初から変わっていません。勉強会に一緒に行ったり、催事などのイベントが終わったら打ち上げをしたりとか。
最近は仕事も忙しいのですが、色々と工夫しながら一緒に過ごす時間を意識的に作っています。例えばちょっと前に私の実家の近くにあるぶどう園にスタッフと一緒にぶどう狩りに行ってきました。
それだけでも行くまでの計画や道中で色々な話ができましたが、その日一緒に行ったスタッフが「今日採ったぶどうが次の日タルトになりますよ」とFacebookで発信してくれました。するとその投稿を見たお客さんが次の日たくさんお店に来てくれて。
スタッフもみんな喜んでいましたね。
このようにコミュニケーションの取り方はどんどんバージョンアップしています(笑)』
記者:『若手のパティシエ、パティシエを目指す若い人に対して発信したいことはありますか?』

横山:『実は僕、この仕事の良さを伝えていきたいという想いからラジオ番組を持たせていただいています。
この業界のオーナーでこの仕事の良い部分を発信するオーナーは少ないので、僕がやらなきゃという想いで若手のパティシエに対して、また同じオーナーの方々に対して、この業界の良さや自分のお店での取り組みを発信しています。
以前その番組の中で未来のパティシエに向けて8分間フリートークをしました。
僕はここのパティシエをやっていて、「昔こういう失敗もあったんだよ」とか、「最初は怒られたんです」とか色々なことを話しました。
その中で一番若い人に伝えたかったことがあります。それは仕事を通じて自分が目指しているものを明確にしてくださいということです。
自分がどんな人間になりたいか。なぜ私はケーキを作るのか。どのように人々に喜んでもらいたいか。そこを意識して仕事をすると毎日の仕事が全て自分の成長につながっていることに気が付きます。
ただケーキを作るのではなく、ケーキ作りを通して人々に何をあたえることができるのかを考えることができるパティシエになってほしいと思います。
パティシエのお仕事は決して簡単ではありませんが、ケーキを食べてくれた人が喜んでくれて、「ありがとう」と言ってもらえる。時には感動して泣いてもらえる。そんな嬉しい出来事はたくさんあります。ぜひみなさん、これから頑張ってください。』
インタビューを終えて。

製菓業界だけに留まらない、仕事をしていく上で本当に大切なことを伝えてくれた横山さん。
「お客さんに幸せを与えたい!」という横山さんの姿勢が、地域に愛されるお店づくりに繋がっているのだと強く感じました。
取材後も店内をお伺いすると、次々にお客さんがやってきてはスタッフさんと楽しそうに話していました。
スタッフとのコミュニケーションはもちろん、地域との交流、オーナー同士の交流、業界内外へのメッセージの発信などなど…
「取り組んでいることは全てカタチを変えながら、バージョンアップしていきます!」
と熱く語っていただいた横山さんの今後のご活躍から、ますます目が離せません!
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