
ペクチン
カテゴリ:食品添加物

ペクチンは天然のゲル化剤であり、りんごの搾りかすや柑橘類の皮など植物の細胞壁を作っている成分の一つ。
果物の細胞の硬さを調整したり、細胞同士を繋いだり、細胞を保持したりする役割を果たしている。
カシスやプラム、オレンジ、リンゴ、イチジクなどの果物の果肉や皮に多く含まれる。
未熟な果物においてはペクチンは非常に長く繋がっており、プロトペクチンという状態にある。プロトペクチンは水に溶けず、ゲル化することもない。果物が適度に熟してくると酵素により分解され、ペクチンとなる。
熟しすぎるとペクチンの分解が進みすぎてペクチン酸という物質に変わり、水に溶けなくなりゲル化の力もなくなる。
ペクチンの効果を最大に利用するためには、適度に熟れた果物を選ぶことが重要である。
ジャムはペクチンを含む果物を煮ることでペクチンが溶け出し、それが大量の砂糖と強い酸とともに加熱されることで、どろっと固まってできている。
ジャムのゲル化には1%以上のペクチンに加え出来上がりの糖度が55〜65%、PH2.9〜3.4程度の酸が必要になる。
もともとペクチンの少ない果物などをジャムにするときには、しっかりとゲル化させるために市販のペクチンを加えることがある。
同様にしっかり固めるために必要な酸味が足らない場合は、レモン汁や粉末のクエン酸などを加えて補う。
市販のペクチンはりんごの絞りかすや柑橘類の皮から抽出し、乾燥させて粉末状にした物。
主成分は多糖類(食物繊維)で、色は白や黄土色をしている。安定剤としても利用される。
また、ペクチンは消化されないので0キロカロリーである。
性質と扱い
適度な酸性の状態で多量の糖分を加えて加熱すると、常温で冷めたときに弾力ある状態にに凝固する性質がある。
市販のペクチンは粒子が細かく、直接液体に加えると固まってダマになってしまうので、砂糖とよく混ぜて分散させる。
使用する際は、90〜100度で煮溶かす。沸騰させてもよい。
繰り返し煮溶かし固めると、強度が弱る。
HM、LMペクチン共に糖度やPHが最適な条件から外れると離水する。
出来上がった製品は冷凍して保存することができる。
ペクチンの種類
ペクチンは性質によって、高メトキシルペクチンと低メトキシルペクチンに分けられる。
高メトキシルペクチン(HMペクチン)
天然のペクチンと同様に糖度、酸性度が高いほど強く早くゲル化する。
一般的にジャム、あるいはゼラチンなどでは固まらない酸味や甘味の強いゼリーを固めるときに使われる。
PH2.7〜3.5(酸性)、糖度55〜80%、60〜80℃の常温で固まる。
HMペクチンでつくるお菓子…パート・ド・フリュイ
低メトキシルペクチン(LMペクチン)
糖度、酸度にかかわらずミネラル(カルシウムやマグネシウム)が存在すればゲル化する。
低糖・無糖のジャムや牛乳を使った冷たいデザート、酸味を抑えたデザート類に使われる。また、いったん攪拌してもまたもとのようにどろっと固まる性質があるので、ナパージュの製造などに用いる。
PH3.2〜6.8(酸性から中性)、30〜40℃の常温で固まる。
高メトキシルペクチンよりやや柔らかい。
LMペクチンでつくるお菓子…ジャム、ナパージュ
凝固する仕組み
ペクチンの基本構造は、単糖類の一種である多数のガラクトースの誘導体が細長い鎖状に並んだもの。これは、熱水の中にあると分子の活動が活発なので、液体の中を自由に動いている。
ペクチンが凝固作用を発揮するためにはここで大量の砂糖と酸と一緒に加熱する必要がある。温度が下がると徐々に動きが悪くなり、ガラクトース同士で引き合うようになる。鎖状のガラクトースが繋がると、細かい網目状の構造を形成し、その隙間に大量の水分を抱え込める様になる。
更新日:2023年06月30日
作成日:2018年09月12日
更新日:2023年06月30日
作成日:2018年09月12日
パティシエWikiは現場で働くパティシエのみなさんの協力のもと制作されています。
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関係項目
• ナパージュ
ナパージュ【仏:nappage】 上掛け・ツヤ出しに使用するジャム状または液状のゼリー。 水・砂糖に加え、 ペクチン が多く含まれている。 ナパージュは、いったん攪拌してもまたもとのようにどろっと固まる性質を持ったペクチンを利用した製品である。 様々な色の物があるが、どれも透明感がある。 お菓子の表面に塗りツヤを出すことで、お菓子が新鮮でおいしそうに見える。 他にも製品の表面を保護したり、乾燥を防ぐために使われている。 バナナやりんごなどの空気に触れることで変色しやすいフルーツの劣化を防ぐ働きもある。 また冷えて固まることで細かいフルーツの飾りなどの、形状を保ち、形が崩れるのを防ぐ効果もある。 色々な製品が開発されており、チョコレートやキャラメル、いちごやオレンジの味が付いた物もあり、これらは製品に塗るだけで風味づけができる。 性質・扱い 液体及びジャム状の物は加熱が必要なタイプと、加熱せずに使えるタイプに分かれる。 さらに、水や果汁を加えて使うタイプと、そのまま使うタイプがある。 加熱して使うタイプの場合、熱に弱いお菓子には使いづらいが、加熱することでしっかりと固まるという特徴がある。煮溶かした後は流動性があるうちに早めに使用することで美しく塗れる。冷えるとまた元のように固まってしまう。 フルーツや生ケーキに使用する場合、粗熱をとってとろみのある状態で塗ると良い。 加熱せずに使えるタイプは温める手間がなく、熱に弱いフルーツやムースなどに使える。 プロの現場ではあまり使われないが粉末状の物もある。 これは液体に加え、煮溶かして使用する。沸騰させてもよい。 粉末の状態だと賞味期限が長いので、少量しか使わない場合は経済的。 未開封であれば常温保存できる。 ナパージュの種類 ナパージュ・ルージュ【仏:nappage rouge】 グロゼイユ(赤すぐり)等の赤い果物、 砂糖 、ペクチンなどから作られる、赤いナパージュ。常温でゲル化している。少量の水をいれて煮溶かして使う。 色が薄ければ、グロゼイユまたは フランボワーズ の生か冷凍のピューレを加えて調整することもできる。色粉を入れてもよい。 フランスの伝統菓子ポンヌフに使われる。また、いちごに塗るといちごの赤色がより強調されてよい。 ピストレ出来る物もある。 ナパージュ・ブロン【仏:nappage blond】 アプリコットと砂糖を煮詰めて作られたジャム状のもので、ペクチンの濃度が高い。色はオレンジ色で、常温でゲル化している。 バターケーキやタルト、パイの仕上げに使われる。 10%の水を加えて火にかけて煮溶かしてから、ハケを使って薄めに塗る。 艶やかな焼き色を引き立たせると同時に、お菓子の乾燥を防ぐことができる。 アプリコットジャムで代用することもできる。 ジャムは風味、色はナパージュより優れているが、透明感と凝固量はナパージュ・ブロンの方が上である。 アプリコットジャムを塗ることをアプリコテ【仏:abricoter】と言う。 ナパージュ・ヌートル【仏:nappage neutre】 果物は含まれておらず、水にペクチン、砂糖、水飴を加えて作られたもの。無色透明。ピューレを加えて色を付けることもできる。 加熱加水して使う物は常温でゲル化している。水を加え加熱して使用する。 そのまま使用することが出来る物もある。こちらは常温でどろっとした液体。ナパージュミロワールと呼ばれることもある。ミロワールとは鏡の意味。攪拌してから塗る。熱で劣化してしまう生のフルーツや、熱で溶けてしまうムースに用いることができる。冷蔵庫で冷やすことによりゲル化して、製品を透明なゼリーが覆ったような見た目になる。プロの現場で最もよく使用されるナパージュである。ピストレ出来る物もある。
• ゼラチン
ゼラチン(仏:Gélatine ) 冷菓などを固める凝固剤の一種。 ゼリーやババロア、ムース、マシュマロなど様々なお菓子作りに使われている。ゼラチンを使用した製品はふんわりと柔らかく、粘りと弾力がある。 溶解温度が20〜30℃と低く、口にいれるとすぐ溶け出す。この口どけの良さと食感から人気があり、最も使用される凝固剤である。 牛や豚の骨または皮のコラーゲン(不溶性のタンパク質)を熱水で抽出、精製し、乾燥させて作られる。近年は豚由来の物が主流になってきている。 板状と粉末状のものがある。100グラムあたり338キロカロリー程度。 凝固する仕組み ゼラチンの基本構造は、多数のアミノ酸が細長い鎖状に並んだ物。これは、熱水の中にあると分子の活動が活発なので、液体の中を自由に動いている。 温度が下がると徐々に動きが悪くなり、アミノ酸同士で引き合うようになる。鎖状のアミノ酸が繋がると、細かい網目状の構造を形成し、その隙間に大量の水分を抱え込める様になる。 これにより、独特の弾力のある固まり方をする。この網目構造によりゲル化する仕組みはアミノ酸由来のものや単糖類のものがあるが、ゼラチンだけでなく寒天やカラギーナン、ペクチンにも共通している。 扱い 板ゼラチンは戻すための水の温度が高いと水に溶け出してしまうので、多めの水に氷を入れ水温を10℃以下に保つ。 また板ゼラチンは濡れると張り付いてしまい、均一に戻らなくなるので、水に入れる時は一度に入れず、一枚一枚順番に入れる。柔らかくなったら水気を切って使う。 粉ゼラチンの場合も冷たい水でふやかす。水の量はゼラチンの種類や作りたい製品により異なるが、およそ4〜5倍。均一に戻すため、水をはった容器に粉ゼラチンをふり入れるようにする。 ゼラチンに水を吸水させて柔らかくしてから他の材料に加え、50〜60℃で加熱して溶かす。これを冷蔵庫などで15〜20°Cまで冷やすと固まる。 性質 製造過程において、加熱しすぎるとゲル化力が弱まる。 やや酸に弱く、PH3.5以上ないと固まらない。たんぱく質分解酵素を含む果物の果汁はゲル化できない。 (パパイヤ・キウィ・パイナップル・メロン・イチジクなど) これらの生の果肉をゼリーに混ぜ込むと、その果肉の周囲から凝固が解けていく。酵素は熱に弱いため、これらのフルーツを固めたい場合は缶詰になっている物を使うか、一度加熱してからゼラチンと合わすとよい。加熱することでフルーツの味や風味が損なわれることが多いので、ゼラチン以外の凝固剤が使われることが多い。 固めた冷菓は25〜30℃で溶け出す。夏季の室温や人の体温で溶けてしまうので、注意が必要。一度溶けた製品を再び冷やして、ゲル化させることもできるが、強度が弱くなる。 ゼリーは基本的に冷凍できない。ババロアはレシピ次第で、冷凍すると品質が落ちる物も多い。ムースは冷凍できる。急速冷凍にかけて冷凍し、溶かすときは冷蔵庫でゆっくり解凍する。 砂糖にはゼラチンの凝固を助ける働きがある。砂糖は水に溶けて分散し、上記の網目構造の中で水を吸着して保持し、離水を防ぐ効果がある。なので、甘さ控えめにしたいからといって、安易に砂糖の配合を減らすと固まりが緩くなる場合がある。 完成した製品が溶けない温度を保てば、ほとんど離水しない強い凝固力がある。 ゼラチンの種類 板ゼラチン 透明な薄い板状のゼラチン。プロの現場ではこちらが一般的に使われている。 板ゼラチンは一枚あたりの重さが一定なので計量する手間がない。(ただしメーカーや種類による違いはある。) 粉ゼラチンに比べると短時間で戻せる。 戻すのに使った冷水にはゼラチンの匂いが溶け出すので、独特の匂いが和らぐ効果がある。板ゼラチンの難点はゼラチンの戻し具合や水分の絞り具合によって、含まれる水分量が変わってくる所。この水分量は完成品の硬さに影響してくる。水分量を一定にするためにはその板ゼラチンを戻したときの重量を計って基準となる値を決めておき、水分を足したり、よく絞ったりすればよい。 粉ゼラチン 白色か薄い黄土色の粉末状。スーパーなどでも簡単に手に入る。粉ゼラチンはあらかじめ戻す水分の量を計算して合わせているため、水分量の調整はいらない。 砂糖の補助効果 砂糖は水に解けて分散し、上記の網目構造の中で水を吸着して保持し、離水を防ぐ効果がある。なので、甘さ控えめにしたいからといって、安易に砂糖の配合を減らすと固まりが緩くなる場合がある。 使用における注意点 製造過程において、加熱しすぎるとゲル化。だか、この酵素は熱に弱く、加熱することによって活動を失う。なので、これらのフルーツを固めたい場合は缶詰になっている物を使うか、一度加熱してからゼラチンと合わすとよい。ただし、加熱することでフルーツの味や風味が損なわれることが多いので、ゼラチン以外の凝固剤の使用をお勧めする。 固めた冷菓は25〜30℃で溶け出す。夏季の室温や人の体温で溶けてしまうので注意がいる。一度溶けた製品を再び冷やして、ゲル化することもできるが、強度が弱る。 ゼリーは基本的に冷凍できない。ババロアはレシピ次第で、冷凍すると品質が落ちる物も多い。ムースは冷凍できる。急速冷凍にかけて冷凍し、溶かすときは冷蔵庫でゆっくり解凍する。