パティシエのための製菓用語集「パティシエWiki」

性質・現象

• メイラード反応

アミノーカルボニル(メイラード)反応とは、食品に含まれている「アミノ化合物」と「還元糖」を加熱または合わせて保存することにより、結合・分解・酸化などの複雑な反応を繰り返して、茶褐色の物質「メラノイジン」ができる現象をいう。 ケーキのスポンジやタルト、パイ、シュー、クッキー生地などを焼成したときの「焼き色」がアミノーカルボニル(メイラード)反応によりできたもの。 材料の小麦粉・バター・卵・砂糖に含まれるタンパク質やアミノ酸などの「アミノ化合物」と、糖分に含まれる「還元糖」が加熱(160℃以上)されることにより、アミノーカルボニル(メイラード)反応がおこり、茶褐色の物質「メラノイジン」ができて、焼き色になる。 また、アミノーカルボニル(メイラード)反応は色が変化するだけでなく、アミノ酸の種類と加熱温度により特有の香気成分も生成される。 スポンジやタルト生地などを焼いた時の芳ばしい香りも、アミノーカルボニル(メイラード)反応によるもの。 アミノーカルボニル(メイラード)反応の仕組みは、まだ解明されていない部分が多いが、主要素である「アミノ化合物」と「還元糖」が多いほど反応を起こしやすくなる。 グラニュー糖より上白糖のほうが焼き色を付きやすいのは、上白糖には「還元糖」が多く含まれており、アミノーカルボニル(メイラード)反応を起こしやすいため。


• ブレークダウン現象

小麦粉と液体を混ぜてクリーム状にし、加熱していくと、小麦粉に含まれるデンプンによりクリームが締まっていく。これをさらに過熱し、一定の温度(95℃以上)になると、糊化していたデンプンの分子の一部が分解され、しまりがあったクリームが突然柔らかくなる。これがブレークダウン現象である。 カスタードクリームにおいてのブレークダウン現象 カスタードクリームを炊く際にクリームの温度が50℃になると、小麦粉に含まれるデンプンが糊化していきしまりのあるクリームになる。そのまま加熱を続けて95℃に達するとブレークダウン現象にが起き、突然クリームのコシが切れ柔らかくなる。 糊化したデンプンは冷めるとコシがでて固くなるので、クレームパティシエールは、しっかりとブレークダウンさせてデンプンのコシを切らないと、冷めてから固くなり、滑らかなクリームに仕上がらない。 シュー生地もカスタードクリームと同じく沸騰した液体とバターに小麦粉を混ぜて作るが、95℃までは加熱しないため、ブレークダウン現象は起きない。シュー生地の場合はブレークダウン現象ではなくデンプンに含まれるグルテンにより、炊いているうちにしまりが出て固い生地になる。


• 糊化

小麦粉と水分を一緒に加熱すると、小麦粉に含まれるデンプン粒「アミノペクチン」が水分を吸収して膨らんでいき、糊のような粘りがある状態になる。この現象を糊化(こか)という。 デンプンの糊化により、様々なケーキの土台やクリームが構成される。 スポンジ生地 スポンジ生地における糊化の役割は、スポンジにしっとりとした、柔らかい食感を生むことである。 スポンジの骨組みは小麦粉のグルテンにより形成されるが、ふんわりとした柔らかい食感は、デンプンの糊化によるも。 デンプンの糊化とグルテンの形成の両方に水分が必要になるので、水分が多い配合の方がしっとりとした柔らかい仕上がりになりやすい。 シュー生地 シュー生地の作り方は他の生地とは違っており、バターと水を十分に沸騰させて、小麦粉を加え生地を練り上げていく。この時に小麦粉に含まれるデンプンの糊化により、粘りがある生地になる。糊化した後、卵を加え生地の固さを調整していく。デンプンの糊化により、粘りがあり水分を十分に含んだ生地は、熱を加えると風船のように膨らんでいきます。 タルト生地 タルト生地では、小麦粉内のデンプンは卵の水分を含み糊化し、タルト生地の土台を作る。 バター生地 バター生地では、小麦粉内のデンプンは卵の水分を含み、糊化し粘りを出す。 水蒸気となって水分がなくなると、ふっくらとした柔らかい仕上がりを生む。 クレーム・パティシエール クレーム・パティシエールは、滑らかさがあるクリームに仕上げるため、糊化したクリームをさらに過熱し、糊化の限界までもっていってブレークダウンさせ、コシを切ります。 クリームを作るときに、牛乳・卵黄・砂糖・小麦粉を混ぜたものを加熱し、練り上げます。はじめはデンプンの糊化が始まり、しだいにクリームにコシが出てくる。生地の温度が95℃になると、糊化の限界に達してデンプン粒が破壊し、 滑らかな状態になる。コシが切れたクリームは冷却後、滑らかな状態になる。


• 分離

分離とは、水分と油脂がうまく乳化できていないときに起こる現象。 例えばバターと卵を混ぜる際、混ぜ方や温度差などによって滑らかに乳化できない場合、水っぽくなり水分と油脂がバラバラで歪な状態になる。 バターケーキの分離 バターケーキはバターと砂糖と混ぜ合わせ、滑らかにした後に卵を加えていく。この時に、卵を一度に加えてしまうとうまく乳化できず、分離が起きる。分離した生地の焼き上がりはふくらみが足らず、目が粗いスポンジになります。分離を起こさないようにするためには、卵を少しずつ加えていき、しっかりと混ぜて滑らかになってから次を加えていくとよい。 また少量の配合の場合は、卵はほぐして溶き卵にして少しずつ加えていかないと、分離しやすくなる。 乳化の時に大事なのが、それぞれの素材の温度と固さである。常温のバターに混ぜる卵は冷蔵庫から出したばかりのものではなく、常温のものの方が分離せずうまく乳化できる。 シュー生地の分離 シュー生地を作るときは、水とバターを沸騰させ小麦粉を一気に加えまぜて、生地をひと纏まりにする。この生地に卵を加えていきますが、卵を一気に加えすぎると、分離が起きて滑らかな生地にならない。卵は生地の状態を確認しつつ、何回かにわけ加える。 シュー生地の温度が下がると、生地がしまってふくらみが悪いシューになるので、卵を加えるときは素早く作業をする必要がある。 チョコレートの分離 刻んだチョコを湯煎で溶かすとき、誤って湯煎の水がチョコレートの中に入ると、分離が起きる。水分とチョコは混ざらず、砂糖が水分を吸収してしまうため、ボソボソとした塊ができる。 アーモンドクリームの分離 バターと砂糖をすり合わせてクリーム状にした後に卵を加えていくが、卵を多く加えすぎると乳化がうまくできず、分離が起きる。分離したアーモンドクリームは水っぽく柔らかい状態になる。 卵を加えるときは、常温のものを使い、少しずつ数回に分け加えていくとよい。


• ブルーム

【英:bloom】は「花」「花が咲く」「植物の果実や葉にふく白い粉」という意味がある。 チョコレートにおいてのブルームは、テンパリングしていないチョコレートの表面が変質して、白いカビのような模様・筋・斑点のようなものが表れる現象のことをいう。 チョコレートに含まれるココアバターの結晶構造が不安定で配列が脆い為、砂糖や油脂の粒子がチョコレートの中で移動しやすく、表面に模様として出やすくなる。 ファットブルームとシュガーブルームの2種類があり、食べても害はないが口当たりや風味は大幅に損なわれる。 ブルームの出たチョコレートは見た目や口当たりも悪く、手の中で溶け、ボロッと崩れてしまうほど脆くなる。 ブルームが出てしまった場合は、焼菓子やホットチョコレートにすると問題なく食べることができる。 また、果物や野菜の果実の表面についた白い粉状のロウ物質も同じくブルームといい、「果粉」とも呼ばれる。こちらは果実から自然に分泌される天然物質であり、新鮮で熟したものほど多いため、美味しさを見極める際の目安となる。 シュガーブルーム(チョコレート) 砂糖が原因となるブルーム現象。 油脂混合物から砂糖が分離して起きる現象で、水分がチョコレートに含まれる砂糖を溶かす事が原因となる。 例えば、急激な温度変化(温度差10℃以上)を与えると、チョコレートの表面に水滴(結露)がつく。その水滴にチョコレートに含まれる砂糖が溶け出して、水分が蒸発すると、砂糖が結晶として残って表面に模様を作る。これがシュガーブルームである。 シュガーブルームを防ぐには、作業環境など、あらゆる水分や温度、湿度、蒸気に気をつける必要がある。 特にチョコレートを流す型や器具に水分が残っているまま作業すると起こりやすくなるため、注意すること。 ファットブルーム/オイルブルーム(チョコレート) ココアバターが原因で起こるブルーム現象。 チョコレートに含まれるココアバターが溶けて表面に浮き出し、そのまま冷え固まってまだら模様になる。 ココアバターは28℃前後で溶け始め、30℃以上になると完全に溶けて表面に浮き出るため、ファットブルームを防ぐためにはチョコレートの保存場所や温度に気をつける必要がある。 果物においてのブルーム(果粉) 熟した新鮮な果実に見られる白い粉のようなもので、果実の果皮表面に含まれる脂質から作られたロウが、表面に押し出されて形成されたもの。 雨や朝露などの水分を弾き、温度や湿度など環境の変化、病気から果実を守る。また、果実からの水分蒸発(乾燥)を防いで鮮度を保つ働きがある。 市場業界では白粉(しろこ)とも呼ばれ、ブルームの残っているものほど市場価値が高いが、触れただけで落ちてしまう為、農家では丁寧に収穫・輸送されている。 主にブルームが付く果実や野菜は、ブドウ、プラム、ブルーベリー、りんご、柿、スイカ、ブロッコリーなど。 キュウリもブルームが出るものであったが、農薬と勘違いされ嫌われたことから、現在では品種改良されて最初からブルームの出ないものが作られている。


• グルテン

小麦粉のタンパク質であるグルテニンとグリアジンが変質したものをグルテンという。グルテンは水を粉に加え、練ると現れ、弾力性と粘り気がある。 グルテンにはグルテニンとグリアジンという2種類のタンパク質があり、この2つが絡み合って形成される。 練れば練るほどグルテンがたくさん出てくる。家で例えるならグルテンは柱のような存在で、生地作りにおいて骨格形成の働きがある。スポンジ生地はグルテンの力で形が整い、パンはグルテンの力で膨らみ、うどんにコシが出るのもグルテンの作用である。 グルテンの量と質 小麦粉の種類によって含まれるタンパク質の量と性質が異なり、「薄力粉」「中力粉」「強力粉」の3種類にわかれている。→小麦粉の種類 薄力粉は、軟質小麦を原料とする小麦粉。タンパク質の割合は小麦粉の中で一番少なく8.5%以下。粉の特徴はきめが細かく、しっとりとしていて握ると塊ができる。 強力粉は、硬質小麦を原料に作られている。タンパク質の割合が11.5%以上の小麦粉を強力粉と呼び、タンパク質の含有量が小麦粉の中で一番多い。粉の特徴はきめが粗くさらさらしていて、打ち粉に使われていたりする。 強力粉は薄力粉よりタンパク質量が多いためグルテン形成量も多く、弾力と粘り気が強い。 グルテンの作用 パン生地への影響 パンをつくる場合、小麦粉他材料と水を加えて捏ねると、軟らかく弾力がある生地になる。 捏ねることでグルテンが形成され、生地を伸ばすと薄い膜のようになり、網目で細い繊維状になる。 焼成の際にオーブンで熱が加わるとイーストがガスを発生させ、膨張して体積がさらに大きくなり、よくふわふわのパンに仕上がっていく。 生地の中心温度が95~97℃に上がった際、形成されたグルテンの網目状組織は熱で変性して固くなるため、パン中にしっかりした骨組みができて冷えてもその形を保てる。でんぷんが壁、グルテンが柱の役割を果たしている。 パイ生地への影響 パイ生地は、練り合わせたり、麺棒でのばしたりした後には、必ず「生地を休ませる」という工程が入る。 練り合わせたばかりの生地はグルテンにより弾性が強まり伸ばしにくくなったり、焼成の際に縮みが起こったりする。伸ばした直後のグルテンが作用したままの生地は使うことができない。生地のコシを作っているグルテンのタンパク質の粘弾性は、生地を休ませている間に変化し、ゆるまっていく。 練り合わせた生地や麺棒でのばしたばかりの生地は、グルテンの構造が無理な力で引きのばしたような状態になっている。そのため、力を加えて無理に生地をのばそうとしても、元の状態に戻ろうとする力が強く、非常にのばしにくかったり成形しにくい。 しかし、この生地を冷蔵庫でしばらく冷やして休ませるとグルテンによる弾力がだんだん弱くなり、のばしやすくなっていく。寝かしている間にグルテンの網目構造無理な力のかかっている部分が切れ、ほぐれ、構造全体に余裕ができてくるので伸ばしやすく加工しやすくなる。 グルテンに影響する副材料、添加剤 食塩はグルテンのコシを強くする性質を持っている。パン作りにおいては食塩は重要なもので、全体がしっかり締まって、弾力がありダレない。 食塩を入れないと、発酵させている間に生地がダレてベタベタした仕上がりになってしまう。 食塩の量が多すぎると、パン酵母(イースト)の発酵が抑えられ、生地が膨らまなくなることもある。 サラダ油などの液状油はグルテンの無理な結合を減らしたり、グルテンと他の成分との接触をなめらかにしたりする役割がある。液状油を加えた生地は、生地全体が非常に軟らかくなり、薄く伸ばしやすい。 また、レモン汁や酢などはグルテニンとグリアジンを溶けやすくし、グルテンがやわらくなり生地が伸びやすくなる。 アルコールなどもグリアジンを溶けやすくし、グルテンを柔らかくする作用がある。