
膨張剤
カテゴリ:食品添加物

膨張剤は生地全体に対してごく少量しか加えないが、数グラムの違いが製品の仕上がりに大きく影響してくる。計量の際は微量計、または1グラム単位で正確に計量する必要がある。
重曹
【仏:bicarbonate de soude】別名「重炭酸ソーダ」「炭酸水素ナトリウム」炭酸水素ナトリウムのみで作られており、製菓において膨張剤として使われる。
炭酸水素ナトリウムに水を加え熱することにより炭酸ナトリウムと水と炭酸ガスが発生する現象を利用して生地を膨らませている。
性質・用途
重曹は単独ではすべてガス化せず、アルカリ性の炭酸ナトリウムが残る。これが小麦粉に含まれる中性・無色のフラボノイド色素がアルカリ性になり、生地が黄色になる性質がある。このため、重曹をチョコレートやココアの入っている生地に利用すると、茶色に深みがでる。
利休饅頭やどら焼きの皮など比較的濃い色調のお菓子に使われる。
特徴や注意点
ベーキングパウダーと比べると炭酸ガスの発生率が低い。重曹は生地への分散性が悪く、場合によっては気泡むらが出てしまうことがある。このため、重曹だけを使用する際には必ず水で溶解してから加えるようにする。
分解でできた炭酸ナトリウムはアルカリ性で、生地に苦味がでることがある。
ベーキングパウダー
最も一般的な膨張剤。製品により多少の違いはあるが、およそ、30%の炭酸水素ナトリウムと30%の数種類の酸性剤と40%のコーンスターチでできている。なお、コーンスターチは炭酸水素ナトリウムと酸性剤が保存中に触れ合って反応しないように遮断剤として入れられている。B.P.(ビーピー)と呼ばれることもある。
炭酸水素ナトリウムと酸性剤に水を加え加熱すると、中性塩と水と炭酸ガスができる現象を利用して生地を膨らませている。
重曹の問題点を改善した製品でもあり、PH(水素イオン指数)とガスの発生を調整して、アルカリ性独特の匂いや苦味、焼き上がりの黄ばみが出ないように作られている。また、生地内への分散がよい。
性質・用途
分散をよりよくするためあらかじめ小麦粉とあわせてふるいにかけてから、生地に混ぜる。用途別に幅広く商品展開されているので製品に合った物を選ぶこと。
ベーキングパウダーは大きく3つのタイプに分類される。
ベーキングパウダーの持続型
一般に販売されているものは持続型で、低温から高温まで長く持続して、炭酸ガスを発生させ続けることができる。オールマイティにいろいろなお菓子作りに使用できる。
ベーキングパウダーの遅効型
焼き物用として特化しているものは、高温の温度帯で炭酸ガスが最も発生するように調整されており、遅効型・遅効性といわれる。
ただし、焼き菓子でもマドレーヌなど、短時間で焼き上げる製品はよいが、パウンドケーキの用に長時間かけて焼き上げるお菓子には、持続型のベーキングパウダーの方が適している。
ベーキングパウダーの速攻型
蒸し物用の場合は蒸し器の中が100℃以上になることはないので、それ以下の温度で炭酸ガスが効率よく発生するように調整されていて、これを速効型・速攻性という。揚げ物用のものもある。
特徴や注意点
水分を加えた時点で化学反応が始まってしまうので、なるべく早く仕上げる。ベーキングパウダーに含まれる酸性剤の種類により、何度の状態で炭酸水素ナトリウムに作用して炭酸ガスの発生を促すかが違ってくる。このため、開封後長く保存すると炭酸水素ナトリウムと酸性剤が常温で徐々に反応してしまって膨らませる能力がなくなる。また、湿ってしまうと同様に効果がなくなる。
密閉し、高温多湿を避け、冷暗所で保存すること。
イスパタ(イーストパウダー)
炭酸水素ナトリウムに対し、塩化アンモニウムを20〜30%加えたもの。炭酸水素ナトリウムと塩化アンモニウムを加熱すると塩化ナトリウムと水と二酸化炭素とアンモニアが発生する現象を利用して生地を膨らます。二種類のガス発生剤が相互に効率よく反応するので、ベーキングパウダーより生地を膨らませる力が強い。
性質・用途
分散性があまり良く無いため、そのまま加えると生地に斑点状のムラが出ることがある。使う直前に水でよくといて加えるとよい。反応後に塩化ナトリウムができるので、生地が中性から微酸性に変化しやすい。微酸性の生地内では上記のフラボノイドが無色に変化しているので、蒸し饅頭の皮などに使用すると、白っぽい状態で焼き上げることができる。蒸し物、和菓子に使用される。
特徴や注意点
反応中に発生するアンモニアガスは独特の臭気がある。これが生地の中に少しでも残るとお菓子の風味が大きく損なわれてしまう。このため、イスパタは基本的には単体で用いられることはなく、重曹やベーキングパウダーと組み合わせて使用する。用途もアンモニアガスを発散しやすい薄い生地を焼くときに限定されることが多い。更新日:2019年08月26日
作成日:2018年09月12日
更新日:2019年08月26日
作成日:2018年09月12日
パティシエWikiは現場で働くパティシエのみなさんの協力のもと制作されています。
パティシエWikiは現場で働くパティシエのみなさんの
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関係項目
• 中種法
中種法(なかだねほう) 使用する小麦粉の一部をイースト、水、時には副材料も加えて中種を作り、2時間以上発酵をとった後、残りの材料を加えて本捏ねをして生地を作る製法。 中種法でつくるパンには、以下のような特徴がある。 利点 ・ボリュームがあり、ソフトな食感 ・老化が遅く、日持ちする 欠点 ・中種法のための設備と作業スペースが必要 ・所要時間が長い ・風味が出づらい 中種を作ってから本捏ねする手間がかかるが、手順さえ守れば生地の質が一定になりやすく調整もしやすいため、出来上がりの製品が安定しやすい。 中種法で食パンを製造する場合の総時間の目安は、ストレート法の1.5倍の約6時間30分。 発酵の時間が長いため、焼き立てパンを売りにしているような店ではあまり採用されないが、逆に「日持ち」を重要視する大手の製パン工場などではよく用いられる製法。
• オールインワン法
オールインワン法とはバター生地の作り方のひとつで、バター以外の材料を混ぜ最後に溶かしたバターを加える方法。 卵の気泡性を利用して生地を膨らませる。焼成した生地は、膨らみが少ないがきめは細かく、非常にしっとりとする。 手順 1. バターを火にかけて溶かし、冷ましておく。 2. ボウルに卵と砂糖を入れ、泡立て器で泡立てる。 3. 2に小麦粉を加え、なめらかになるまで混ぜる。 4. 3に1を数回に分けて加えながら混ぜる。 5. 型に入れ、オーブンで焼成する。 材料を混ぜ合わせた最後にバターを加えるので、バターの温度によっては分離しやすくなるため注意が必要である。 →フラワーバッター法 →シュガーバッター法