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乳化剤

カテゴリ:食品添加物

乳化剤
乳化剤【仏:émulsifiant】
水と油を分離させずに混ぜ合わせるための添加材料。
乳化剤はひとつの分子の中に水と馴染みやすい親水基(しんすいき)と、油と馴染みやすい疎水基(そすいき)と呼ばれる部分を兼ね備えている。

これが水と油を仲立ちし、本来なら混ざり合わない物同士を混ぜ合わせている。たとえば、大量の油の中に水が含まれている油中水滴型の場合、水の粒を乳化剤が親水基を内側に、疎水基を外側にしてぐるりと囲んでいる。乳化剤はこういった構造を形成して、水と油が直接接しない形で、油の中に水を分散させている。

ちなみに卵に含まれるレシチンやLDLたんぱく質(低密度のリポタンパク質)は天然の乳化剤と言われており、これらは乳化剤と同じく親水基と疎水基を持っている。

乳化剤の種類

グリセリン脂肪酸エステル

グリセリンを親水基として、脂肪酸とエステル結合させたもの。熱水と乳化しやすく、アルコールや植物油によく溶けることから油中水滴型の乳化状態にするのに適している。また、しょ糖脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステルと配合すると、自己乳化性が高まることにより、水中油型の乳化を作ることもできる。

グリセリン脂肪酸エステルは、食品用の乳化剤のなかでは最も使用されており、乳化剤市場のほぼ半数を占めていると言われている。また、分散・起泡・消泡・湿潤作用やたんぱく質の改善などさまざまな働きをする。

◆使用例
コーヒークリーム・生クリーム・マーガリンなどの乳脂肪の乳化安定
チューインガムやチョコレートなどの成分の均一な分散
ケーキやアイスクリームの生地を起泡
豆腐の消泡
パンやめん類などのでんぷん食品の改良

ソルビタン脂肪酸エステル

ソルビトールを親水基として脂肪酸とエステル化した物。油脂の乳化力が強い。油中水滴、水中油型どちらの乳化にも適している。

◆使用例
乳飲料やアイスクリームの乳化安定
ショートニングやクリーム類のクリーミーさの向上
清涼飲料水やチューインガム

ショ糖脂肪酸エステル

ショ糖を親水基とする、脂肪エステル。乳化剤の中で最も親水性が大きい。シュガーエステルとも言われている。

◆使用例
コーヒークリームやホイップクリームなどの乳製品の乳化安定
チョコレートのブルーミング防止
ケーキ類の起泡
香料やビタミンなどの可溶化

大豆リン脂質(大豆レシチン)

卵のレシチンと並ぶ天然の乳化剤。大豆レシチンの方が乳化力はやや弱いが、変質しにくい。大豆油製造の副産物として得られるので、安価で利用しやすい。市販のレシチンはほとんどが大豆レシチンである。
だか、大豆レシチンは、アレルギー反応が起きる場合があることや、遺伝子組換えの大豆を使用していることが指摘されている。

◆使用例
マヨネーズやマーガリンなどの乳化安定
パンなどの乳化分散
めん類の品質改良

プロピレングリコール脂肪酸エステル

プロピレングリコールと脂肪酸とのエステルで、親油性が大きいので油中水滴型の乳化剤として使用される。これのみで使用されることは少なく、他の乳化剤と併用される事が多い。

◆使用例
ケーキなどの起泡剤
各種加工油脂の改質

乳化剤の性質

乳化剤には乳化させる以外にもさまざまな効果がある。

油脂のクリーミング性の向上

空気が多く含まれることにより、生地がきめ細かく仕上がる。バターケーキやアイスクリームを作るときに発揮される効果。

デンプンの老化防止

デンプンが水と熱で糊化するときに作用し、冷えても、柔らかく糊化した状態を保つ。お菓子全般に役立つ作用。

起泡

液体を混ぜたときに生じる泡を安定させ、ケーキやパン、ホイップクリーム、アイスクリームなどにボリュームを持たせる。
液体と空気の界面(境界面)に作用し、表面張力を低下させ、起泡させている。
例えばシフォンケーキを作るときに添加すると、卵白の表面張力を弱めて、起泡性を高めることができる。これにより、生地が柔らかくふっくら仕上がる。

分散

ショ糖の結晶などの微細な粒子を生地の中でうまく分散させて、凝集を防ぐ。
ココアの粉末を水に均等に分散したココア飲料や、ココアの粉末を砂糖とともにカカオバター(油脂)均等に分散し固めたチョコレートを製造する過程で、この特性が生かされている。

湿潤、浸透

液体をほかの物体などに染み渡らせ、水分が多く湿っている状態にする作用。これにより、固体の表面を液体に濡れやすくし、粉末食品のダマを防止する。
粉末食品類・チューインガムなどに添加されている乳化剤はこの性質を発揮する。

消泡

液体に泡が生じないようにしたり、生じた泡を消したりする。豆腐などを作る際に、食品の泡立ちを抑え泡を消すことで食品を滑らかに仕上げることができる。
ジャム・飲料などでにも同じ理由で添加される。

滑沢

原料の粉末の流動性を高め、表面に光沢を与えるとともに、原料が機械に付着するのを防ぐ働き。
錠剤状のお菓子(タブレット菓子など)・薬やサプリメントなどにはこの効果を狙って乳化剤が添加されている。

可溶化(かようか)

水に溶けにくい、または溶けない物質を分散し水に溶けたような状態にする作用。
一般的な乳化だけでは液体が白濁したままだか、界面作用により、本来は水に溶けない物質がまるで溶けたかのような透明な状態になります。
これにより、油性の香料などを飲料に加えることができる。

洗浄

汚れをとりのぞいて洗うこと。
ただし、食品用の乳化剤は洗浄効果は高くない。石けんや衣類用洗剤、化粧品などに使用される乳化剤にある作用。
界面活性剤と表示されている。
野菜や食器を洗う洗剤にも利用されているが、安全性は重視されている。


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