パティシエとして働くなかで、「もっと幅広い技術を身につけたい」「新しい仕事に挑戦したい」「今の働き方を続けて、目指すキャリアに近づけるのだろうか」と考えることもあるでしょう。
特に20代は、現場で身につけた基礎をもとに、これからどのようなパティシエを目指すのかを考え始める時期です。
転職をきっかけに、異なる製造方法を学んだり、担当できる仕事を増やしたりすることはできます。ただし、職場を変えるだけで希望する技術が身につくとは限りません。
転職先を探すときは、企業や店舗の規模、業態のイメージだけでなく、実際に募集されている仕事内容を見る必要があります。自分が次に経験したい仕事や、将来目指したい役割、希望する働き方に合う求人かを考えていきましょう。
この記事では、製菓業界内でスキルアップを目指す20代のパティシエに向けて、転職前の整理方法、転職を考えるタイミング、求人の見方、転職活動の進め方を解説します。
仕事内容や条件からパティシエの求人を探す >この記事の目次
20代パティシエは転職でスキルアップできる?
20代のパティシエが、転職を通じて技術や経験の幅を広げることは可能です。
同じパティシエの仕事でも、扱う商品、製造方法、担当工程、求められる役割は職場によって変わります。新しい職場で別の作り方に触れることで、それまで身につけてきた技術への理解が深まることもあります。
たとえば、焼き菓子の製造を中心に経験してきた人が、生菓子の仕込みや仕上げにも仕事を広げたいと考えるケースがあります。一方で、焼き菓子の技術をさらに磨き、得意分野として深めたい人もいるでしょう。
目指す方向が違えば、選ぶ求人も変わります。
転職先を探す前に、次の3つを一度並べてみましょう。
- これまで経験してきた仕事
- 次に覚えたい技術や目指したい役割
- 求人で募集されている仕事内容
これまでの経験を土台に、次に覚えたい仕事へつながる求人を選ぶと、転職の目的がぶれにくくなります。
反対に、転職先で担当する仕事が自分の目標と合っていないと、「職場は変わったものの、経験したかった仕事に関われなかった」ということにもなりかねません。
転職先を選ぶ基準は、知名度や規模ではなく、自分が次に経験したい仕事が実際の業務に含まれているかです。
スキルアップ転職の前に整理したい3つのこと
求人を探し始める前に、これまでの経験と今後の希望を整理しておきましょう。
「何となく環境を変えたい」「もっと成長したい」という状態のまま求人を見ると、店舗名や企業名、目につきやすい条件だけで応募先を選びやすくなります。
最初に考えたいのは、次の3つです。
| 整理すること | 主な内容 |
|---|---|
| 整理すること | 主な内容 |
| これまでの経験 | 担当してきた商品、工程、任されていた仕事 |
| 身につけたい技術・目指すキャリア | 次に経験したい仕事、将来担いたい役割 |
| 希望する働き方 | 勤務地、勤務時間、休日、給与などの条件 |
これまでの経験
まず、現在までに担当した仕事を書き出します。
「パティシエとして3年間勤務した」という年数だけでは、実際に何ができるのかは分かりません。どのような商品や工程に関わり、どこまで任されていたのかを具体的に振り返ります。
- 計量や仕込み
- 生菓子や焼き菓子の製造
- ナッペやデコレーション
- チョコレートや飴細工
- 皿盛りデザート
- 発注や在庫管理
- 新商品の提案や試作
- 後輩への仕事の説明
- 接客や商品案内
一人で担当できる仕事だけでなく、先輩に教わりながら担当した工程や、補助として関わった経験も含めて構いません。
普段は当たり前に行っている作業でも、別の職場では経験として活かせることがあります。仕事を工程ごとに分けて振り返ると、これまで身につけたことが見えやすくなります。
身につけたい技術と目指すキャリア
次に考えるのは、転職後に経験したい仕事です。
「幅広い技術を身につけたい」「もっと成長したい」という言葉だけでは、どの求人が自分に合うのか判断できません。実際の仕事に置き換えてみましょう。
- 仕込みから仕上げまで一連の工程を経験したい
- 生菓子や焼き菓子など、特定の分野を深めたい
- チョコレートや飴細工に挑戦したい
- 商品の試作や開発に関わりたい
- 発注や原価管理を経験したい
- 後輩への指導や仕事の割り振りを学びたい
- 将来的にセクションリーダーやスーシェフを目指したい
今の時点で、将来のキャリアを一つに決める必要はありません。
20代は、担当できる仕事が増えるにつれて、得意な分野や興味のある技術が変わることもあります。数年先の答えを出すより、まずは「次に何ができるようになりたいか」から整理します。
希望が複数ある場合は、今回の転職で優先することと、将来的に挑戦したいことを分けると、求人を選びやすくなります。
希望する働き方
スキルアップを目指す転職でも、仕事内容だけを見ればよいわけではありません。
経験を積み続けるには、勤務地、勤務時間、休日、給与などが、自分の生活に無理のない範囲であることも必要です。
「技術を身につけるためなら、ほかの条件はすべて我慢しなければならない」と考えなくて構いません。
- 必ず満たしたい条件
- できれば満たしたい条件
- 入社後の経験を通じて実現したいこと
担当したい仕事を優先する人もいれば、勤務地や休日、給与を重視する人もいます。どれが正しいということではなく、自分が働き続けるために必要な条件を把握しておきましょう。
現在の悩みを「次に実現したいこと」へ置き換える
転職を考えるきっかけが、今の仕事への悩みであることも珍しくありません。
ただ、「今の職場を離れたい」という気持ちだけでは、次の求人を選ぶ基準が定まりません。現在感じていることを、転職後に実現したい内容へ置き換えてみます。
| 現在感じていること | 転職後に実現したいこと |
|---|---|
| 担当する仕事が限られている | 経験していない工程にも関わりたい |
| 得意分野を伸ばせていない | 興味のある技術をさらに深めたい |
| 将来のイメージを持てない | 目指す役割につながる経験を積みたい |
| 働き方を見直したい | 希望する条件に合う職場を探したい |
不満を無理に前向きな言葉へ変える必要はありません。
「次の職場で何を変えたいのか」「どのような仕事を増やしたいのか」まで考えると、求人を見るときの軸がはっきりします。
製菓業界内にはさまざまな転職先がある
パティシエとして身につけた技術や経験は、製菓業界内のさまざまな職場で活かせます。
| 職場の例 | 仕事内容の例 |
|---|---|
| パティスリー・カフェ | 生菓子・焼き菓子の製造、仕上げ、商品開発、接客 |
| ホテル・レストラン | デザート製造、皿盛りデザート、宴会・ブッフェ商品の製造 |
| 結婚式場・ブライダル施設 | ウェディングケーキ、コースデザート、デザートビュッフェ |
| 製菓メーカー・商品開発部門 | 試作、レシピ開発、品質確認、原価調整 |
| セントラルキッチン・製菓工場 | 菓子製造、品質管理、衛生管理、製造工程の管理 |
表にある仕事内容は一例です。同じ業態でも担当業務は求人によって異なるため、名称だけで判断せず、実際の募集内容を確認してください。
20代パティシエが転職を考える3つのタイミング
転職のタイミングは、勤続年数だけでは決められません。
「3年は続けるべき」「20代のうちに転職した方がよい」といった意見を耳にすることもありますが、これまで担当した仕事や今後目指す方向は人によって違います。
転職を考える一つの目安となるのが、次の3つです。
身につけたい技術が明確になったとき
経験を積むにつれて、興味のある商品や工程が見えてくることがあります。
「生菓子の仕上げを経験したい」「焼き菓子の技術をさらに深めたい」「商品開発に関わりたい」といった目標が具体的になったら、今後の働き方を考えるタイミングです。
まず、現在の職場で希望する仕事に関われる余地があるかを確認します。今の職場でも経験できるなら、そこで技術を磨く選択もあります。
一方、身につけたい技術と現在の仕事内容に差があり、今後も経験するのが難しい場合は、別の求人を見ることで選択肢が広がります。
目指するキャリアと現在の仕事に差を感じたとき
将来的に商品開発へ携わりたい、後輩の指導を経験したい、セクションリーダーやスーシェフを目指したいなど、次の役割が見えてくることもあります。
そのときは、現在の仕事を続けることで、目標に必要な経験を積めるかを考えます。
転職は、それまで身につけた技術を捨てて一からやり直すことではありません。今までの経験を土台に、次に必要な仕事や役割へ進むために職場を変える、という考え方もできます。
希望する働き方が具体的になったとき
20代は、生活環境や将来の予定が変わりやすい時期でもあります。
働き続けるなかで、勤務地、勤務時間、休日、給与など、今後重視したい条件が具体的になることもあるでしょう。
希望する仕事に関われても、自分の生活と合わない働き方では、経験を積み続けるのが難しくなります。一方、条件だけで求人を選ぶと、転職後に希望する仕事へ携われないこともあります。
仕事内容と条件を並べ、無理なく働き続けられる職場かを判断します。
勤続年数は判断材料の一つ
勤続年数が短いから転職してはいけない、長く働いたから転職すべき、という一律の基準はありません。
迷ったときは、次の3点に戻って考えます。
- これまでにどのような仕事を経験したか
- 次にどのような技術や役割を身につけたいか
- その経験を現在の職場で積めるか
今の職場で目標に近づけるなら、そこで経験を重ねるのも一つの選択です。反対に、次に進みたい方向が明確で、希望に近い仕事内容の求人が見つかった場合は、転職を具体的に考える時期といえます。
スキルアップにつながる求人を選ぶ3つのポイント
希望を整理できたら、実際の求人を見ていきます。
ここで注目したいのは、次の3点です。
身につけたい技術に関わる仕事か
最初に見るのは、求人に記載されている仕事内容です。
「パティシエ募集」「洋菓子製造」と書かれていても、実際に扱う商品や担当工程は求人ごとに違います。
「幅広い仕事を経験したい」と考えている場合も、希望する内容をもう一段具体的にします。
- 生菓子と焼き菓子の両方に関わりたい
- 仕込みから仕上げまで一連の工程を経験したい
- チョコレートや飴細工などの技術を深めたい
- 季節商品の試作や商品開発に携わりたい
- 製造に加えて発注や原価管理も経験したい
求人票では、希望する仕事が含まれているかに加えて、これまでの経験を活かせる業務があるかも見ておきます。
なお、入社後すぐに希望する仕事だけを担当できるとは限りません。最初は経験のある工程を任され、仕事を覚えながら担当範囲を広げていくこともあります。
生菓子の仕事に挑戦したい場合は、入社直後の担当業務だけでなく、将来的に仕込みや仕上げまで担当範囲を広げられるかも確認します。
目指するキャリアにつながるか
転職直後の仕事内容だけでなく、その先のキャリアも考えます。
製造技術を深めたい人、複数の工程を経験したい人、商品開発に携わりたい人、セクションリーダーやスーシェフを目指す人では、次に必要な経験が異なります。
- これまでの経験を活かせる仕事か
- 次に身につけたい技術と関係があるか
- 将来目指す役割につながる経験を積めそうか
- 担当していない仕事へ経験を広げられそうか
将来の目標がまだ決まっていない場合は、「次にできるようになりたいこと」を基準にして構いません。
将来像が固まっていなくても、まずは次に経験したい仕事へ近づける求人かを見ていきます。
希望する働き方と条件が合っているか
転職前に決めた「必ず満たしたい条件」を、求人票で確認します。
勤務地、勤務時間、休日、給与などを見比べ、生活に無理なく組み込める働き方かを判断しましょう。
すべての希望を満たす求人がすぐに見つかるとは限りません。その場合は、「必ず満たしたい条件」と「できれば満たしたい条件」の優先順位に沿って比較します。
自分に合う求人が分からないときは転職支援サービスへ相談する
希望を整理しても、求人票の情報だけでは判断しにくいことがあります。
「身につけたい技術に合う求人はどれか」「これまでの経験を活かせる職場はあるか」と迷ったときは、製菓・製パン業界に詳しい転職支援サービスへ相談する方法もあります。
パティシエントの転職サポートでは、これまでの経験や希望を伝えたうえで、条件に合う求人について相談できます。
まだ希望をうまく言葉にできていない場合も、担当者と話すなかで、「今回の転職で何を変えたいのか」が整理されることがあります。
すぐに応募を決めるのではなく、製菓業界内にどのような求人があるのかを知り、自分の選択肢を整理するために相談してもよいでしょう。
転職支援サービスが気になる方はこちら >20代パティシエが転職活動を進める3ステップ
転職前の整理と求人選びができたら、実際の応募へ進みます。
STEP1|条件に合う求人を探す
転職前に整理した内容をもとに、複数の求人を見比べます。
求人票では仕事内容と勤務条件を確認し、今回の転職で優先したいことに合う募集を絞り込みましょう。
一つの求人だけを見るよりも、複数の募集を比べた方が、自分にとって譲れない条件や興味のある仕事が見えやすくなります。
STEP2|応募書類を準備して選考へ進む
応募書類には、これまで担当した仕事や身につけた技術を、実際の経験に沿って記載します。
「洋菓子製造を担当」とまとめるだけでなく、生菓子の仕上げ、焼き菓子の仕込み、発注業務など、経験した仕事を具体的に書くと伝わりやすくなります。
面接では、現在の職場への不満だけで終わらせず、これまでの経験を活かして、次にどのような仕事へ挑戦したいのかを説明します。
STEP3|選考で得た情報をもとに入社を判断する
選考が進んだら、面接などで分かった実際の担当業務、入社後に期待される役割、勤務条件を整理します。
求人票を読んだときのイメージと、大きな違いがないかも確認しておきましょう。
選考は、応募先から評価されるだけの場ではありません。入社後の仕事や働き方を具体的に考え、自分が納得して働けるかを判断する機会でもあります。
情報を集めた結果、現在の職場で目標を実現できると気づくこともあります。転職すること自体を目的にせず、今の職場で経験を積むか、新しい仕事へ進むかを決めましょう。
スキルアップを叶えた先輩パティシエの転職事例
ここからは、自分が身につけたい技術や働き方を整理し、製菓業界内で転職した谷口綾音さんの事例を紹介します。
谷口さんの転職の経緯や現在の仕事については、インタビュー記事でも詳しく紹介されています。
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パティシエのためのスキルアップ海外挑戦ガイド!メリット、準備すべきポイントを徹底解説
谷口綾音さん(取材当時23歳)の経歴
谷口綾音さんは、神戸の製菓学校を卒業後、地元の個人パティスリーへ就職しました。
一度退職し、半年ほどフリーターを経験した後、「もう一度パティシエとして働きたい」と考え、伊丹の洋菓子店「フランダース」へ転職しています。
転職で重視したのは技術と働き方の相性
谷口さんは前職で、周囲とコミュニケーションを取りながら働くという、自分の持ち味を活かしにくいと感じていました。
また、担当する仕事の幅を広げ、さまざまな技術を身につけたいという希望もありました。
転職先を選ぶ際に重視したのは、次の2点です。
- 幅広い仕事に関わりながら技術を身につけられること
- 周囲とコミュニケーションを取りながら働けること
フランダースの仕事内容や職場の雰囲気が、自分の希望と合っていると感じたことが入社の決め手になりました。
転職後は仕事の幅が広がった
転職後は、焼き場、生菓子、デコレーションケーキなど、幅広い仕事を経験できるようになりました。
前職とは異なる製造方法に触れたことで、複数の方法を比べながら技術を学べるようになったといいます。
また、自分に合う雰囲気の職場で働くことで心に余裕が生まれ、計画的に仕事を覚えられるようになりました。
現在は基礎を身につけながら、今後は皿盛りのデセールにも挑戦したいと考えています。
谷口さんの事例から分かること
谷口さんは、店舗の規模や知名度ではなく、仕事の幅と職場の雰囲気が自分に合うかを見て転職先を選びました。
転職後は、前職で学んだ方法と新しい製造方法を比べながら、担当できる仕事を増やしています。
谷口さんのように、身につけたい技術と自分らしく働ける環境の両方を整理しておくと、転職先を選ぶ基準が明確になります。
20代パティシエのスキルアップ転職に関するよくある質問
転職を考えるタイミングはどのように判断すればよいですか?
「入社から何年経ったら転職すべき」という一律の基準はありません。
これまで経験した仕事と、次に身につけたい技術をもとに判断します。現在の職場で希望する経験を積めるなら、そのまま続けることも選択肢です。
経験が浅くてもスキルアップ転職はできますか?
経験が浅い場合でも、応募できる求人はあります。
自分の経験を必要以上に大きく見せず、現在どこまで担当できるかを整理しておくことがポイントです。:
「一人で担当できる」「先輩の確認を受けながら担当できる」「補助として経験した」など、実際の経験に沿って伝えましょう。
給与や休日を重視してもよいですか?
給与や休日を重視することと、スキルアップを目指すことは両立できます。
希望する仕事に携われても、働き方が自分の生活と合わなければ、長く経験を積み続けるのは難しくなります。
仕事内容と勤務条件の両方を見て、「必ず満たしたい条件」と「できれば満たしたい条件」に分けると、求人を比較しやすくなります。
まとめ|次に経験したい仕事を基準に求人を選ぼう
20代のパティシエが、転職をきっかけに技術や経験の幅を広げることは可能です。
まずは、これまで担当してきた仕事を振り返り、次に覚えたい技術や目指したい役割、希望する働き方を整理します。
そのうえで、実際の求人にどのような仕事が書かれているかを見ていきましょう。これまでの経験を活かしながら、新しい工程や業務に挑戦できる求人かどうかが判断の軸になります。
転職するか迷っている段階で、すぐに結論を出す必要はありません。求人を見て選択肢を知ったり、製菓・製パン業界に詳しい転職支援サービスへ相談したりしながら、これからどのようなパティシエを目指するのかを整理するところから始めましょう。
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