パティシエのための製菓用語集「パティシエWiki」

パイ生地の菓子

• ガレット・ドラーンジュ

ガレット・ドラーンジュ【仏:Galette Dorānju】 ガレット・ドラーンジュとはパート・サブレを型を使わずに手で成形して作る、オレンジのタルト風菓子を指す。 土台の生地の外周に棒状にした生地で壁を作り、手でつまむように成形し、中にオレンジマーマレード・オレンジピール・アパレイユを敷いて焼き上げる。 「ドラーンジュ」はフランス語で「オレンジ」の意味であるため、ガレット・ドラーンジュは「オレンジのガレット」と呼ばれることもある。 ガレット・ドラーンジュに用いるパート・サブレは糖分より脂肪分(バター)の割合が多いタルト生地である。 そのため、歯ざわりが軽く、口の中でほろほろと崩れる脆さが特徴にあげられる。 ガレットの種類 『ガレット』と聞けば、クレープの原型であるそば粉の生地を焼き、卵や野菜を包んで正方形に折りたたんだ料理を想定する方もいるだろう。 しかし、ガレットは本来『円形に平たく焼いたもの』という意味であるため、料理と菓子の両方で使われる言葉である。 『ガレット』の名がつく菓子として、ガレット・ドラーンジュのほか、 ガレット・デ・ロワ 、 ガレット・ブルタルー がある。 歴史 ガレット・ドラーンジュの土台に用いるパート・サブレの、「サブレ」の名前の由来には次の3つの説がある。 1. サブレが作られたのが、フランスのサブレ=シュル=サルトであるからという説 2. 17世紀、サロンを開いていたサブレ公爵夫人が、バターをたっぷり使ったガトーセックを出したことが始まりであるからという説 3. フランス語で「Sable(サーブル)」は砂を意味し、砂が崩れるような食感から名づけられたという説 また、ビスケット生地やパイ生地で作った器に詰め物をした菓子や料理の総称が「タルト」であり、ガレット・ドラーンジュもタルトの一種である。 タルトは、誕生から長い期間、手で食事をしていた人類が、はちみつやクリームといった液状のものを食べられる器に入れることで食べやすくするという発想から生まれた。 この発想は古代ギリシャ、古代エジプト時代には既にあったともいわれるほど、長い歴史を持つものである。


• タルト・ブルダルー 

タルト・ブルダルー【仏:Tarte Bourdaloue】 タルト・ブルダルーとは、生地にアーモンドクリームを流し込み、その上に果物を乗せて焼いたタルトである。 特に洋梨を使用したタルト・ブルダルーは、Tarte aux poires Bourdaloue(タルト・オー・ポワール・ブルダルー)と呼ばれる。poires(ポワール)とは、フランス語で「洋梨」を意味する。 一般的に、ブルダルーはアーモンドのクリームの上に果物を乗せ、表面に砕いたマカロンと溶かしバターをかけて焼き色を付けたものである。 これをタルト生地の上に作ると、タルト・ブルダルーとなる。 歴史と由来 「ブルダルー」という名前の由来には次の2つ説がある。 1. 19世紀末~20世紀初頭のパリが繁栄していたベル・エポックの時代に、ブルダルー通りにあった菓子店で売られていたからという説。 Faquelle(ファスケル)、またはLesserteur(レセトゥール)という名のパティシエが考案したといわれている。 2. 長い説教で有名であったイエズス会の説教師Louis Bourdaloue(ルイ・ブルダルー)にちなんで命名されたという説。 彼はブルダルー通りに面した教会で説教を行っていた。 ルイ・ブルダルーは1704年没であるため、タルト・ブルダルーの由来である2つの説には約200年の開きがある。


• ミルフィーユ

ミルフィーユ【仏:mille-feuille】 ミルフィーユとは、キャラメリゼした3枚のパイ生地の間にクリームを挟んだ、フランスの歴史ある菓子である。 間に挟むクリームには伝統的なカスタードクリームだけでなく、生クリームやクレーム・レジュール(カスタードクリームと生クリームを混ぜたもの)なども使われる。 ミルフィーユには様々なバリエーションがあり、特に、苺を挟んだものをmille-feuille aux fraises(ミルフィーユ・オ・フレーズ)と呼び、ナポレオン・パイという別名でも親しまれている。 これは、ナポレオン皇帝がかぶっていた帽子に形が似ていることや、数ある菓子の中の「皇帝」を意味して、名づけられたという。 また、ミルフィーユの上部にフォンダンをかけ、矢羽模様などをつけたものはmille-feuille glace(ミルフィーユ・グラッセ )、3枚のパイ生地のうち中央の1枚をスポンジケーキに置き換えたものはmille-feuille blanc(ミルフィーユ・ブラン )と呼ばれる。 歴史と由来 フランス語で「mille」は「千の・たくさんの」、「feuille」は「木の葉」を意味する。そのため、「mille-feuille」を直訳すると「千の木の葉」という意味である。これは、森の落ち葉のように幾重にも重なりあったパイの様子を表している。 日本では「ミルフィーユ」という発音が一般的であるが、フランス語で「フィーユ(fille)」は「女の子」を意味する単語であるため「千人の女の子」という意味になってしまう。本来の発音は「ミルフイユ」または「ミルフォイユ」が近い。 ミルフィーユの由来は、アントナン・カレームの考案とする説と、1800年ごろにRouget(ルージェ)という菓子職人が得意としていたという2つの説がある。 アントナン・カレームは諸説あるエクレアの考案者であるとも言われている。


• シブースト

シブースト【仏:Chiboust】 パイ生地にフルーツとクレーム・シブーストを乗せ、トップをキャラメリゼした菓子。 シュー生地で周りを囲ったものは サントノレ【仏:Saint-Honoré】 とも呼ばれる。 今日のムースクリームの先駆けとも言える、古典菓子としても有名である。 シブーストに用いるクレーム・シブーストとは、カスタードクリームにゼラチンとイタリアンメレンゲを混ぜて作ったクリームのことを指す。 クリームのふわっとした食感とパイ生地のサクサクとした食感、中に入れられたフルーツの甘みやキャラメリゼされたトップの香ばしさといった、さまざまな口当たりを楽しむことができる。 中に入れるフルーツにはりんごが使用されることが多い。 歴史と由来 19世紀中ごろのパリ、サン・トノレ通りに店を構えていた菓子職人のシブースト氏が考案した。 彼の名前から「シブースト」と命名されたことが名前の由来である。 当時は冷蔵施設がなかったため、生クリームや卵を使ったクリームは細菌の温床となっていた。 そのため、シブースト氏は熱したシロップと卵白を混ぜたイタリアンメレンゲを使い、カスタードクリームとゼラチンを用いたクレーム・シブーストを考案。 火を通したクリームにゼラチンを混ぜて固めることで、細菌の問題を解決した。 これがシブーストの誕生である。 1970年代、パリで製菓修行をしていたブールミッシュのシェフパティシエである吉田菊次郎氏によって開発当時のレシピが再現され、タルト・シブーストとして日本にも輸入された。