
ナパージュ
カテゴリ:その他加工品

上掛け・ツヤ出しに使用するジャム状または液状のゼリー。
水・砂糖に加え、ペクチンが多く含まれている。
ナパージュは、いったん攪拌してもまたもとのようにどろっと固まる性質を持ったペクチンを利用した製品である。
様々な色の物があるが、どれも透明感がある。
お菓子の表面に塗りツヤを出すことで、お菓子が新鮮でおいしそうに見える。
他にも製品の表面を保護したり、乾燥を防ぐために使われている。
バナナやりんごなどの空気に触れることで変色しやすいフルーツの劣化を防ぐ働きもある。
また冷えて固まることで細かいフルーツの飾りなどの、形状を保ち、形が崩れるのを防ぐ効果もある。
色々な製品が開発されており、チョコレートやキャラメル、いちごやオレンジの味が付いた物もあり、これらは製品に塗るだけで風味づけができる。
性質・扱い
液体及びジャム状の物は加熱が必要なタイプと、加熱せずに使えるタイプに分かれる。さらに、水や果汁を加えて使うタイプと、そのまま使うタイプがある。
加熱して使うタイプの場合、熱に弱いお菓子には使いづらいが、加熱することでしっかりと固まるという特徴がある。煮溶かした後は流動性があるうちに早めに使用することで美しく塗れる。冷えるとまた元のように固まってしまう。
フルーツや生ケーキに使用する場合、粗熱をとってとろみのある状態で塗ると良い。
加熱せずに使えるタイプは温める手間がなく、熱に弱いフルーツやムースなどに使える。
プロの現場ではあまり使われないが粉末状の物もある。
これは液体に加え、煮溶かして使用する。沸騰させてもよい。
粉末の状態だと賞味期限が長いので、少量しか使わない場合は経済的。
未開封であれば常温保存できる。
ナパージュの種類
ナパージュ・ルージュ【仏:nappage rouge】
グロゼイユ(赤すぐり)等の赤い果物、砂糖、ペクチンなどから作られる、赤いナパージュ。常温でゲル化している。少量の水をいれて煮溶かして使う。色が薄ければ、グロゼイユまたはフランボワーズの生か冷凍のピューレを加えて調整することもできる。色粉を入れてもよい。
フランスの伝統菓子ポンヌフに使われる。また、いちごに塗るといちごの赤色がより強調されてよい。
ピストレ出来る物もある。
ナパージュ・ブロン【仏:nappage blond】
アプリコットと砂糖を煮詰めて作られたジャム状のもので、ペクチンの濃度が高い。色はオレンジ色で、常温でゲル化している。バターケーキやタルト、パイの仕上げに使われる。
10%の水を加えて火にかけて煮溶かしてから、ハケを使って薄めに塗る。
艶やかな焼き色を引き立たせると同時に、お菓子の乾燥を防ぐことができる。
アプリコットジャムで代用することもできる。
ジャムは風味、色はナパージュより優れているが、透明感と凝固量はナパージュ・ブロンの方が上である。
アプリコットジャムを塗ることをアプリコテ【仏:abricoter】と言う。
ナパージュ・ヌートル【仏:nappage neutre】
果物は含まれておらず、水にペクチン、砂糖、水飴を加えて作られたもの。無色透明。ピューレを加えて色を付けることもできる。加熱加水して使う物は常温でゲル化している。水を加え加熱して使用する。
そのまま使用することが出来る物もある。こちらは常温でどろっとした液体。ナパージュミロワールと呼ばれることもある。ミロワールとは鏡の意味。攪拌してから塗る。熱で劣化してしまう生のフルーツや、熱で溶けてしまうムースに用いることができる。冷蔵庫で冷やすことによりゲル化して、製品を透明なゼリーが覆ったような見た目になる。プロの現場で最もよく使用されるナパージュである。ピストレ出来る物もある。
更新日:2021年04月02日
作成日:2018年09月12日
更新日:2021年04月02日
作成日:2018年09月12日
パティシエWikiは現場で働くパティシエのみなさんの協力のもと制作されています。
パティシエWikiは現場で働くパティシエのみなさんの
協力のもと制作されています。
関係項目
• ゼラチン
ゼラチン(仏:Gélatine ) 冷菓などを固める凝固剤の一種。 ゼリーやババロア、ムース、マシュマロなど様々なお菓子作りに使われている。ゼラチンを使用した製品はふんわりと柔らかく、粘りと弾力がある。 溶解温度が20〜30℃と低く、口にいれるとすぐ溶け出す。この口どけの良さと食感から人気があり、最も使用される凝固剤である。 牛や豚の骨または皮のコラーゲン(不溶性のタンパク質)を熱水で抽出、精製し、乾燥させて作られる。近年は豚由来の物が主流になってきている。 板状と粉末状のものがある。100グラムあたり338キロカロリー程度。 凝固する仕組み ゼラチンの基本構造は、多数のアミノ酸が細長い鎖状に並んだ物。これは、熱水の中にあると分子の活動が活発なので、液体の中を自由に動いている。 温度が下がると徐々に動きが悪くなり、アミノ酸同士で引き合うようになる。鎖状のアミノ酸が繋がると、細かい網目状の構造を形成し、その隙間に大量の水分を抱え込める様になる。 これにより、独特の弾力のある固まり方をする。この網目構造によりゲル化する仕組みはアミノ酸由来のものや単糖類のものがあるが、ゼラチンだけでなく寒天やカラギーナン、ペクチンにも共通している。 扱い 板ゼラチンは戻すための水の温度が高いと水に溶け出してしまうので、多めの水に氷を入れ水温を10℃以下に保つ。 また板ゼラチンは濡れると張り付いてしまい、均一に戻らなくなるので、水に入れる時は一度に入れず、一枚一枚順番に入れる。柔らかくなったら水気を切って使う。 粉ゼラチンの場合も冷たい水でふやかす。水の量はゼラチンの種類や作りたい製品により異なるが、およそ4〜5倍。均一に戻すため、水をはった容器に粉ゼラチンをふり入れるようにする。 ゼラチンに水を吸水させて柔らかくしてから他の材料に加え、50〜60℃で加熱して溶かす。これを冷蔵庫などで15〜20°Cまで冷やすと固まる。 性質 製造過程において、加熱しすぎるとゲル化力が弱まる。 やや酸に弱く、PH3.5以上ないと固まらない。たんぱく質分解酵素を含む果物の果汁はゲル化できない。 (パパイヤ・キウィ・パイナップル・メロン・イチジクなど) これらの生の果肉をゼリーに混ぜ込むと、その果肉の周囲から凝固が解けていく。酵素は熱に弱いため、これらのフルーツを固めたい場合は缶詰になっている物を使うか、一度加熱してからゼラチンと合わすとよい。加熱することでフルーツの味や風味が損なわれることが多いので、ゼラチン以外の凝固剤が使われることが多い。 固めた冷菓は25〜30℃で溶け出す。夏季の室温や人の体温で溶けてしまうので、注意が必要。一度溶けた製品を再び冷やして、ゲル化させることもできるが、強度が弱くなる。 ゼリーは基本的に冷凍できない。ババロアはレシピ次第で、冷凍すると品質が落ちる物も多い。ムースは冷凍できる。急速冷凍にかけて冷凍し、溶かすときは冷蔵庫でゆっくり解凍する。 砂糖にはゼラチンの凝固を助ける働きがある。砂糖は水に溶けて分散し、上記の網目構造の中で水を吸着して保持し、離水を防ぐ効果がある。なので、甘さ控えめにしたいからといって、安易に砂糖の配合を減らすと固まりが緩くなる場合がある。 完成した製品が溶けない温度を保てば、ほとんど離水しない強い凝固力がある。 ゼラチンの種類 板ゼラチン 透明な薄い板状のゼラチン。プロの現場ではこちらが一般的に使われている。 板ゼラチンは一枚あたりの重さが一定なので計量する手間がない。(ただしメーカーや種類による違いはある。) 粉ゼラチンに比べると短時間で戻せる。 戻すのに使った冷水にはゼラチンの匂いが溶け出すので、独特の匂いが和らぐ効果がある。板ゼラチンの難点はゼラチンの戻し具合や水分の絞り具合によって、含まれる水分量が変わってくる所。この水分量は完成品の硬さに影響してくる。水分量を一定にするためにはその板ゼラチンを戻したときの重量を計って基準となる値を決めておき、水分を足したり、よく絞ったりすればよい。 粉ゼラチン 白色か薄い黄土色の粉末状。スーパーなどでも簡単に手に入る。粉ゼラチンはあらかじめ戻す水分の量を計算して合わせているため、水分量の調整はいらない。 砂糖の補助効果 砂糖は水に解けて分散し、上記の網目構造の中で水を吸着して保持し、離水を防ぐ効果がある。なので、甘さ控えめにしたいからといって、安易に砂糖の配合を減らすと固まりが緩くなる場合がある。 使用における注意点 製造過程において、加熱しすぎるとゲル化。だか、この酵素は熱に弱く、加熱することによって活動を失う。なので、これらのフルーツを固めたい場合は缶詰になっている物を使うか、一度加熱してからゼラチンと合わすとよい。ただし、加熱することでフルーツの味や風味が損なわれることが多いので、ゼラチン以外の凝固剤の使用をお勧めする。 固めた冷菓は25〜30℃で溶け出す。夏季の室温や人の体温で溶けてしまうので注意がいる。一度溶けた製品を再び冷やして、ゲル化することもできるが、強度が弱る。 ゼリーは基本的に冷凍できない。ババロアはレシピ次第で、冷凍すると品質が落ちる物も多い。ムースは冷凍できる。急速冷凍にかけて冷凍し、溶かすときは冷蔵庫でゆっくり解凍する。
• アガー
冷菓を固める凝固剤の一種。紅藻類のツノマタ、スギノリ由来の多糖類(食物繊維)であるカラギーナンと、マメ科の種子の抽出物のローカストビーンガムなどを合わせた物。見た目は白い粉末。主にゼリーに使用される。常温で固まり始め、しっかりと固まると寒天とゼラチンの間くらいのフルフルした独特の食感になる。海外では以前から広く利用されており、近年では日本でも使われる様になってきている。 精製されたカラギーナンには三つのタイプがあり、それぞれ性質が異なることから、それらの組み合わせと他の増粘剤(ガム類)との組み合わせで性質の異なったアガーが作られている。 弾力、口当たり、冷凍耐性があるものなどいろいろな種類があるので、作りたい物に合わせて選ぶとよい。 ゼラチンや寒天と比べて透明度が高く、光沢があるため、材料の色をそのまま製品に活かすことができる。 また、ゼラチンの様に独特な香りはなく無味無臭なので、他の材料の風味に影響しない。 アガーのカロリーは100gで340キロカロリー程。アガーの中でカラギーナンはカロリーはなく、他の添加物でカロリーが発生している。 扱い アガー単独だとダマになりやすいので、砂糖と粉体混合し、よく混ぜて液体に加えて70〜80℃以上で煮溶かす。 砂糖を使用しない製品の場合は、ダマにならないよう液体を攪拌しながら少しずつにアガーを加え、均一に混ぜ合わせてから加熱する。 沸騰させてしまうと固まりが悪くなるので注意する。また、常温で固まってしまうため、手早く作業する。 固まりきるまで静かに置いておかないと、しっかりと固まらない原因になる。 性質 タンパク質(特にミルクカゼイン)、ミネラル(カルシウムなど)があるときは急激に強くゲル化する。 酸にやや弱く、PH3.5以上ないとゲル化しない。 30〜70°Cで固まるが、一度固まると常温では溶けないので、持ち帰り用の製品にも安心して使える。 凝固温度より5〜10°C高い温度になると溶け出す。また、いったん溶けた物をもう一度冷やすと完全に分離する。 離水しやすい性質がある。アガーは一度固まった状態から形状が崩れることで離水が起こる。バットに流したゼリーをカットした場合も離水が始まる。 また、口に入れた時に形状が崩れて離水が始まるので、その特性を活かして果汁の多いフルーツをかじった時のような他の瑞々しさを演出することもできる。 ゼラチンとアガーで同量の液体を固めた場合、アガーの方が固く仕上がる傾向がある。ゼラチンの代用として使う場合は少量で試作し、適量を確認してから作るとよい。 カラギーナン(ゲル化剤) カラギーナン【仏:Carraghénane】は、紅藻類のツノマタ、スギノリ由来の多糖類(食物繊維)である。 カッパ型、イオタ型、ラムダ型の三種の性質の異なる成分がある。この組み合わせや、比率を調整してさまざまな特徴を持つアガーが作られている。 カッパ型 最も硬く固まる性質があり、多用されている。 しかし、カッパ型のみでは固まり方が不安定になるので、ローカスビーンガムやグルコマンナンなどのガム類と併用することで、弾力ある食感を作り出している。 たんぱく質(カゼイン)によって液体が固まるという性質は、このタイプに由来する。 イオタ型 粘りや弾力があり、ジャムの様に柔らかく固まる。 単体で使われることはなく、少量を用いて離水を防いだりするのに使われる。 ラムダ型 水に溶かすと粘りが出る程度で、ゼリーを固める凝固剤には使えない。 主にアイスクリームなどの増粘剤として利用されている。 凝固する仕組み カラギーナンの基本構造は、多数のガラクトースという単糖類とその誘導体が細長い鎖状に並んだ物。 熱水の中にあると分子の活動が活発なので、液体の中を自由に動いている。温度が下がると徐々に動きが悪くなり、ガラクトース同士で引き合うようになる。 鎖状のガラクトースが繋がると、細かい網目状の構造を形成し、その隙間に大量の水分を抱え込める様になる。ローカストビーンガムを併用することで弾力が出る。