転職のタイミングで給与、勤務地、休日数などと同様に気になる「福利厚生」。
交通費支給や寮完備、海外研修アリなど様々なものがありますが、今回は一番基本的な「保険」について解説してみます。
※以下の情報は平成27年(2015年)7月時点の大阪府の情報を基にしています。
社会保険完備とは
よく求人票に「社会保険完備」と書いてありますが、この内訳を知っていますか?
若干の違いはありますが、基本的には「雇用保険」「労災保険」「健康保険」「厚生年金保険」の4つすべてに加入しているという意味になります。
実際には働く人の労働時間などで加入する項目は異なる場合もありますが、正社員としてフルタイムで働く場合は上記を基本に考えてください。
ではそれぞれの保険の種類について詳しく見てみましょう。
雇用保険
雇用保険に既定の期間加入することで、失業したときに「失業給付金」や「再就職手当」が給付されます。
雇用保険への加入は1週間に20時間以上働き、また31日以上の雇用の見込みがある従業員を雇う際には事業主の義務になっており、保険料は会社と従業員の双方が負担します。
労災保険
パティシエやパン職人の仕事はオーブンや包丁などが身近にあり、ケガの危険も比較的多いと言えます。
仕事中や通勤途中のケガや病気の治療費と治療中のお給料を保障してくれるのが労災保険です。
労災保険のみ、ケガや病気の際の支払いが全額企業負担になります。
健康保険
ケガや病気で病院に行く際、「保険証」を提出することで治療費を補てんしてくれるものです。
家族や子供も一緒に加入できます。
厚生年金保険
将来加入者が高齢になったとき、国民年金にプラスして老齢年金がもらえる制度です。
その他障害になったときの障害年金などもここから支給されます。
社会保険と国民健康保険の違い
一般に「保険」と言うと「社会保険」と「国民健康保険」の2つが比べられることが多いのですが、ではその2つの違いをきちんと理解していますか?
以下の表にまとめてみました。
ちなに「雇用保険」と「労災保険」は雇用に関係することなので、「社会保険」と「国民健康保険」の違いを比べるときには関係ありません。
フルタイムで働く正社員を雇う場合には雇用保険、労災保険に加入することが事業主には義務付けられています。
社会保険 | 国民健康保険 | |
---|---|---|
加入するもの | 健康保険 厚生年金保険 |
国民健康保険 国民年金 |
保険料の 計算方法 |
現在の給与を基にする | 前年の収入を基にする (自治体によって詳細は異なる) |
保険料の負担 | 会社負担と自己負担 半分ずつ |
全額自己負担 |
扶養 | 扶養家族が何人いても保険料には関係がない | 扶養家族が増えるごとに保険料の支払額が増える |
その他 | 出産手当金、傷病手当金などの手当てがない |
国民健康保険の場合は「健康保険」「国民年金」の2つに加入することになります。
大きく違う点としては、支払う金額の計算方法と扶養の考え方と手当金の支給についてなどです。
いくつか例を挙げて確認してみましょう。
経験3年目のパティシエ(23歳独身)
昨年度の収入 1ヶ月16万円 × 12ヶ月(賞与ナシ)=192万円の収入
今年度の収入 1ヶ月18万円 × 12ヶ月(賞与2か月分36万円)=252万円の収入
パティシエ3年目で転職し、より条件の良い職場に就職。 昨年度の収入と今年度の収入に50万円以上の差があり、扶養家族もいない場合は国民健康保険のほうが保険料は安くなる場合が多いでしょう。
経験10年目のパティシエ(31歳 妻・子供1人)
昨年度の収入 1ヶ月24万円 × 12ヶ月(賞与2か月分48万円)=336万円の収入今年度の収入 1ヶ月25万円 × 12ヶ月(賞与2か月分50万円)=350万円の収入
家族に収入がなく扶養家族が2人いる場合、国民健康保険は扶養家族が増えるごとに保険料が上がる仕組みなので、保険料が高くなる傾向があります。
そのため前年度と収入に大きな違いがなく、扶養家族がいる場合は社会保険のほうが保険料が安くなる場合が多いでしょう。
このように独身で前年度の収入が少ない場合には、国民健康保険のほうが保険料が安くなる場合があるのです。
またパティスリーなど飲食業の個人事業主の場合、社会保険の加入は義務ではありません。
そのため個人経営のパティスリーの場合は社会保険に加入していない場合も多くあります。
また社会保険は「会社の安定度」を測るものではなく福利厚生の1つです。
「社会保険に加入している会社のほうが安定している」と思っている方が多いかもしれませんが、「社会保険に加入しているから安定」というわけでもないことは頭に入れておきましょう。
上記は「保険」についての基本的なことだけをまとめてみました。
実際には個人の状況などによって細かく適用できる制度などがありますので、転職活動をする際は一度調べてみてください。
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