「パンがなければケーキを…」の真相!マリーアントワネットが愛したスイーツたち

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出典:eiga.com 映画「マリー・アントワネット」(C)2005 I Want Candy LLC. スイーツ好きで知られるフランス王妃マリーアントワネット。「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」このセリフはあまりにも有名ですね。今回は彼女が生涯で愛したパン、スイーツのルーツや彼女が広めたとされる食後の習慣についてお届けします。

歴史に残る名台詞、あのお菓子の正体とは!?

冒頭でも紹介した、かの有名な台詞ですが、この台詞のなかに出てくるお菓子はブリオッシュのことを指していると言われています。ブリオッシュとはフランス語で「頭」という意味で、頭をポコッと出しているのが特徴的なパンです。一般的なフランスパンは小麦粉、イースト、塩、水の4種類で作られ油脂を使いません。これらは脂肪の無い・簡素なという意味でリーン系パンと呼ばれます。それに対してブリオッシュは卵やバターなど油脂を贅沢に使って作られるためリッチなパンと呼ばれます。
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いずれも、出典:www.flickr.com 実はこの台詞、多くの人々が捉えている意味とは少しニュアンスが違うようです。 当時小麦粉の価格がかなり高騰していて、国民はパンを食べることができませんでした。その状況を知ったマリーアントワネットは、高騰している小麦粉よりも卵とバター(当時高騰している小麦粉の価格よりは安かった)を使ったブリオッシュを食べればいいじゃない!と発言しました。つまりは同じパンでも原材料の安いパンを食べたらいいじゃないということです。 普通のパンが買えないほど小麦粉が高騰していたなんて、現代の私たちには想像しにくいですが、そう考えると「ブリオッシュを食べればいいじゃない」という台詞はあながち間違いでもないような気がしますね。

王冠のように美しいお菓子。マリーアントワネットが愛したクグロフとは?

お菓子好きで知られるマリーアントワネット。クグロフは彼女が愛したスイーツの一つです。王冠型の洗練されたその形から、お菓子の中でも最も美しいお菓子と評されているクグロフ。もともとはフランスの東北部、ドイツとの国境に位置するアルザス地方に伝わる伝統菓子です。 クグロフは、クグロフ型(斜めにうねりのある蛇の目型)にアーモンドや乾し葡萄を入れ、ブリオッシュ風の生地を入れて焼き上げて作ります。
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いずれも、出典:www.instagram.com ドイツ語では別名クーゲル・ホフ(Kugelhopf)とも呼ばれ、クーゲルは「丸い、玉」を、ホフはビール酵母を意味します。かつてはその名の通りビール酵母を発酵させて焼きあげていました。 ドイツ、オーストリア、フランス地方のクリスマスには欠かせないスイーツで、クリスマスシーズンには街のお菓子屋さんで必ずと言っていいほど売られています。幼少期をオーストリアで過ごしたマリーアントワネットも、このクグロフとともに素敵な時間を過ごしてきたのでしょう。彼女が嫁入りの際にフランスに持ち込んだことによりフランス国内でポピュラーなスイーツとなり、その後ヨーロッパ中に広がり今では世界中の人々に愛されるスイーツとなりました。

まだまだある!マリーアントワネットが広めたスタンダードなパン

現代の私達の生活に欠かせないパン。マリーアントワネットもパンが大好きでした。その中でも特に好んで食べていたパンがクロワッサン。マリーアントワネットが専属のパン職人をフランスに連れて行ったことからも、どれだけ彼女がクロワッサン好きであったかが伺えますね。 フランス語で「三日月」を意味するクロワッサンですが、現在私たちが目にする形は大きくわけて2つあります。それが三日月形と菱形のものです。
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いずれも、出典:www.flickr.com 形の違いは使用している油脂の違いによるものです。前者はバター、後者はマーガリンを使って作られています。 菱形のものは「クロワッサン・オ・ブール croissant au beurre(バターのクロワッサン)」と呼ばれます。フランスではカフェなどで朝食用に置かれているものは菱形が多いのが特徴です。 実はクロワッサンの発祥には少し面白い歴史があります。遡ること17世紀。当時オーストリア・ハンガリー帝国はトルコ軍と戦っていました。トルコ軍がオーストリアへ侵入する為の地下トンネルを掘っていた際、その物音が地下の工房で働いていたパン職人に聞かれてしまいます。 このパン職人の通報がきっかけでオーストリア軍はトルコ軍を撃退することができました。その際にトルコ軍のシンボルである新月(三日月)型のパンを作り勝利を記念したことが、クロワッサンの始まりと言われています。つまりオーストリア軍の勝利の喜びを形にしたものが三日月形のクロワッサンなのです。 今では朝食やおやつとして食べられているクロワッサン。祝勝のシンボルだったとは驚きですね!

フランス人も真似した、マリーアントワネットのエレガントな食後の習慣。


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出典:authoritynutrition.com 食後やデザートタイムでのコーヒー。今では当たり前のように浸透しているこの習慣も実はマリーアントワネットが伝えたものです。お菓子やケーキが大好きだった彼女は、ベルサイユ宮殿の庭園でコーヒーとブリオッシュを嗜む時間をとても楽しみにしていました。 当初は彼女のような上流階級の人々が嗜んでいたコーヒーでしたが、流行に敏感なパリの人たちが目をつけ、コメディー・フランセーズという有名な劇場の近くにパリ発のカフェ”プロコープ”がオープンするに至ります。次第にこのカフェには思想家・作家が集い、彼らが議論を交わす場として栄えていき、やがて庶民にもカフェスタイルが広まっていきました。 マリーアントワネットが好んだコーヒーのスタイルが、フランス革命を企てた思想家や作家を通して庶民に広く受け入れられたというのは何とも皮肉な話しですが、それだけ彼女が流行に聡く、階級や身分によらない「日常の楽しみ方」をよく知っていたという証拠かもしれません。

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出典:www.instagram.com 沢山のスイーツや食文化を広めたマリーアントワネット。彼女が愛したパンやスイーツ、食習慣は現代を生きる私たちの生活の中でも変わらず愛されています。またスイーツの他にも香水を付ける習慣、ハンカチをたたむ習慣、テーブルセッテイングなどを伝えた彼女は、現代の女性のシンボル的存在として今なお多くの人々から愛されています。 当時はベルサイユ宮殿での豪華な生活が人々の反感を買っていましたが、もし彼女がこの時代に生きていたなら、きっと流行に敏感なスイーツ王妃として人々から慕われていたことでしょう。
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